KPMG、「Global Economic Outlook(2023年上半期)」を発表

インフレとサプライチェーンの不安は緩和されるも、依然として世界経済は不確実な状況

KPMGインターナショナルは、世界経済の動向に焦点を当てた半年ごとの経済予測調査「Global Economic Outlook(2023年上半期)」を発表しました。

  • 急激なインフレ率の低下により、世界経済の近年の課題が浮き彫りとなった
  • 各国の中央銀行は近年の金融システムにおける緊張への対応として、部分的な引き締めを緩和しつつある
  • サプライチェーンの圧力緩和と労働市場の弾力性が経済の回復を支えているが、将来の展望に対する不確実性は依然として高いままである
  • KPMGは、2023年の世界のGDP成長率を2.1%、インフレ率を5.3%と予測
     

(本プレスリリースは、2023年3月27日にKPMGインターナショナルが発表したプレスリリースの日本語翻訳版です。内容および解釈は英語の原文を優先します)

KPMGインターナショナル(チェアマン:ビル・トーマス)は、世界経済の動向に焦点を当てた半年ごとの経済予測調査「Global Economic Outlook(2023年上半期)」を発表しました。
インフレ圧力が緩和し始めた2023年前半に世界経済の見通しは好転しましたが、KPMGは地政学的な緊張の継続と主要市場における自国内の問題が、持続的な成長への回復を遅らせると予測しています。
本調査によると、世界的なエネルギー価格がウクライナ侵攻以前のレベルに戻りつつある他、日用品と食料品の価格も安定しつつあるため、今後インフレ圧力はさらに低下していきます。このような好材料もある中、世界の主要経済大国(最近では英国と米国)が国内のインフレ圧力につながる問題に直面しているために、市場の状況がスムーズに好転せず、インフレ率の低下も遅れる結果となっています。またそれぞれの国、地域、領域に微妙で複雑な様相があり、その上、多くの地域が比較的厳しい経済環境に曝されているため、コアインフレーションが長引くことで物価上昇が定着するという懸念とともに、中央銀行には前例のないほどの圧力がかかっています。国際金融システムに対する懸念の高まりは、インフレ率を目標値に戻す計画よりも財政安定化のリスクを重視している中央銀行にとって、事態をさらに複雑化する可能性があります。

KPMGは、2023年のGDP成長率を2.1%、2024年は2.6%、2023年のインフレ率を5.3%、2024年は3.2%と予測しています。また世界の失業率については、2023年が5.2%、2024年が5.4%と予測しています。

KPMG UK チーフエコノミストであるYael Selfinは次のように述べています。

「労働市場の回復やインフレ状況の改善は見られますが、世界経済の成長は今後2年間にわたり比較的低調で、長期的な平均を下回ると予測しています。世界経済の成長は、中国経済の復調と一部の新興市場の比較的堅調な成長に牽引されると予測される一方、今後2年間のユーロ圏および米国の経済による世界経済の成長への寄与は少なくなることが予想されます。この予測については、金融市場が不安定になれば、広範に渡って下方修正される可能性があります。
過去3年間の世界経済を見ると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)(以下、新型コロナ)によるパンデミック、ロシアによるウクライナ侵攻など立て続けに大きな衝撃を受け、同時に政府債務の大幅な増加や、中央銀行による政策金利の大幅な上昇を経験してきました。このような逆風の影響が表面化しているかどうか、またどのように作用しているのかはまだ分かっていません。」

財政政策は依然として金融市場を安定させ、インフレ率を緩和することに注力しており、経済成長を促すための潜在的な手段であり続けています。しかし、過去3年間で財政は著しく悪化しています。政府は、まず新型コロナから経済を守るために、そしてその後も高騰するエネルギー価格から家庭や企業を守るために巨額の費用を投じてきました。その結果、公債発行額が歴史的なレベルにまで膨らみ、大幅な財政政策を実施するための余力も少なくなっています。中国が経済を再開し、財政支援が強化される中、米国ではインフラ支出が増加しているにもかかわらず連邦政府支出が減速することが予想されます。金利の上昇はこれらの大きな債務に返済コストを高め、政府財政をさらに圧迫しています。しかし、昨年12月の新型コロナ関連規制解除により中国経済が比較的順調に回復していることから、今年は明るい成長の動きも期待されます。

この数カ月で、グローバルなサプライチェーンへの圧力は大幅に緩和し、同時に輸送コストも低下しました。これはインフレ圧力を緩和すると同時に、供給能力を改善することにも繋がります。世界貿易は依然として比較的弱い状態ですが、中国経済の再開と世界経済の回復によって貿易の流れが正常化するにつれ、今年は回復すると予想します。一方で、地政学的な緊張が中期的に貿易の流れに圧力をかけ続けるとも予想しています。また、今年は中国やヨーロッパで増加した貯蓄額(パンデミックの間、特定の消費が不可能だった時期に蓄えられた資金)により、消費者の需要も回復することが予想されます。このような資金は、いったん信用が回復すれば分配される可能性があるからです。実際、ヨーロッパでの消費者マインドは比較的低いレベルではありますが改善し始めています。

KPMGインターナショナル Clients & Marketsのグローバル統轄であるRegina Mayorは、次のように述べています。

「持続可能で長期的な成長にどのように戻すかは、現在、世界中の取締役会や政治機関が直面している大きな問題です。昨年末に広く予測された最大のインフレ懸念は、特にエネルギー価格上昇に歯止めをかけるため、より直接的で先見的な政治行動によってある程度緩和されました。また他の日用品や食料品の価格がようやく安定し始める徴候も見られ、深刻な財政難に直面している消費者や事業者を助けています。
今後数ヶ月国内で実施される政策が、世界経済の復旧のペースと性質に大きな影響を及ぼすと言えます。KPMGは、近年のテック企業によるレイオフ(一時解雇)の発表を考慮しても、雇用率が堅調さを維持すると予測していますが、パンデミック後に直面する労働市場の逼迫は緩和の兆しをほとんど見せていません。これは、今日世界が直面している複雑さの一端を示しています。
雇用統計の堅調さは、往々にして市場環境の好況の例として挙げられますが、同時に、賃金の期待値を操作し金融市場を引き締めたという意味で、中央銀行が直面している課題も反映しています。また、ウクライナ侵攻での転換がインフレを再燃させる危険性も依然として継続しています。特にヨーロッパとアメリカでの労働市場が堅調であるということは、消費者の個人貯蓄が比較的強いことと相まって、堅調な消費者需要を期待できるということであり、主要な市場では緩やかながら着実な国内成長に戻る可能性があります。」

日本における経済予測

同調査によると、物価上昇と世界的な逆風で日本の景気回復は停滞すると予想されています。

  • 世界経済の減退と消費支出の低下が、ペントアップ需要による景気回復を圧迫
  • インフレ後退を促す世界的要因の影響により、インフレは2023年前半をピークとして緩和することが予想される
  • 日本銀行は異次元の金融緩和政策を継続する可能性が高い

「Global Economic Outlook(2023年上半期)」 (英語)はこちら

KPMG Global Economic Outlookについて

KPMG Global Economic Outlookは、年2回発表する経済予測で、KPMGのグローバルネットワークのマクロ経済チームが、世界経済における主要な相互関係を把握するための一連の外部および内部モデルを利用して作成しています。すべての予測はきわめて不確実なものであり、著しく異なった結果になる可能性もあります。

KPMGについて

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