KPMGコンサルティング、「国内スタートアップシーンESG活動調査」を発表
国内のスタートアップ企業と投資企業における、ESG活動への認識や活動実態、課題感についての調査結果をまとめたレポートを発表しました。
国内のスタートアップ企業と投資企業における、ESG活動への認識や活動実態、課題感についての調査結果をまとめたレポートを発表しました。
KPMGコンサルティング株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長 兼 CEO:宮原 正弘、以下、KPMGコンサルティング)は、国内のスタートアップ企業とスタートアップ企業へ投資を行う投資企業における、ESG活動への認識や活動実態、課題感についての調査結果をまとめたレポート「国内スタートアップシーン ESG活動調査 日本流スタートアップの飛躍に向けて」を本日発表しました。
本レポートは、スタートアップ企業(以下、スタートアップ)と、投資企業(ベンチャーキャピタルおよびコーポレートベンチャーキャピタル)を対象とした、ESG活動の「認識」「活動実態」「課題感」の3つの要素に関するアンケート調査結果に加え、スタートアップ投資や育成・支援の第一線で活躍するMPower Partners Fund L.P.(本社:東京都港区)のパートナー深澤優壽氏と、IY Holdings株式会社(本社:長崎県壱岐市)の取締役会長山口豪志氏へのインタビュー記事で構成されています。
ESGの思想へは多くの組織が賛同し国際的潮流にもなっているなか、スタートアップへは、経済成長だけでなく社会課題の解決を伴うイノベーションの担い手としての期待が高まっています。
本調査では、そうした社会課題の解決に立ち向かうスタートアップを支援したいという想いから、スタートアップ、およびスタートアップに支援を行う投資企業のESGに対する想いや活動状況、活動するうえでの課題といった“現場のリアルな声”を可視化し、今後社会全体でどのようにスタートアップシーンの成長をもたらすことができるのかについて考察しています。
<エグゼクティブサマリー>
ESG活動の認識:
- スタートアップ、投資企業ともに、ESG活動とは「自社の活動を通じてE(環境)やS(社会)、G(ガバナンス)の観点の社会課題の解決や、社会的インパクトの創出を果たす」ことであるとの認識が最多となった(スタートアップ89%、投資企業74%)
- ESG活動は重要であると回答したスタートアップは79%、投資企業は95%にのぼる
ESG活動の実態:
- 実際にESG活動を実施または検討していると回答したスタートアップは77%、投資企業は84%であったが、双方とも、社内におけるESG活動の浸透度は高くない(浸透度が50%以上と回答した割合は半数未満)
ESG活動への課題感:
- スタートアップと投資企業で共通して挙げられた外部環境関連の課題は第1位から第3位まで同順となり、1・2位は「スタートアップシーンのESG活動(ESG投資)を支援する制度/ガイダンスが不十分」、3位は「スタートアップシーンのESG活動(ESG投資)を支持する消費者が少ない」となった
- スタートアップシーンの特性に適した、ESG活動を実践し、成長につなげるための支援基盤を望む声の表れと考察される
【ESG活動の認識】
非上場市場では上場市場に比べて規制などが少なく、「ESG活動」に対する認識もさまざまな傾向があるなか、本調査結果では、ESG活動を「自社の活動を通じてEやS、Gの観点の社会課題の解決や、社会的インパクトの創出を果たす」ことと認識する回答が、スタ―トアップ、投資企業とも最多となりました(スタートアップ89%、投資企業74%)。
図表1:「ESG活動」の認識
また、ESG活動の重要性について、スタートアップでは「大変重要」(44%)と「やや重要」(35%)をあわせた79%が重視する姿勢を示し、投資企業については「大変重要」(42%)、「やや重要」(53%)と、スタートアップを上回る合計95%が重視している結果となりました。短期間で大きな成長を目指すスタートアップと、リスクを取りながらスタートアップへ投資する投資企業のそれぞれが、経済面と連動して社会的なインパクト創出へ挑戦することを重視する姿が明らかになりました。
図表2:「ESG活動」の重要性
【ESG活動の実態】
ESG活動について、実施または検討などのアクションを起こしている割合はスタートアップで77%(62社中48社)、投資企業で84%(19社中16社)でした。
しかし、スタートアップ、投資企業双方において、浸透度が50%以上と回答した企業は半数もなく、社内での活動の浸透は道半ばであることが明らかになりました。
図表3:ESG活動の社内浸透度
詳細に分析すると、重要性は認識しているもののアクションに移せていない(「認識」率と「活動」率の乖離が比較的大きい)活動がいくつか見受けられました。それらはスタートアップと投資企業では異なっており、両者それぞれの活動特性から、実行難易度が異なる活動が存在すると考察されます。
スタートアップでは「自社の活動をESGの観点から分析し、経営リスクへの対応や企業価値向上へ役立てる」活動、つまり、EやS、Gそれぞれのファクターを詳細に理解して経営へ活かすことが難しい実態がある可能性がうかがえます。他方で、投資企業では「自社の活動を通じてEやS、Gの観点の社会課題の解決や、社会的インパクトの創出を果たす」といった、社会的なインパクト創出を目指すことについて、意識はしていても活動として十分には取り組めていない可能性が考えられます。
図表4:ESG活動の「認識」と「活動」
【ESG活動の課題感】
ESG活動を進めるうえでの内部環境に関する課題について、スタートアップでは「リソースが足りない・割けない」(55%)が最多となり、常に人材や資金などのリソース不足に悩まされがちなスタートアップの特性が反映された結果となりました。投資企業でも、投資企業のみへ提示した選択肢であった「ESG要素の測定・評価方法が難しい」(42%)が最も多い回答となり、こちらも投資活動を行う事業特性が表れた結果と考えられます。
一方、「スキル・経験を持ち合わせた適切な人材がいない」はスタートアップと投資企業双方に共通する2番目に多い回答となり、スタートアップエコシステムにおいて、最適なESG活動というものを自ら考え、リードする人材の育成や獲得が難しい状況が推察されます。
図表5:自社内で感じる課題
外部環境についての課題では、スタートアップ、投資企業ともに「スタートアップのESG活動/スタートアップへのESG投資を支援する政策や現実化している制度が不十分」が最上位、次いで「スタートアップの企業活動/スタートアップ投資に即したESG関連ガイダンスが何かわからない」が挙がりました。上場市場では、ESG活動にかかわるルール整備や業界内の知見・事例が蓄積されていく傾向が見受けられるものの、比較的自由度が高く、かつ非公開市場であるスタートアップシーンにおいては、活動推進にあたって参考としたい情報やナレッジへのアクセスが不足している可能性があります。スタートアップ、投資企業ともに、ESG活動の実践方法や、成長につながる具体的なガイダンスや政策について、充実化を望んでいる可能性がうかがえます。
図表6:行政や世間・社会(国内)に向けて感じる課題
本レポートの全文はこちらからダウンロードできます:「国内スタートアップシーン ESG活動調査 日本流スタートアップの飛躍に向けて」
KPMGコンサルティングについて
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