デジタル経営時代を切り拓く全社一丸のIT改革 - 第1回:全ての産業と企業がDigital Disruptionに直面する時代

本連載では、今日のIT機能が直面する課題と「次世代IT部門」の姿を考察し、全社的変革の要諦と起点を解説します。

本連載では、今日のIT機能が直面する課題と「次世代IT部門」の姿を考察し、全社的変革の要諦と起点を解説します。

本稿では、テクノロジー革新がもたらす破壊的なインパクトを俯瞰的に整理し、企業活動や重要なステークホルダーにどのような変化が生じているのかを改めて考察する。以前とは異なり、デジタル技術は一部のテクノロジー企業の占有物ではなくなりました。ほぼ全ての産業に影響する新たな経済ルールが出現し、長期に渡って機能してきた既存ビジネスモデルが短期で陳腐化するケースも頻発している。

また、企業内でも日常的に先端テクノロジーに触れる機会が増えた事業部門のユーザリテラシーの向上に伴い、従来のIT部門と事業部門のパワーバランスにも変化が生じている。IT部門にとっての調達先であるITサービス産業もソリューションの多様化・高度化、ITベンダーのグローバル化などの著しい構造変化が続いている。

IT機能を取り巻く環境の劇的な変化について、IT部門の目線ではなく、全体視点から捉え直すことに主眼をおいて解説を進める。

近年の情報通信技術を中心としたテクノロジー革新のトレンドを形容・象徴する表現として、SMACS(Social、Mobile、Analytics、Cloud、Sensor)が頻繁に引用されるようになってから、まだ1~2年しか経っていない。一方で、直近の数ヵ月間だけを振り返っても、Internet of Things(IoT)、Fintech、Deep learning、AR(拡張現実)などの新しいコンセプトやキーワードがビジネス関連メディアに続々と登場し、彩りを添えている。SMACSという言葉自体も既に陳腐化し始めているような錯覚を覚えるのは筆者だけだろうか。

これほどに変化のスピードが高まっている今日のテクノロジー環境とその破壊的なインパクトが、本稿で取り上げる主題である。一見すると突発的で不連続な変化の集合体であるようにも見えるが、実は、大きなコンテクストの下で一定の法則と連続性に従って生じる必然的な変化である。この骨太なトレンドは、ビジネスの世界におけるテクノロジーの支配力が不可逆的に増してきていることを示唆している。

これまでも、それこそ10年以上前から「IT抜きで経営を語ることは出来ない」と言われてきたが、今日ほどリアルに実感させられる局面は無かった。現在、クライアント企業からKPMG宛てに寄せられる相談内容は、経営企画部や事業部門からの新技術への対応に関するテーマが増えており、IT部門からも加速するテクノロジー革新に対する懸念や不安の声がより多く聞かれるようになった。少し大げさかもしれないが、旧来型の企業全体やIT機能の構造では、今日のテクノロジー環境には適合し切れなくなっており、随所で軋みの音が少しずつ大きくなってきているようにも感じられる。

毎年KPMGではグローバルでCIOサーベイを実施しており、特に近年注力している研究テーマの1つに「Digital Disruption」というキーワードがある。日本語での直訳が難しいため、“デジタル技術の革新がもたらす創造的破壊”と表現しているが、本稿においては、KPMGのこれまでの研究成果も踏まえながら、IT部門の立場から見た今日のテクノロジー環境とその破壊的とも言えるインパクトを改めて俯瞰し、「次世代IT部門」と呼べるIT部門の将来像を考察する。

企業に全方位的な変革を迫るテクノロジー革新の加速と連鎖

冒頭でも言及したSMACSに代表される近年の最新テクノロジー群は、従来型のITとは根本的に異なる特徴を有している。個々の要素技術の革新スピードが加速していることに加え、相互に連鎖反応を生みながら、累乗的インパクトを生み出す点が大きな特徴であり、IoTやFintechなど顕在化しつつある産業革新のトレンドも、これらの連鎖的・累乗的イノベーションから生じた”うねり”の1つであると言える。

eコマースやスマートデバイス、ソーシャルメディアなど、一般ユーザーが日常的に接するテクノロジーが急速に進化・普及したことの影響は、企業サイドのマーケティング業務のデジタル化が一気呵成に進んだことだけに留まらない。企業内の非IT部門のユーザーのITリテラシーの大幅な向上から、BYOD(Bring Your Own Device=個人所有のデジタル機器を職場で活用すること)やテレワーク、eコラボレーションなど新たなワークスタイルの出現など、企業活動を全方位的に変革させる起爆剤となっている。

また、“デジタル経営”の草分け的存在でもある、デジタルマーケティングの領域も、テクノロジー革新とともに拡大と進化が続いている。古くから取り組まれてきた大手サイトへのバナー広告出稿やSEM(Search Engine Marketing)に加え、ソーシャルメディアマーケティングや、自社サイトなどのオウンドメディアとの棲み分けや使い分けも、通常のマーケティング活動として定着してきた感もあることに加え、今日のデジタルマーケターたちは、さらに先を行くため、定着してきた新しい広告媒体の運用だけではなく、常に新しいアドテック(広告関連のテクノロジー)を探索し、小さな実験を繰り返しながら、チャネルミックスを進化させ続けている。

同様に“ビッグデータ”を枕詞にして発展してきたデータアナリティクスと、デジタルマーケティングの連鎖反応も加速傾向にある。これまでもデジタル媒体が生み出すデジタルフットプリント(デジタル媒体上の顧客導線)がアナリティクスの精度とリアルタイム性を飛躍的に高め、デジタルマーケティングの有用性の向上に寄与してきたが、最近特に注目を浴びるようになってきたAIや機械学習のテクノロジーの実用化が進むことで、デジタルマーケティングが飛躍的に進化することになる。SaaSやPaaSなどのクラウドサービス大手がAIエンジンの開発・搭載や関連スタートアップの買収を積極的に推進していることから、各ユーザー企業の技術力に関わらず、AIを利用可能なソリューションが普及するのも、もう目前であると考えている。

また、従来は独自の系譜で進化を遂げてきた、生産設備や各種プラントなどに搭載されている制御系システム(ITに対してOT(Operational Technology)と呼ばれることもある)の世界も、汎用デジタル技術の利活用が進む中で、ITやデジタルと呼ばれる世界との境界線が無くなってきている。特に今後はIoTの影響力と版図が拡大していく中で、ITとOTの垣根が失われ、テクノロジー革新の相互影響がますます強くなっていくものと推察される。そのIoTの代表的分野の1つでもある自動運転においても、自動車メーカーではないテクノロジー企業がリーダーシップを発揮しつつある状況であったり、車載システムを含む制御システムに対するサイバー攻撃が活発化してきていることは、その証左とも言えよう。

企業活動において全方位的に広がるテクノロジーの利活用範囲

企業活動において全方位的に広がるテクノロジーの利活用範囲(テクノロジー革新の加速と連鎖)

テクノロジー革新で経済原理も企業経営も変わる

また、これまではIT領域への直接接点が少なかった事業部門を取り巻く環境も急速に変わって来ており、特に最新テクノロジーが新しい経済圏や経済ルールを生み出している点にも注目が必要である。

eコマースやモバイルOS、ソーシャルメディア、クラウドサービスなど、各世代・領域のデジタル技術で覇権を握った大手テクノロジー企業は、プラットフォーマーとして絶大な存在感と影響力を持ち、数多のコンテンツ/サービス開発・事業者が集う巨大なエコシステム(経済圏)を短期間で作り上げてきた。所属業界を問わず、既に多くの企業がそのプラットフォーム上で、マーケティングを行い、デジタルサービスやデジタルプロダクトを提供するコンテンツホルダーとして、これらのプラットフォームに参画しているが、プラットフォーマー同士もその版図拡大を狙って、列強時代の国際情勢を想起させるほどの苛烈な競争を繰り広げている。

特にデジタル時代のプラットフォーマーの競争原理では、ネットワーク効果が強く作用し、ユーザーが多く集まるプラットフォームにコンテンツが集中し、それがまたユーザーを呼び込む、拡大再生産が発生しやすい。これにデータエコノミーと呼ばれるデジタル時代の経済ルールが加わると、データがかつての鉄や米と同様に国力を決定付ける要因となり、プラットフォーマーの時価総額は、データ保有量に比例して決定されるようになってきている。これは一部の大手プラットフォーマーに限った話ではなく、その他多くの企業にとっても経営戦略・判断の重要な指針を示唆している。今後、デジタル技術が従前のインターネットの世界に留まらず、様々な分野での活用が進むことで、これまではデジタルデータを十分には保有していなかった企業でも多種多様なデジタルデータを生成・収集出来る機会が生じることになる。交通データの利活用が話題に上る機会が増えているが、鉄道を始めとする公共交通機関や大規模商業施設のような、リアル世界で大量のトラフィックを集めている企業は、次世代のデータ保有企業として注目されている。そうした時に、大手プラットフォーマーと同等のポジショニングは簡単ではないにしても、データ経済圏において自社をどのようにポジショニングするべきなのか、仮に自社がプラットフォーマー的なポジションを目指すためにはアライアンスやM&Aをどう考えるべきなのか、仮にプラットフォーマーは目指さないとした場合にはどのような脅威やリスクが想定されるのか、など、新たな論点や課題に対して判断を下していくことが求められるのである。

また、テクノロジー革新の連鎖的影響が生み出す、新しい産業についても言及しておきたい。ソーシャルメディアの登場と普及に伴って、企業にとっての新しいマーケティング手段と広告マーケットが生み出されたが、それ以上に社会構造に対して長期的かつ大規模なインパクトを与えた、ないしは与えていくことになるのは、ソーシャルキャピタルと呼ばれる、新しい社会的関係性を作り出したことだろう。日本でもUberなどのシェア型サービスが注目され、多くのテクノロジー企業やスタートアップがその事業化に取り組むようになってきているが、広義のシェアリングエコノミーが急速に発展・台頭しつつある背景には、このソーシャルキャピタルによって生じた、消費者マインドの変化や、新しい社会認証メカニズムの普及がある。純粋なテクノロジー革新のみの連鎖ではないが、新しい技術がユーザー個人やその集合体である社会全体の在り方を変え、それがまた新しいテクノロジーを生み出す素地となっている。このように骨太な構造変化のトレンドの中で、シェアリングエコノミーによって、これまでの商流やバリューチェーンが大きく変わる未来がほぼ確実視されている。昨年、日本のメディアでの露出機会が多かったFintechも同様のコンテクストを受けた金融の構造改革であると言え、既存の金融サービス業界に限らず、多くの企業とって機会や脅威を生み出していくことになるだろう。

ここまで例示してきたDigital Disruptionは、個々のビジネスモデルを破壊することもあるが、業種ごとの垣根を取り払い、新たな領域の創出や再定義を引き起こす側面もある。したがって、今日の経営環境は自社が所属する業界に閉じた世界ではなくなっており、森羅万象とは言わないまでも、より幅広く展望出来る力が求められている。また、将来環境の不確実性が高まる中で、戦略策定・実行の要諦も変化してきており、過去の延長線上で将来予測を行い、戦略的にフォーカスする領域を明確化することに注力してきた時代から、不確実な将来動向がもたらし得る破壊的なインパクトを見据え、備え、柔軟に立ち回ることが何よりも重要な時代にシフトしてきている。

今日の事業部門にとって、もはやテクノロジー革新は他部署の仕事でも対岸の火事でもなく、自らテクノロジー革新のコンテクストとインパクトを読み解くため、デジタルインテリジェンスとも言うべき知見や視力を備えることが不可欠となっている。また、戦略の策定や実行においても、シナリオプランニングやリアルオプションのような、変化に強い思考様式や行動原理が求められているのである。

テクノロジー革新の連鎖が生み出すメガトレンド

テクノロジー革新の連鎖が生み出すメガトレンド(図)

テクノロジーとともに進化し続けるユーザーリテラシー

事業部門でテクノロジー革新のインパクトが無視出来なくなっている外圧的な構造変化がある一方で、主体的に最新テクノロジーに注目し、利活用が積極的に検討されるようになってきている側面もある。その背景として、事業部門側の一般ユーザーのITリテラシーが急速に高まっている点にも注目が必要である。

一般ユーザーの日常生活を振り返ると、若年層を中心に、幅広い世代が最新テクノロジーに触れられる機会が以前と比較にならないほど増えている。高速回線に常時接続したスマートフォンやタブレット端末を片手に、優れたUIとUXを持つ利便性の高いデジタルサービスを特段意識することなく、普通に使いこなす時代である。以前は、携帯電話やPCなどハードウェアの保有コストが高く、また、使いこなすためにも一定レベルの知識やスキルを必要としたが、ここ10年間でそのハードルは大きく下がった。また利用シーンもPCやプリンターを設置している屋内の特定場所という制限は無くなり、アウトドアを楽しむ傍ら、写真を撮影してすぐにSNSにアップロードして、友人・知人とシェアや会話を楽しむなど、デジタルサービスを楽しむ場所や時間に制約は無い。加えて、次々と登場するデバイスやガジェットを紹介・解説するメディアも数多く存在し、デジタルサービスと合わせて楽しむ、日常生活を彩る消費分野の1つとなった。

こうした今日のテクノロジー消費環境は、デジタル技術・サービスを大いに洗練させる契機となり、従来、企業内で発展してきたIT関連技術・製品が一般消費者向け技術・製品に触発されて進化するという、一時期、ITコンシューマライゼーションと呼ばれたトレンドを生み出したりもした。前述のワークスタイル変革なども同根のコンテクストを契機としている。

個々人のITリテラシーの向上に加えて、生産労働人口のピラミッド構造が変化してきていることの影響も大きい。日本では少子高齢化が進行する中で生産労働人口自体が縮小しているものの、年々、デジタルネイティブ世代の占有比は高まってきている。従来は一定以上のITリテラシーを備えた従業員の大半がIT部門の所属者やIT業務経験者に集中していたが、日常生活の中でITリテラシーが養われる今日においては、自然と企業全体のITリテラシーが高まってきているのである。ただし、念のため補足しておくが、これは企業側が教育や投資をしなくても自社の競争力に資するだけのITリテラシーを獲得出来るという話ではなく、AI技術を持つハイエンド・エンジニアや敏腕のデジタルマーケターなどは自然に育つものでも採用出来るものでもない。また、企業によってはそもそもITリテラシーが低い人材が集まりやすい風土・体質という状況も大いに有り得るため、そのような場合にはむしろ危機感を持ってリテラシー向上に取り組む必要がある。

とは言え、平均的なITリテラシーやテクノロジーに対する親近感が高まれば、必然的にオーナーシップ意識が醸成される。かつては「ITはブラックボックス」と言われ、事業部門は業務要求・要件を提示するだけで、あとはIT部門がシステムの構築から保守・運用までを全面的に担当する、“IT丸投げ時代”が長らく続いていたが、現在の事業部門は、より自由に、よりスピーディにテクノロジーの利活用を推進したいと考えるようになってきている。

IT部門の立場から見ると、“(何だかんだ言いつつも)黙って任せてくれた事業部門”では、もはやなくなっているのである。

テクノロジー革新によりITソーシングも変化する

ここまで、IT部門にとっての顧客である事業部門や、間接顧客である社外の顧客を取り巻く環境を中心に整理してきたが、その対極に位置する、IT部門が顧客となるITサービスプロバイダーとの関係性やIT調達の在り方の変化についても触れておく。

従来のIT部門とITサービスプロバイダーの関係性は、ERPやCRMシステムなど、範囲限定でのテクノロジー活用を前提として成立し、少しずつ発展・拡大してきた背景がある。ところが、全方位的な企業活動のデジタル化が加速していく今日においては、従前のモデルを維持していくことも難しくなる。かつては、特定の、それも大手のITサービスプロバイダーと懇意にしていると、新しいソリューションの情報や提案を持ってきてくれて、その中から予算とニーズに合致するものを取捨選択するだけでも、IT部門としての役割を一定レベルで全うすることが出来た。

しかしながら、現在は、事業部門から未知の領域に関する問い合わせや協力要請が飛んでくることも増えてきており、新領域でいざ候補となるソリューションやサービスプロバイダーを選定しようとしても、土地勘が無くロングリストの作成すらままならないケースも出てきている。長年慣れ親しんだソリューションやサービスプロバイダーについては熟知していても、次々と出現する新しいソリューションやサービスプロバイダーを既存のIT部門だけでは追い切れないという声もよく聞かれる。一方で、ITソリューションの世界も情報氾濫時代に突入しており、目先のニーズを充足するためのインテリジェンスを保持することも難しくなってきているのである。

新しいソリューションの登場やサービス多様化には、クラウドサービスも当然含まれているが、別の観点でIT部門に影響を与える点について触れておく必要があるだろう。クラウドサービスは一般的に、インフラの柔軟性や可用性を確保すると同時に、IT部門の運用負荷を軽減するといった恩恵をIT部門にもたらすが、一方で、何も考えずに導入を進めると、IT部門の従来からの仕事を奪っていく側面も否めない。また、従来のERP導入などと異なり、マルチテナント型やマルチインスタンス型のSaaSでは、複雑な導入作業を完遂するよりも、迅速な導入と稼働後のブラッシュアップを高速回転で回す機動性が何よりも重視される。クラウドサービスとこれまでのITソリューションとの特性の違いを理解した上で、サービス利用の形態、対象範囲や度合いをコントロールしていくことが、IT部門自体の在り方を変えていく“変革”になるのである。

また、特に日本国内ではセキュリティ関連の懸念や制約から、クラウドサービスの利用に対して過度に慎重になり過ぎる傾向が見受けられ、また、消極的な検討姿勢がクラウドサービスの本質的な理解を妨げている側面もある。しかしながら、前述のようにAIや機械学習などのデータアナリティクスを中心として、今後のITソリューションにおけるテクノロジー革新はクラウドサービスがその主戦場になる可能性が高いと言わざるを得ない。自社のイノベーションへの貢献という観点からは、もはやクラウドサービスから目を背けることは難しい時代になっているのである。

テクノロジー革新とは少し背景が異なるが、加速する企業活動のグローバル化がソリューションやサービスプロバイダーのグローバル化を助長し、その板挟みとなるIT部門にもグローバル化を迫るという、グローバル化の連鎖的なトレンドがより強くなってきていることも無視出来ない点である。

直近10年間で多くの日系企業のグローバル化への挑戦の場面に立ち会ってきたが、事業の海外進出や海外企業のM&Aが先行し、それを支えるための組織体制や人材マネジメント基盤の整備がそれに続き、ここ近年、IT機能のグローバル最適化に取り組む企業が増えてきた印象が強い。裏を返すと、グローバル化が進んだ事業展開や組織体制にIT機能が追い付いていないことが現実的な課題として認識されるようになってきたということであるが、IT部門が関心を払うべき範囲の拡大は、最新テクノロジーの利活用にも大きな影響がある。

当然、グローバル化の恩恵として、海外発の優れたソリューションを地理的なハンディキャップや時差無しで利用出来る機会は増えている。その一方で、グローバル競争に晒されている事業部門からは、同様にグローバル化している競合と伍していくため、世界中のソリューションやサービスプロバイダーを注視することが期待される。また、買収先企業や現地法人のIT部門の専門性や技術力が日本本社よりも高く、本社への突き上げのように最新テクノロジーの利活用が要請され、本社がその期待に応えられず失望されてしまうケースも増えている印象がある。

グローバル化に伴って、今日のIT部門は随所で板挟みになりやすい状況に置かれており、受難とは言わないまでも酷な時代になってきたとも言える。

第2回:岐路に立たされるIT部門の選択肢 へ続く

執筆者

KPMGコンサルティング株式会社
マネジメントコンサルティング
ディレクター 石井 信行
シニアマネジャー 西川 陽介

デジタル経営改革の最前線

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