KPMGによる世界初のネットゼロ準備度指数調査でノルウェーが首位
KPMGによる世界初のネットゼロ準備度指数(Net Zero Readiness Index:NZRI)調査で、石油資源の豊富な北欧のノルウェーが第1位となりました。
KPMGによる世界初のネットゼロ準備度指数(Net Zero Readiness Index:NZRI)調査で、石油資源の豊富な北欧のノルウェーが第1位となりました。
- 世界初のネットゼロ準備度指数(NZRI)はネットゼロ移行に向けた各国の準備状況を評価
- 北ヨーロッパ諸国が上位を独占、英国が2位、スウェーデンが3位
- 排出量ネットゼロを目指す世界的な取り組みにおいて、実現能力の欠如が課題
KPMGによる世界初のネットゼロ準備度指数(Net Zero Readiness Index:NZRI)調査で、石油資源の豊富な北欧のノルウェーが第1位となりました。
本調査では、気候変動の原因である温室効果ガスの排出削減について、調査対象32ヵ国の進捗状況を比較し、2050年までにネットゼロを達成するための準備度および実現能力を評価しています。ネットゼロ達成の重要な推進力であると考えられる103の指標を用いて、上位25ヵ国および注視すべき7ヵ国を特定しています。
本調査の結果、調査対象国のうち法的拘束力のあるコミットメントを行っているのは、世界排出量の約8%を占める9ヵ国のみで、ネットゼロの導入が遅れている国が多数あることが明らかになりました。セクターレベルでの実現能力を高めるためには、ネットゼロに係る目標が強固な戦略、政策および支援メカニズムにより後押しされる必要があります。大半の国では、NZRIにより示される国レベルの準備度は、セクターレベルでの準備度を反映したものになっています。
ネットゼロを目指す世界的な取り組みにおいて、実現能力の欠如が弱点となっています。本調査によると、ネットゼロの目標が設定されている国は、法的拘束力や政策の有無を問わず、さまざまなセクターにわたって強い実現能力を有していることが分かりました。さらに、繫栄度とネットゼロ達成への準備度の相関関係も示され、発展途上国への支援を促進する必要性が明らかになりました。
全調査対象国を考察した結果、世界の金融セクターは気候リスクを投資や融資の判断に組み込むようになってきている一方で、政府が持続可能な金融戦略、政策および規制の枠組みといった誘因的環境作りを通じて、財務活動の利用機会を高める上で非常に重要な役割を担っていることが分かりました。
また考察を通じ、主要な脱炭素化の取り組みの成功には、政治的な連携および社会的な支持が重要であることも浮き彫りになりました。
世界有数の石油・ガス輸出国であるにもかかわらず、今年のNZRIの首位はノルウェーでした。その理由のひとつとして、再生可能エネルギーや全国の交通機関の電動化に対する民間および公共の投資が挙げられます。ノルウェー議会は、2016年にカーボンニュートラルの目標時期を2050年から2030年に前倒しすることを決議しました。一方、ノルウェーは首位を獲得しているものの、ネットゼロへの移行に際し直面する課題にどのように継続して取り組んでいくか、引き続き重要な決断を迫られています。
来月、COP26気候変動サミットの開催を控えている英国は、全体で2位となりました。その理由には、党派を超えた政治的支援と法的に裏付けられた明確な目標により、英国の発電セクターの脱炭素化が比較的速やかに実現したことが挙げられます。しかし、特に暖房および建築物における脱炭素化においていまだ多くの課題が残っています。
ノルウェーの隣国であるスウェーデンは、気候政策、グリーンエネルギーおよびテクノロジーについて「非常に熱心」であり、国際的な提唱国であることから、3位にランクインしました。同国のネットゼロ達成への次のステップは、農産物の輸出入への持続的な依存を減らすことです。
NZRI 上位25ヵ国:
これまでの進捗状況や取り組みに基づき、ネットゼロ実現に向けてトップレベルの推進度にある国
1 |
ノルウェー |
11 |
韓国 |
21 |
マレーシア |
2 |
英国 |
12 |
スペイン |
22 |
アルゼンチン |
3 |
スウェーデン |
13 |
ハンガリー |
23 |
メキシコ |
4 |
デンマーク |
14 |
米国 |
24 |
トルコ |
5 |
ドイツ |
15 |
シンガポール |
25 |
アラブ首長国連邦 |
6 |
フランス |
16 |
チリ |
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|
7 |
日本 |
17 |
オーストラリア |
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|
8 |
カナダ |
18 |
ブラジル |
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|
9 |
ニュージーランド |
19 |
ポーランド |
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|
10 |
イタリア |
20 |
中国 |
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注視すべき7ヵ国:
大規模プロジェクトやネットゼロ促進のための新たな取り組みを通じて脱炭素化を推進する重要な機会がある、注視すべき国
インド |
ナイジェリア |
サウジアラビア |
タイ |
インドネシア |
ロシア |
南アフリカ |
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NZRIは、11月にグラスゴーで開催される重要なCOP26気候変動サミットに先立って発表されます。国連によると、大気中の温室効果ガスは過去300万年間で最高レベルに達しており、その結果1880年から2012年の間に世界の気温は0.85℃上昇し、海面が19cm上昇しています。政財界のリーダーたちは、さらなる気温の上昇が破滅的な社会的、環境的、経済的影響を地球に与える可能性があり、それを食い止めるため即座に行動する必要があるとの共通認識を強めています。
Richard Threlfall(Global Head of KPMG IMPACT)は次のように述べています。「気候変動は、我々が直面している人類の存続に関わる課題ですが、途方もなく感じられるこの課題に、前向きに、そして責任感を共有して立ち向かう必要があります。すべての個人、組織および国が前例のない水準で、透明性と誠実さをもって協力することが不可欠です。NZRIが、環境後進国が環境先進国から学ぶきっかけとなり、本調査を読んだ方々がネットゼロ実現に向けてそれぞれの役割を果たす後押しとなれば幸いです」
Mike Hayes(KPMG Global Head of Climate Change & Decarbonization)は次のように述べています。 「過去18ヵ月間に、ネットゼロへの気運は喜ばしいことに驚くほど高まっており、官民セクターおよび各国政府から科学的根拠に基づいた目標に係るコミットメントが発表されています。その結果、企業はそれぞれの脱炭素化の目標に向けて、より積極的なアプローチをとるようになってきました。しかし企業の最大の課題は、コミットメントを実際にどのように実現するかであり、ステークホルダーからは、進捗状況を知りたいという要望が近いうちに寄せられると考えられます。経済界および政治家が危機的状況に対応していることは明らかですが、できること、すべきことが依然として多くあることは確かです。NZRIによって、世界的に見ると取り組みの効果にばらつきが出始めていることが明らかになっています。地域ごとに優先順位が異なれば効果も異なります。ほんの数週間先にCOP26の開催を控える今こそ、お互いに学び合い、世界とビジネスのリーダーたちが気候変動問題に対し協力して実行力を伴う対策をとることを確実にし、手遅れになる前にネットゼロを実現するために協力しましょう」
2021年NZRIはKPMG IMPACTにより作成されました。KPMG IMPACTは、国連が策定した「持続可能な開発目標(SDGs)」に基づく課題、すなわち「ESGとサステナビリティ」、「経済的・社会的発展」、「持続可能なファイナンス」、「気候変動と脱炭素化」、「インパクトの計測、保証、報告」といった課題の解決に取り組むグローバルな組織体およびKPMGファームのクライアントの皆様を支援するため、昨年、2020年に設立されました。
NZRIの詳細については、こちらをご覧ください。
本資料は2021年10月14日にKPMGが発表したプレスリリースを日本語に翻訳し、日本の専門家のコメントを追記したものです。本資料の翻訳部分に関するその内容および解釈は英語の原文を優先します。
KPMGジャパンでは、グローバルの専門家と連携し、ネットゼロ実現に向けたクライアントの取り組みを支援しています。NZRIについても、順次日本語翻訳版を発行する予定です。
ネットゼロ準備度指数(Net Zero Readiness Index:NZRI)について
ネットゼロ準備度指数(NZRI)は、気候変動の原因である温室効果ガスの排出削減について、32ヵ国の進捗状況を比較し、2050年までにネットゼロを達成するための準備度および実現能力を評価するためのツールです。調査対象である32ヵ国は2種類に分類されます。これまでの進捗状況や取り組みに基づき、ネットゼロ実現に向けてトップレベルの推進度にある25ヵ国と、大規模プロジェクトやネットゼロ促進のための新たな取り組みを通じて脱炭素化を推進する重要な機会がある、注視すべき7ヵ国です。NZRI では32ヵ国それぞれについて、KPMG がネットゼロ達成の重要な推進力であると考える103の指標を検討しています。それらの指標は、国における準備度とセクターにおける準備度に分けられています。国における準備度では、国としての脱炭素化へのコミットメント、過去の脱炭素化の実績、人口増加など国特有の温室効果ガス排出要因および 脱炭素化を可能にする国の環境を考慮しています。セクターにおける準備度は、「電力と熱生産」、「運輸」、「建築」、「産業」および「農業・土地利用・土地利用変化・林業(本報告書では、「農業・土地利用・林業」と表記)」を対象としています。セクターにおける準備度では、脱炭素化の状況、政府の行動および実現能力という3つの視点から指標を考慮しています。これらの指標は、2014年に公表された国連の気候変動に関する政府間パネル「第5次評価報告書」 に沿ったものであり、各国のKPMGの専門家から寄せられた各国の状況および課題、成功、差し迫った取り組みについての知見を考慮しています。NZRIの対象読者は、ガバメント・パブリックセクター、国際組織、投資家や金融機関 、プライベートセクター、および一般の人々を想定しています。NZRIは、ネットゼロ課題の解決に関心や責任を持つあらゆる事業体、部門、事業、個人にとって、特に関心をひくものであると考えられます。この調査では、世界資源研究所の「ネットゼロ」の定義を使用しています。ネットゼロの達成には、まずは人為的に発生する温室効果ガスの排出量を可能な限りゼロに近づけることが必要です。残りの排出量は、大気中から同等量の炭素を除去して均衡させ、実質的に世界の気候に対する人類の将来的な影響を排除します。主な温室効果ガスは二酸化炭素であるため、ネットゼロに向けた取り組みは、化石燃料を燃やしたときに発生するガスを反映して、「脱炭素化」と呼ばれることが多くなっています。しかし、メタンや亜酸化窒素の排出も気候変動の大きな要因であることから、NZRIではこれらも考慮しています。
KPMGは、KPMG International Limited(「KPMGインターナショナル」)及びその関連事業体を含むグローバル組織、またはKPMGインターナショナルの1つ以上のメンバーファームを指し、それぞれが別個の法人です。 KPMG International Limitedは英国の保証有限責任会社(private English company limited by guarantee)です。KPMGインターナショナルは、クライアントに対していかなるサービスも提供していません。全てのメンバーファームは、KPMGインターナショナル、その関連事業体、他のメンバーファームに、第三者に対する義務を負わせまたは拘束する権限を有しておらず、またKPMGインターナショナルも全てのメンバーファームに対し、そのような権限を有していません。
KPMGについて
KPMGは、監査、税務、アドバイザリーサービスを提供する、独立したプロフェッショナルファームによるグローバルな組織体です。世界146の国と地域のメンバーファームに約227,000名の人員を擁し、サービスを提供しています。KPMGの各ファームは、法律上独立した別の組織体です。
日本におけるメンバーファームは、次のとおりです。 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人、KPMGコンサルティング株式会社、株式会社KPMG FAS、KPMGあずさサステナビリティ株式会社、KPMGヘルスケアジャパン株式会社、KPMG社会保険労務士法人、株式会社KPMG Ignition Tokyo