「KPMGグローバル自動車業界調査2021」を発表
KPMGは「KPMGグローバル自動車業界調査2021」を発表しました。今回で22回目となる本調査は、31ヵ国1,118人の自動車業界のエグゼクティブを対象とし、自動車業界の現状と将来の展望を分析しています。
KPMGは「KPMGグローバル自動車業界調査2021」を発表しました。31ヵ国1,118人の自動車業界のエグゼクティブを対象とし、自動車業界の現状と将来の展望を分析しています。
- 今後の自動車業界の収益性に関して、グローバル平均では「確信している」が53%だが、国別平均では回答にばらつきが見られる
- EVの市場シェア拡大が予想されるが、各市場別の見通しだけではなく、同一市場内の見通しに関しても、回答に幅がみられる
- 消費者が外出時に充電する場合に許容できる所要時間に関して、「30分以下」との回答は77%
- 2030年までに自動車購入の大半はオンラインになるとの回答は78%
- 自動運転技術を活用したサービスの新規市場参入は「2030年」までに実現するとの回答が、主要都市において過半数を占める
- サプライチェーンに関して、特に資材および労働力の課題に強い懸念がみられる
KPMG(チェアマン:ビル・トーマス)は、「KPMGグローバル自動車業界調査2021」を発表しました。今回で22回目となる本調査は、31ヵ国1,118人の自動車業界のエグゼクティブを対象とし、自動車業界の現状と将来の展望を分析しています。加えて、パワートレインの将来像、消費行動のデジタル化、新しいテクノロジーや市場への新規参入、脆弱なサプライチェーンへの対応といった、具体的なテーマに関する回答結果を分析しています。
調査の結果、53%が今後5 年間で自動車業界の収益性が向上すると考えており、38%は収益性の見通しを懸念している一方、国ごとで回答にばらつきが見られました。また2030年までのEV(電気自動車)の市場シェアに関して、日本、中国、米国、西欧において、およそ50%のシェアを獲得するとの結果が見られたものの、ここでも各市場別の見通しにおいても、シェア見通しについての幅がみられました。EV市場の発展は急速充電インフラへの投資に依存していると考えられ、外出時に充電する場合に許容できる所要時間は「30分以下」とする回答が77%にのぼりました。
また消費者行動のデジタル化の進展により、2030年までに新車購入の大半がオンラインになるという回答は78%を占めました。さらにテクノロジーと自動車産業の融合が進み、自動運転技術によるライドシェアや配送サービスの新規市場参入が予想され、米国、中国、日本、西欧市場への参入は「2030年まで」に実現するという回答が、過半数を占めました。
事業運営上の懸念事項として、短期的にも長期的にもサプライチェーンの課題が挙げられました。資材価格の変動を「非常に懸念する」との回答がおよそ半数(46%)を占めました。また、労働力不足を「非常に懸念する」との回答は過半数(55%)を占め、特に米国おいて顕著な結果が見られました。
「KPMGグローバル自動車業界調査2021」主なポイント
1. 自動車業界の収益性に対する見通し
世界経済はCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)による景気後退から回復を続けており、自動車業界もパンデミックの衝撃を乗り超えつつあることから、エグゼクティブは業界の長期的な収益性に対して前向きな見方を強めています。エグゼクティブの53%は、自動車業界が今後5年間で収益面の成長を遂げると「確信している」と回答していますが、国によってばらつきが見られます。米国は66%、中国は55%、日本は51%、ドイツは49%が「確信している」と回答している一方、フランスでは70%が「懸念している」と回答しています。また、「確信している」の合計から「懸念している」の合計を差し引いた数値を比較した場合、インドおよびフランスでは、「懸念している」が上回っていることが分かりました。
図1(左):今後5年間の自動車業界の収益見通し(グローバル平均)
図2(右):収益性を「確信している」合計と「懸念している」合計の差異(国別平均)
2. EVの市場シェア
2030年までにEVは各市場の新車販売のうちどの程度の割合を占めるか(ハイブリッドは除く)という質問に関し、市場別の平均値を調査した結果、日本(52%)、中国(52%)、米国(52%)、西欧(49%)はおよそ50%、ブラジル(41%)とインド(39%)はおよそ40%という結果になりました。しかし回答の分布を分析した結果、各市場別の見通しだけではなく、同一市場内の見通しに関しても回答に幅がみられることから、統一的な見方がされていないことが分かりました。
図3(左):2030年までに新車販売のうちEVが占める割合(市場別平均)
図4(右):2030年までに新車販売のうちEVが占める割合(市場別分布)
EVの購入費用が、ICE(内燃機関)の購入費用と同等になる時期も重要だと考えられます。今後10年でEVは政府の補助金なしで広く導入されると考えているエグゼクティブは77%にのぼりますが 、ほとんどのエグゼクティブ(91%)は政府によるEV消費者向けの直接補助プログラムの継続を支持しています 。
3. EVの充電性能
EV市場の成長は、急速充電インフラへの投資に依存していると考えられます。消費者が外出時に充電する際に許容できる所要時間(80%まで充電する場合)に関して、エグゼクティブの77%は「30分以下」と回答しています。回答者を日本のエグゼクティブに限定すると、84%が「30分以内」、55%が「20分以内」と回答しており、消費者のニーズに対応するには、より短い時間での充電が求められると考えられます。
図5:外出時に充電する際に許容できる所要時間
4. 自動車購入のオンライン化
自動車業界のエグゼクティブは、自動車の購入方法が大きく変化すると予想しており、2030年までに新車購入(試乗は除く)の大半がオンラインになるという回答は78%でした。また、2030年までに新車販売のうちメーカー直販が占める割合はどの程度かという質問に関して、「60%以上」との回答が約半数(47%)を占めました。回答者を日本のエグゼクティブに限定した場合、新車購入の大半がオンラインになるという回答は77%で、グローバル(78%)と同様の結果になりました。一方で、新車販売のうちメーカー直販が占める割合を「60%以上」と回答したのは22%で、グローバル(47%)を大きく下回る結果になりました。
図6(左): 2030までに新車購入の大半はオンラインになる
図7(右):2030年までに新車販売のうちメーカー直販が占める割合
5. 自動運転市場への新規参入
現在、テクノロジーと自動車産業の融合が進み、新たなアライアンスや市場への新規参入が増加しています。今後自動運転技術によるライドシェアや配送サービスが市場に参入する可能性について、「2030年まで」に参入するという回答が大半を占め、米国(65%)、中国(64%)、日本(60%)、西欧(55%)の主要都市で利用できるようになると予想されています。
一方で、どのような企業が自動運転技術を活用したサービスを提供するかについては、回答にばらつきが見られ、地域差があることが分かりました。グローバルのエグゼクティブの回答では、自動運転のテクノロジー事業者、レンタカー事業者が上位に位置付けられる一方、日本のエグゼクティブの回答では、自動車メーカーが上位という結果になりました。
図8:今後自動運転車をサービスとして所有または運用する企業
6. サプライチェーン課題への対応
サプライチェーンに関する課題として、特に資材および労働力の入手可能性やコストに強い懸念を示していることが分かりました。今後1年間の資材(半導体、鉄鋼、レアアースなど)の価格変動を「非常に懸念する」との回答は、およそ半数(46%)を占めました。また、今後1年間の労働力不足や賃金の値上げが事業に与える影響を「非常に懸念する」との回答は、過半数(55%)を占めました。特に米国おいて顕著で、「非常に懸念する」との回答のうち70%以上は、米国のエグゼクティブが占めています。
またサプライチェーン戦略における重要項目について、グローバルのエグゼクティブの66%が、「サプライヤーへの直接出資/JV設立」をあげている一方で、回答を日本のエグゼクティブに限った場合は47%にとどまっています。
図9: サプライチェーン戦略における重要事項
調査方法
名称 |
「KPMGグローバル自動車業界調査2021」 |
調査期間 |
2021年8月 |
調査対象 |
世界31カ国の自動車業界および周辺業界のエグゼクティブ 1,118人 ※CEO 372人、Cレベルエグゼクティブ325名、部門・部署責任者、マネージャー252人を含む ※調査対象の24%が自動車メーカー、13%が第1階層サプライヤー、11%がトラックメーカー |
調査方法 |
インターネットによるアンケート調査 |
対象地域 |
中国(26%)、米国(25%)、ヨーロッパ(25%)、日本、韓国、インド、カナダ、ラテンアメリカ、サウジアラビア、南アフリカ |
対象企業 |
2020年の年間売上が、100億ドル以上の企業が27%、10億ドルから100億ドルの企業が35%、10億ドル未満の企業が38% |
レポートの全文については、「KPMGグローバル自動車業界調査2021」のサイト(英)をご参照ください。
今後、オリジナルレポートに日本の消費者調査を加えた日本語版を発表する予定です。
本資料は2021年12月1日にKPMGが発表したプレスリリースをもとに日本語に翻訳し、日本企業の回答およびその考察を追記したものです。本資料の内容および解釈は英語の原文を優先します。
KPMGは、KPMG International Limited(「KPMGインターナショナル」)及びその関連事業体を含むグローバル組織、またはKPMGインターナショナルの1つ以上のメンバーファームを指し、それぞれが別個の法人です。 KPMG International Limitedは英国の保証有限責任会社(private English company limited by guarantee)です。KPMGインターナショナルは、クライアントに対していかなるサービスも提供していません。全てのメンバーファームは、KPMGインターナショナル、その関連事業体、他のメンバーファームに、第三者に対する義務を負わせまたは拘束する権限を有しておらず、またKPMGインターナショナルも全てのメンバーファームに対し、そのような権限を有していません。
KPMGについて
KPMGは、監査、税務、アドバイザリーサービスを提供するプロフェッショナルファームのグローバルネットワークです。世界146の国と地域のメンバーファームに約227,000名のプロフェッショナルを擁し、サービスを提供しています。KPMGの各メンバーファームは法律上独立した別の組織体です。
日本におけるメンバーファームは、次のとおりです。 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人、KPMGコンサルティング株式会社、株式会社KPMG FAS、KPMGあずさサステナビリティ株式会社、KPMGヘルスケアジャパン株式会社、KPMG社会保険労務士法人、株式会社KPMG Ignition Tokyo