KPMGジャパン「日本企業のTCFD提言に沿った情報提供の動向2021」を発行

KPMGジャパンは、「日本企業のTCFD提言に沿った情報提供の動向2021」を発行します。

KPMGジャパンは、「日本企業のTCFD提言に沿った情報提供の動向2021」を発行します。

KPMGジャパン(東京都千代田区、チェアマン:森俊哉)は、「日本企業のTCFD提言に沿った情報提供の動向2021」を発行しました。2022年4月に公表した「日本の企業報告に関する調査2021」の中から、TCFD提言に基づく開示に焦点をあて、セクター別の分析等を加えながら、動向を解説しています。 

分析結果の主なポイントは、以下のとおりです。

・TCFD提言に沿った情報提供は金融、エネルギー、商社で進む
・有価証券報告書における情報提供は13%と限定的
・気候変動影響に対する企業の見解や取組みの実態を示す情報が不足している

コーポレートガバナンス・コード改訂などの動きもあり、日本企業のTCFD賛同表明社数は増加の一途をたどっています。
今回の調査結果から、TCFD提言に沿った情報について、9割を超える企業が何らかの情報提供を行っていることが明らかになりました。しかし、セクターによって情報提供の度合いは異なり、法定開示資料である有価証券報告書における情報提供もまだ2割に及びません。また、企業の見解や取組みの実態を示す情報が不足している状況も明らかとなっています。TCFD提言に沿った情報開示の目的は、企業と投資家のエンゲージメントの質を向上させ、金融安定化を目指すことであると、今一度、報告の意義について理解し、取組む必要があると考えます。

KPMGサステナブルバリューサービス・ジャパンは、2012年にその前身組織である統合報告アドバイザリーグループを組成して以来、企業の自発的な取組みである統合報告書の発行を、企業と投資家との対話促進を通じて価値向上に貢献する取組みの一つと捉え、2014年から日本企業の統合報告書に関する動向を継続して調査してきました。

日本の企業報告に関する調査2021」および「日本の企業報告の取組みに関する意識調査2022」の本調査との併用により、企業報告の取組みに関する現状理解のさらなる一助となることを目指しています。

本調査結果の概要

1. 情報提供の深度はセクターによって異なる

TCFD推奨開示11項目の平均言及率は58%で、金融の75%が最も高く、運輸の44%が最も低い結果となり、気候変動関連の情報提供の度合いがセクターによって異なることがわかりました。
気候変動は、セクターを問わず、長期の時間軸であればあるほど、広範な企業に影響します。そのため、気候変動がもたらすリスクと機会に関する明瞭で、比較可能かつ一貫した情報の開示が、金融市場の安定化に大きく関わっています。気候関連財務情報の開示にあたっては、まず初めに、開示の必要性を多面的に認識し、TCFD最終報告書の提言について、正確に理解することが肝心です。その上で、気候関連リスクと機会の影響を評価し、その対応を戦略へと落とし込み、モニタリングする仕組みや具体的なアクションを実装していく必要があります。

図:TCFD推奨開示11項目の平均言及率(全媒体、セクター別)

情報提供の深度はセクターによって異なる

2. 有価証券報告書における言及は限定的

有価証券報告書での言及率は、昨年からの向上はあるものの13%であり、最も多かった「識別した気候関連リスクと機会」の言及率も8%に留まりました。有価証券報告書に含めるべきかどうかを、企業は慎重に検討している状況にあるようです。
現在、気候変動リスクに関する開示の義務付けは、日本においても金融審議会での検討が進んでいます。制度化されると、法令順守のために、開示要請項目をチェックリストにし、一つずつ確認していくような形式的な対応に陥りがちです。何のための気候関連財務情報の開示なのか、開示目的を今一度認識し、法令順守を第一の目的とするような開示から脱却する必要があると考えます。

図:TCFD推奨開示11項目別の言及率(有価証券報告書、全セクター)

有価証券報告書における言及は限定的

3. 企業の見解や取組みの実態を示す情報が不足している

「気候変動シナリオに基づく戦略のレジリエンス」は32%、「リスク管理体制全体との統合状況」は42%の言及率となりました。
TCFD提言は気候関連に関わる情報開示に大きな進展をもたらし、そのフレームワークに基づく報告は、企業と投資家のエンゲージメントの質を高めるためのツールの一つです。しかし、推奨開示11項目に沿って、関連する情報をただ並べただけでは、エンゲージメントの向上にはつながりません。企業の価値創造のために気候変動がどのような影響を及ぼすのか、その影響に対して企業はどのように備え、自社のレジリエンスを高めいているのかについて、取締役会を含む経営層の見解と取組みの実態を示す必要があります。そのような情報提供こそが、TCFD提言の背景にある金融安定化へとつながっていくと考えます。

図:TCFD推奨開示11項目別の言及率(全媒体、全セクター)

企業の見解や取組みの実態を示す情報が不足している

調査概要

調査対象

日経平均株価(以下、日経225)*の構成銘柄となっている企業のうち、2021年12月末時点でTCFDへの賛同を表明している企業184社

調査方法

企業ごとに1人の担当者が統合報告書、有価証券報告書、サステナビリティ報告のすべてを通読し、TCFD推奨開示11項目で求められている情報と整合する情報の有無を確認する方法で実施
日本企業が提供している気候変動関連情報の質を評価するためのアプローチではなく、TCFD推奨開示11項目で求められている情報のうち、日本企業がどの程度言及しているのか、その整合性を調査するためのアプローチを採用
調査結果については、金融セクターと8つの非金融セクターの計9つに分類し、分析・考察を実施

選定基準日

統合報告書:2021年12月31日までに発行されたもの
有価証券報告書:2020年度決算
サステナビリティ報告:2021年12月31日までに発行されたサステナビリティ報告書、2021年11月〜12月における企業ウェブサイト上のサステナビリティ関連ページ

*日経平均株価(日経225)は株式会社日本経済新聞社の登録商標または商標です。

本調査の全文は、こちらからダウンロードできます:日本企業のTCFD提言に沿った情報提供の動向2021

KPMGジャパンについて

KPMGジャパンは、KPMGインターナショナルの日本におけるメンバーファームの総称であり、監査、税務、アドバイザリーの3つの分野にわたる8つのプロフェッショナルファームによって構成されています。クライアントが抱える経営課題に対して、各分野のプロフェッショナルが専門的知識やスキルを活かして連携し、またKPMGのグローバルネットワークも活用しながら、価値あるサービスを提供しています。

日本におけるメンバーファームは以下のとおりです。
有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人、KPMGコンサルティング株式会社、株式会社KPMG FAS、KPMGあずさサステナビリティ株式会社、KPMGヘルスケアジャパン株式会社、KPMG社会保険労務士法人、株式会社KPMG Ignition Tokyo

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