グローバル企業における税務部門ベンチマーク調査 - 税務部門の現状

KPMGインターナショナルが行った、グローバル企業における税務部門の実態と変革に関する調査とその解説になります。

KPMGインターナショナルが行った、グローバル企業における税務部門の実態と変革に関する調査とその解説になります。

多くの企業において、税務部門がマネジメントとリソースを集中管理するストラクチャーを有することで、これらの目的を達成することができると考えています。集約化により、責任を明確にし、限られた人材を専任、あるいはシェアードサービスとするなど、最適な組み合わせを可能とし、数々のプロセスやITシステム・ソフトウェアにおける一貫性や、品質及び効率性を相互に向上させることができます。

また、多くの企業が税務部門の人材や業務を集約しつつあるように見受けられますが、特に移転価格の分野においてはそれが顕著な傾向となっています。一方で、シェアードサービスセンターの積極的な活用や、その他の集中型ソーシングモデルの採用により、説明報告責任や業務活動のさらなる集約化も視野に入れることができそうです。

レポートを作成するビジネスマン

レポーティングライン

グローバル企業の大半が、依然として、税務機能を財務機能の傘下においていますが、回答企業の31%が独立した機能として運営しています。税務責任者の75%以上がCFOまたはCFO以外の財務責任者にレポートしており、10%がCEOに直接レポートしています。

人材配置と業務配分

回答企業のうち、税務部門本部所在地に平均17人の正規職員(FTE, full-time employee)が、本部所在地以外に平均19人のFTEが有していました。

税務部門の約75%が国内税務関連のレポーティングを担当し、60%がグローバル税務のレポーティングを担当しています。回答企業の税務部門のほとんどが、以下の業務の責任を担っています。

  • 税務部門管理
  • 各事業部支援及びコンサルティング
  • 調査及び税務プランニング
  • リスク管理及びガバナンス
  • 税務訴訟および税務調査における対応

税務部門の大半は、シェアードサービスセンター(SSC)を利用していません。SSCを利用する部門のうち、SSC利用を縮小している部門もいくつかみられますが、大半の部門ではその利用を拡大しています。最も一般的にSSCに委託される業務は、会計業務/総勘定元帳、補助元帳(債権、債務、固定資産)及び(例えば、VAT申告を目的とする)税務申告手続きなどがあります。

“リソースに関しては、汎用的な対応策はありません。各組織で最適なリソースは異なります。しかし、税務プロフェッショナルがITスキルを習得する、またはITプロフェッショナルが税務の知識を身につけることで、税務部門が独自のIT機能を構築する企業の増加が見受けられます。税務部門は、これらのアプローチを組み合わせる事により、より良い効果が得ることができるでしょう。
Scott Weisbecker Global Head of Tax Transformation KPMG インターナショナル”

移転価格機能のストラクチャー

近年、税務当局の関心及び活動の増加により、移転価格に関するリスクは高まっています。経済協力開発機構 (OECD)の税源浸食と利益移転に対するアクションプラン(BEPS行動計画)13を自国の税制に落とし込んだ国が増え、今後さらに税務部門における移転価格に関するコンプライアンス業務が増加することが見込まれます。移転価格に関する業務活動を集約化することで、国別報告書、マスターファイル、ローカルファイルといった文書化規定や、税務当局間での税務情報の自動交換などが発生する場合に、より効果的かつ効率的に、また一貫性を持った包括的コンプライアンスの運用が可能となると考えられます。このような状況において、回答企業のほとんどが、自社の移転価格に関する、全ての、または、主要な業務を本社所在国に集約させています。現地関連会社チーム、または地域ごとのチームが担当している業務はわずか12%でした。

さらに、ほとんどの税務部門本部にて、国内の関連会社に関する現地の移転価格文書化を担当しており、その半分以上が、外国の関連会社の現地の移転価格文書化を担当しています。また、多数の企業が今後5年間で国別報告書作成に関するソフトウェアへの投資を計画しています(詳細は、レポートの後半にて記述しております)。

重要なポイント

  • グローバル企業の大半が、税務機能を財務部門の傘下においているものの、独立した機能としている企業も相当数ありました。税務責任者の10人に一人は、CEOに直接レポートしています。
  • 多くの企業が、税務部門のリソースや業務活動を、特に移転価格の分野において集約化する傾向にあります。
  • 企業は、シェアードサービスセンターやその他の集中型ソーシングモデルの活用など、説明報告責任と業務活動をさらに集約化する傾向が見受けられます。
  • サーベイ回答企業のほとんどが、自社の移転価格に関する、全ての、または、主要な業務を本部所在国に集約させています。OECDのBEPS行動計画に関連した各国の移転価格税制への落とし込みによる今後の課題を踏まえるとこの結果はとても望ましいものであると考えます。

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