退職給付制度間の移行等に関する会計処理
退職給付会計の基礎講座 第8回 - この回は退職給付制度間の移行等に関する会計処理について述べます。
この回は退職給付制度間の移行等に関する会計処理について述べます。
1.導入の背景と目的
確定給付企業年金法(平成14年4月1日施行)及び確定拠出年金法(平成13年10月1日施行)が制定され、次のような退職給付間の移行が可能となりました。
- 確定給付型の退職給付制度 → 他の確定給付型の退職給付制度
- 確定給付型の退職給付制度 → 確定拠出年金制度
このため、退職給付制度間の移行や退職給付制度の改訂等により、退職給付債務が増加または減少した場合の会計処理について明らかにする必要が生じました(出所:「企業会計基準適用指針第1号 退職給付制度間の移行等に関する会計処理」)。
2.適用範囲
退職給付会計基準が前提とする確定給付型の退職給付制度について、退職給付制度間の移行等により退職給付債務が増加または減少した場合に適用されます。具体的には以下の2つのケースに分類されます。
【退職給付制度の終了】
退職金規程の廃止、厚生年金基金の解散または確定給付企業年金制度の終了のように退職給付制度が廃止される場合や、退職給付制度間の移行または制度の改訂により退職給付債務がその減少分相当額の支払等を伴って減少する場合をいいます。
【退職給付債務の増額または減額】
退職給付制度間の移行または制度の改訂による退職給付債務の支払等を伴わない増加または減少をいい、退職給付会計基準上の過去勤務債務が発生します。
退職給付制度の終了 | 退職給付債務の増額または減額 |
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退職給付制度の終了(全部終了) 退職給付制度の終了(一部終了) 確定給付型の退職給付制度間の移行 大量退職 |
退職給付制度間の移行又は制度の改訂による退職給付債務の支払等を伴わない増加部分又は減少部分をいいます。 |
3.会計処理
1-退職給付制度の終了のケース
(1)終了の時点で、当該退職給付債務の削減を認識し、終了した部分に係る退職給付債務と、その減少分相当額の支払等の額との差額を損益認識します。
(2)未認識項目(未認識過去勤務債務、未認識数理計算上の差異及び会計基準変更時差異の未処理額)は、終了部分に対応する金額を損益認識します。
2-退職給付債務の増額または減額のケース
(1)退職給付債務の増額または減額に伴って過去勤務債務が発生するため、原則として、各期の発生額について、平均残存勤務期間内の一定の年数で按分した額を毎期費用処理します。
(2)当該増額または減額が行われる前に発生した未認識項目は、従前の費用処理方法及び費用処理年数を継続して適用します。