Pick up 1. 監査品質のさらなる向上への取組み

あずさ監査法人は、高品質な監査業務を継続的に提供するため、監査に関する品質管理基準等への適切な対応を図っています。加えて、さらなる監査品質の向上が求められる現下の状況に的確に対応するため、新しい組織を設けました。

ISQM1等の品質管理基準への対応

あずさ監査法人が所属するKPMGでは、品質管理に関する国際基準であるISQM1を踏まえて事務所の品質管理に関する方針・手続を強化しています。また、日本においてもISQM1を踏まえ、「監査に関する品質管理基準」等の改訂が行われています。
あずさ監査法人は、これらの動向を反映し、継続的に品質管理システムの見直しを実施しています。

品質管理システムの評価結果

KPMGでは、毎年9月末を評価基準日として、品質管理システムの整備・運用状況の評価を行うことにしています。このため、あずさ監査法人は、ISQM1の要求事項を踏まえた品質管理システムの有効性について毎年9月30日時点で年次評価を行っています。
あずさ監査法人は、評価の結果、「品質管理システムは、当該システムの目的が達成されているという合理的な保証を当監査法人に提供している」と結論づけ、この評価結果をTransparency Reportの補遺である「品質管理システムの有効性について」で公表しています。

継続的な品質向上活動

品質管理システムの整備・運用にあたっては、品質管理システムに係る統制のテスト結果およびその他のモニタリング活動等から得られた発見事項を識別します。また、発見事項について多面的な検討を通じて評価を実施し、不備を識別します。不備が識別された場合、根本原因の分析を実施し、分析結果を踏まえて、これに対処するための是正措置を決定します。是正措置の決定にあたっては、監査品質委員会や専務理事会において協議を実施します。
不備に対する是正措置の実施状況については、あずさ監査法人内部で継続的なモニタリングが実施されます。また、これらの情報はKPMGインターナショナルにも提出され、不備の是正状況が適時にモニタリングされます。

ISQM1/品質管理基準(改訂)の概要
  • 監査事務所レベルの品質管理に係る基準 
  • 品質管理システムを整備・運用することを監査事務所に対して要求
  • 品質管理システムの整備および運用についてはリスクアプローチを採用
  • 品質管理システムは以下8つの構成要素で構成
  • 監査事務所の最高責任者が、原則年に1回、特定の基準日において、品質管理システムを評価し、その結果を公表
jp-azsa-quality-2024-feature-01.svg

品質向上を目的とした組織の新設

IPO統轄部の新設
一般的にIPO前後の企業には特有の監査リスクがあり、かつ、不正リスクも高いことが想定されます。それらのリスクに法人として組織的に対応するため、監査統轄事業部および企業成長支援本部によるIPO監査関与先管理の体制に加えて、IPO監査関与先の監査業務モニタリングやリソース管理等を強化することを目的に、IPO統轄部を第2のディフェンスラインである監査統轄事業部の1つとして新設しています。
IPO統轄部は、IPO監査関与先にかかる訂正監査の発生をゼロとすることをミッションに掲げ、監査業務モニタリングの強化や監査チームの現場力の向上に資するための各種研修や標準ツールの開発を行うとともに、適材適所のアサイン管理を全社横断的に行います。また、IPO監査関与先の経営者との双方向コミュニケーション・情報提供のサポートを行い、監査の指導的機能を強化します。

PCAOB統轄部の新設
米国公開会社会計監視委員会(PCAOB)の監査品質に対する要請は年々高度化しており、監査品質をより高いレベルで担保することが求められています。米国独自の監査品質に関する要求事項に対応するため、PCAOB監査基準に基づく監査知識の集約、モニタリング、リソース管理等を強化することを目的として、PCAOB統轄部を第2のディフェンスラインである監査統轄事業部の1つとして新設しています。
品質管理面ではPCAOB監査関与先のリスクの把握やモニタリングを実施するほか、品質管理本部やリスクマネジメント本部と連携し、海外からの最新情報を適時適切に入手し監査チームに展開します。人材管理面ではPCAOB監査に対応可能な人材を適切に監査チームに配置します。

品質管理システム部の新設
あずさ監査法人は、新たな品質管理基準(ISQM1を含む)に準拠した品質管理システムを整備・運用しています。
品質管理システムは、継続的に改善する必要があり、今後適用が予定されるPCAOBによる品質管理基準(QC1000)にも対応していく必要があります。そこで、品質管理システムを一層強化することを目的として、従来、リスクマネジメント部の部内室であったSoQM対応室(System of Quality Management対応室)を部に格上げし、品質管理システム部を新設しています。
品質管理システム部は、今後、ISQM1およびQC1000に準拠してあずさ監査法人の品質管理システムを一層高度化することを目的とし、人材のさらなる強化を行っています。

Pick up 2. あずさ監査法人のウェルビーイング

あずさ監査法人は、「一人ひとりが健康で、高いモチベーションを保ちながら最高のパフォーマンスを発揮して、Purpose(存在意義)を実現できる組織になること」を目指しています。

一人ひとりが大切にしていることを実現する

▶ Career
職員一人ひとりが大切にしていることや希望するキャリアを実現するための環境整備は、プロフェッショナルファームにおけるウェルビーイングにとって最も重要な要素です。
法人の戦略であるAX for Trust (R)のもと、デジタル、グローバル、サステナビリティなど多様な領域の研修を提供するほか、業務経験を通じて成長する環境を整備しています。
また、構成員が具体的にキャリアや業務機会をイメージできるようキャリアデータベース「My Story」を構築し、情報発信やキャリアマネジャーとのコミュニケーションに活用しています。

プロジェクトクローバー
将来のグローバルハンドリングを強みとする女性パートナーを育成するため、その基盤となる女性海外赴任経験者を増員する「プロジェクトクローバー」を立ち上げ、2021年から活動を開始しています。
その施策の1つとして、短期の海外派遣プログラムを充実させ、結婚や出産、育児などのライフイベントを意識する女性のキャリアを後押ししています。2023年度に海外に派遣したスタッフ・シニア100名のうち、44名が女性でした。
入社後、ライフイベント前の早い段階で短期派遣を経験し、海外で働く自信をつけることでモチベーションを高め、長期派遣につながるケースが増加しています。なかには家族連れで駐在するケースも出てきています。さらには、配偶者の海外駐在に帯同するケースでも、自身のキャリアの継続のため帯同先で業務に従事できるように調整するなど、ライフイベントとキャリアの両立を支援しています。

ウェルビーイングの5つの構成要素

jp-azsa-quality-2024-feature-02.svg

あずさ監査法人では、ウェルビーイングを構成する要素を、5つに整理しています。いずれも重要な要素であり、どれ1つとして単体でウェルビーイングを定義することはできません。これら5つの要素が最大化するように、様々な施策を実行していくことで、構成員一人ひとりのウェルビーイングを実現していきます。

高い倫理観を保持する健康な心身

▶ Physical & Mental
心身の健康に関するフィジカル&メンタルも重要な要素です。一斉休暇期間の設定など有給休暇の取得を促進するほか、各種の休暇・休職制度やフレキシブル・ワーク・プログラム(FWP)、在宅勤務制度、育児・介護の両立支援のための制度を設けることで、職員一人ひとりのライフステージにあった多様な働き方を可能としています。また、AXによる業務の標準化、集中化により、プロフェッショナルとしての業務の高度化に努めています。

信頼して尊重しあう環境

▶ Social
お互いを信頼して尊重し合う職場環境の整備に関するソーシャルについては、 Working Women’s Network(WWN)などさまざまなネットワークがあり、ビジネスパーソンとして成長しながら、多様な個性が力を発揮していくことを目指す活動をしています。

 

高田亜希 田村 彰子

理事長および専務理事との対話集会「カジュアルトークルーム~なんでも聞いてみよう、話してみよう~」の企画・運営を行っています。これにより、現場の声をダイレクトに聴き、素早く経営に反映させる「伝える・伝わる」インターナル・コミュニケーションの実現を目指しています。


対話集会「カジュアルトークルーム」
田村 彰子/高田 亜季

ブランド&コミュニケーション部

Pick up 3. セクターを軸としたステークホルダーとの対話

あずさ監査法人は、各ステークホルダー(社会、監査関与先、構成員)の期待を理解し、期待に応じた価値を提供するために、産業・業種(セクター)ごとに蓄積した知見を活かした深い対話を重視しています。

社会(規制当局・学識者等)との積極的な対話

社会の変化やニーズを適切に把握し、期待される水準を満たす監査を実施することが求められています。また、監査法人の活動や取組みについて、より広く社会に情報を発信していくことは、監査法人としての重要な役割の1つです。これらはセクターごとに蓄積した知見を活用することでより効果的なものとなります。
あずさ監査法人は、規制当局・学識者など外部の有識者等との意見交換会を実施しています。当該意見交換会を通じて、監査に対するさらなる理解を促進するとともに、組織的な運営のより一層の改善に活用しています。

監査関与先(経営者、監査役等)との双方向のコミュニケーション

さまざまなセクターにおいて将来リスクが高まっており、監査関与先との対話においてはビジネスへの深い理解がますます重要になっています。あずさ監査法人は各セクターで蓄積した知見を活用して監査関与先と双方向の対話を実施します。これによりセクター特有の経営環境を前提とした経営者の判断や意思決定の内容等をより的確に理解し、また、監査役等から提供された情報をより適切に監査業務に反映することで、不正または誤謬による重要な虚偽表示を見逃さない監査を実施します。

構成員との意見交換

構成員に対しては、セクターごとに組織された統轄事業部のもと、業界情報やセクター特有の会計・監査論点に係る情報を提供し、また、同一セクターの監査業務経験を蓄積できる体制を整備することにより、会計プロフェッショナルとしての成長を支援しています。また、各部署の人事担当パートナーなどを中心とするキャリアマネジャーが、構成員一人ひとりときめ細かな対話を実施しています。

対話を支えるセクターを軸とした組織体制

セクター知見を蓄積する組織体制の構築が、ステークホルダーとの深い対話に繋がると考えています。
監査統轄事業部はセクターごとに組織されており、セクター知見をより活用できる体制を構築しています。また、セクター固有の論点を踏まえた監査品質の向上を目的としてSQP(Sector Quality Partner、セクター品質管理パートナー)を配置するとともに、セクター知見に基づく監査関与先への付加価値の高い情報の提供およびセクター人材の育成を目的としてSL(Sector Assurance Leader)を配置しています。なお、統轄事業部の下に複数の事業部を設ける事業部制を導入し、原則として競合関係にある監査関与先については異なる事業部が担当することで、ファイアウォールを設けています。