退職給付債務の算定方法
退職給付会計の基礎講座 第2回 - 退職給付債務の算定方法について解説しています。
退職給付債務の算定方法について解説しています。
1.退職給付債務とは
退職給付債務とは、一定期間にわたり労働を提供したこと等の事由に基づいて、退職以後に従業員に支給される給付のうち認識時点までに発生していると認められるものをいい、割引計算により算定されます。
2.退職給付債務の計算
退職給付債務は、退職時に見込まれる退職給付の総額(「退職給付見込額」)のうち、期末までに発生していると認められる額を、予想される退職時点から現在までの期間にわたって割引率により割引いて計算します。
3.退職給付債務の計算手順
退職給付債務は以下の手順によって計算します。
(1) 退職給付見込額の計算
退職給付見込額は、予想退職時期ごとに、従業員に支給される一時金見込額および退職時点における年金現価の見込額に退職率および死亡率を加味して計算します。
退職給付見込額の計算において、退職事由(自己都合退職、会社都合退職等)や支給方法(一時金、年金)により給付率が異なる場合には、原則として、退職事由および支給方法の発生確率を加味して計算します。なお、期末時点において受給権を有していない従業員についても、退職給付見込額は発生しているため当該計算対象となります。
(2) 退職給付見込額のうち期末までに発生していると認められる額の計算
予想退職時期ごとの退職給付見込額のうち、期末までに発生していると認められる額を計算します。計算方法には以下の方法があります。
1.期間定額基準
退職給付見込額を全勤務期間で除した額を各期の発生額とする方法
2.給付算定式基準
退職給付制度の給付算定式に従って各勤務期間に帰属させた給付に基づき見積った額を退職給付見込額の各期の発生額とする方法
「1」と「2」のどちらの方法を選択するかは各企業の会計方針となりますが、いずれを選択するかによって退職給付債務の額に差が生じる他、実務面においても差異があり、実務上の便宜も考慮して選択すべきと考えられます。ただし、会計方針としていずれかを選択した後は正当な理由なく変更することができないので、注意が必要です。
(3)退職給付債務の計算
予想退職時期ごとの退職給付見込額のうち期末までに発生していると認められる額を、現時点からそれぞれの退職時期までの期間にわたって現在価値に割引きます。当該割引いた金額を合計して、退職給付債務とします。