「KPMGグローバルCEO調査2020」について

KPMGインターナショナルは世界の経営者の将来見通しや重要施策等を調査した「KPMGグローバルCEO調査2020」を発表しました。

KPMGインターナショナルは世界の経営者の将来見通しや重要施策等を調査した「KPMGグローバルCEO調査2020」を発表しました。

  • 今後3年間の世界経済の見通しに対する自信が低下したCEOは全体の3割
  • 新型コロナウイルス感染拡大の前後で変化した最も大きなリスクとして、「人材に係るリスク」が台頭
  • ロックダウン中にDXが加速したと実感している企業は80%
  • CEOは企業のパーパス(存在意義)の再評価を余儀なくされ、ESGにより注目

KPMGインターナショナル(チェアマン:ビル・トーマス)は、世界の経営者の将来見通しや重要施策等を調査した、第6回目となる「KPMGグローバルCEO調査2020」を発表しました。KPMGは、多くの重要な市場が感染拡大の深刻な影響を受ける前の1月~2月に、世界主要11ヵ国1,300人のCEOを対象に調査を実施しました。その後、世界的な感染拡大におけるCEOの戦略や意識の変化について理解するため7月~8月に世界主要8ヵ国315人のCEOを対象に追加調査を実施しました。

本調査によると、より広範なESG(環境、社会、ガバナンス)への取り組み、柔軟な就業環境、デジタルトランスフォーメーション(DX)などの従来からの傾向はさらに加速しつつも、感染拡大の影響を受けCEOの検討課題は大きく変化していることがわかりました。かつてない不透明な状況下においてCEOは、企業の成長にとって最も深刻な課題として人材リスクを挙げ、社会に対するより広範な貢献と企業のパーパス(存在意義)を検討しています。

KPMGインターナショナルのチェアマンでCEOであるビル・トーマスは、「コロナ危機は、企業のデジタル化および社会的責任に関して、既に各社が実行していた戦略の推進を後押ししました。しかし、それ以外の分野、特に今後の働き方や問題解決の手法の検討に関しては、将来の計画立案が難しくなっています。そのため、事業の継続や企業の成長のために、CEOが人材の重要性に注目することは、自然な流れと言えるでしょう。」と述べています。

「KPMGグローバルCEO調査2020」の主なポイント

今回の調査結果の主なポイントは、以下のとおりです。

1)世界経済の見通し

今回の調査では、コロナ危機がCEOの自信に影響を与えたという結果を示しています。特に、今後3年の世界経済成長の見通しに関しては、2020年初旬と比較すると3分の1(32%)のCEOが自信の程度が低下したと回答しています。しかしながら、自国経済や自社の成長見通しについてはより多くのCEOが自信を示しています。(「より自信をもった」自国45%、自社67%)

2020年1月時点と比較した今後3年間の成長に対するCEOの自信

2020年1月時点と比較した今後3年間の成長に対するCEOの自信

日本においては、今後3年間の世界経済の見通しに関して、感染拡大前と変わらないと予想するCEOが多く、半数を占めています。一方、自国の成長見通しには半数がコロナ危機前より自信を持っており、自国の経済の回復・成長への期待感は高いと言えます。さらに、自社の成長については、それ以上に多くのCEOがコロナ危機前以上の自信を見せています。

2)コロナ危機から生まれた新しいリスクパラダイム:人材およびサプライチェーン

今後3年間で企業が直面する最も大きなリスクについて、7月~8月の調査では第一に人材リスク(採用、人材の維持、従業員の衛生・健康などを含む)が挙げられました。これは2020年1月時点では最も関心の低いリスクでしたが、感染拡大の結果、約5人に1人のCEOが「人材リスク」を挙げ、11個の他のリスクを抜き最大の懸念事項となりました。次いで、サプライチェーンリスク(18%)、環境/気候変動リスク(12%)が続き、サプライチェーンに係る懸念も2020年1月の調査と比較して高まっています。これは、企業がサプライチェーンにおけるディスラプションを管理し、(感染拡大を受けた愛国主義の兆候を考慮し)保護主義への回帰に備えていることが理由となっています。3分の2超にあたる67%の企業が、感染拡大の破壊的な影響を考慮し、グローバルサプライチェーンのあり方を見直すことを余儀なくされています。

日本においては、人材リスクと並んでサプライチェーンリスクを最大のリスクと捉えるCEOが多く、感染拡大前から大幅に増加しました。グローバルレベルでのサプライチェーン混乱による輸出入への影響のみならず、国内における大幅な需要の減少(あるいは特定商品の需要の急増)や生産拠点の閉鎖などにより、大規模な企業ほど、生産・調達体制を見直さざるを得なかったと想定されます。調査においてもほとんどの企業のCEOがサプライチェーンのあり方を見直すと回答しています。

今後3年間における企業にとっての最大のリスク

今後3年間における企業にとっての最大のリスク

3)職場におけるDXに対する意識の変化

対面での接触が制限されるにもかかわらず68%のCEOは感染拡大後、従業員とのつながりをより強く感じており、4分の3を超える企業(77%)が、デジタルコラボレーションとデジタルコミュニケーションツールを今後も継続的に利用するとしています。73%のCEOがリモート勤務の導入で潜在的な採用候補者の人材プールが拡大したと回答していることを踏まえると、採用戦略の変更を検討している企業が多いと考えられます。この状況は69%のCEOが近いうちに自社のオフィスの縮小を計画していると述べていることと合致します。

以下の意見に賛同するCEOの割合

以下の意見に賛同するCEOの割合

日本においては、デジタルコラボレーションとデジタルコミュニケーションツールを今後も継続的に利用するとの回答は世界主要国の中で最も低い割合でした。リモートワークのオペレーションに必要なデジタル化や、事業戦略に直結するデジタル化が優先され、コラボレーションやコミュニケーションへの投資や整備が十分でなく、継続的利用に至らないことが背景にある可能性があります。一方、自社のオフィスの縮小の計画には同意する割合が高く、多くの企業において、リモートワークの普及をきっかけに速やかにオフィススペースのあり方の検討が開始されたと考えられます。

オペレーションのデジタル化に関する進展の変化

オペレーションのデジタル化に関する進展の変化

調査結果によると、さらなる混乱へ備えるべく、CEOはDXの可能性に期待を寄せています。ほとんどの企業(80%)では、ロックダウン期間中に自社のDXが加速されたと実感しています。最大の進展はオペレーションのデジタル化であり、30%の企業はコロナ危機前に予想していたよりも数年先の導入状況に到達していると述べています。
日本企業においても同様の傾向が見られますが、デジタル化の加速度合として、「数年先の導入状況に到達した」との回答割合が他国より高く、感染拡大による環境変化でデジタル化を最優先で取り組んだ企業が多いと想定されます。一方、デジタル顧客体験や新しいワークフォースモデルの創出の加速度合は他国と変わらず、これらの課題への対応には苦慮している企業も多いと想定されます。この背景には、ほとんどのCEOがDXの最大のボトルネックとして挙げている「将来のオペレーションシナリオの洞察力の不足」が一つの要因となっていると考えられます。

4)パーパス(存在意義)とESGの重要性

1月~2月の調査では65%のCEOが、企業は社会的問題に対処することを期待されていると考え、76%は企業のリーダーとして個人としても責任を有すると考えていました。

感染拡大により、社会的問題への対応の要求は高まり、企業およびそのリーダーは更に厳しい目を向けられています。この結果、7月~8月の調査ではCEOの79%が自社のパーパス(存在意義)の再評価を余儀なくされたと認めています。また、同じく79%のCEOが、コロナ危機が始まって以来、組織のパーパス(存在意義)に対して感情的な繋がりを強く感じており、これは意思決定に影響を与えていると述べています。また企業は、ESG (環境、社会、ガバナンス)への取り組みを加速させており、10人中6人(63%)のCEOが、感染拡大によりESGの社会的要素により注目するようになったことを認めています。
日本においても、感染拡大により非常に多くのCEOが自社のパーパス(存在意義)の再評価を余儀なくされ、その割合は世界主要国の中で最も高くなっています。一方、組織のパーパス(存在意義)に対して感情的な繋がりをより感じているとの回答は半数程度と、世界主要各国の中では最も低い結果でした。この背景には、組織のパーパス(存在意義)を実現するための具体的アクションプランの検討が十分でなく、感情的な繋がりを持つに至っていない可能性も考えられ、取り組みの加速が求められると言えそうです。

以下の意見に賛同するCEOの割合

以下の意見に賛同するCEOの割合

約4分の3(71%)のCEOがコロナ危機の結果として得られた気候変動に関連する成果を維持したいと考えています。これは特に世界的な大企業(年間収益ベースで100億米ドル以上)の間で顕著な傾向です。多くの企業および業界が気候変動による危機に直面している中、65%のCEOが気候変動リスクへの対応は企業の成功にとって重要な要素であり、今後5年間業務を維持できるかどうかを決定づけると認識しています。
日本は、その割合が世界主要国中最も高く、また感染拡大前の調査で環境/気候変動リスクが約3割のCEOの最大の関心事であったことも踏まえると、その対応を主たるミッションの一つとして多くのCEOが意識していることが窺えます。

 

KPMGグローバルCEO調査2020に関する情報については、home.kpmg/CEOoutlookのサイトをご覧ください。また、ハッシュタグ「#CEOoutlook」を使用して、Twitterアカウント「@KPMG」でのツイートをフォローいただけます。

「KPMGグローバルCEO調査2020」について

「KPMGグローバルCEO調査2020」では、今後3年間の自社および経済成長に対する経営者の見通しを提供しています。KPMGは、多くの重要な市場がまだ感染拡大の深刻な影響を受ける前の1月~2月に、1,300人のCEOを対象に調査を実施しました。その後、7月~8月に315人のCEOを対象に追加調査を実施し、コロナ危機下での経営者の意識の変化について調べました。両調査では、年間収益が5億米ドル超の企業を調査対象としており、それらのうち3分の1は同収益が100億米ドル超の企業です。1月~2月の調査は11ヵ国(オーストラリア、中国、フランス、ドイツ、インド、イタリア、日本、オランダ、スペイン、英国、米国)の11業界(投資運用、自動車、銀行、小売/消費財、エネルギー、インフラ、保険、ライフサイエンス、製造、テクノロジー、通信)の経営者を対象とし、その後の追加調査は業界はそのまま、8ヵ国(オーストラリア、カナダ、中国、フランス、イタリア、日本、英国、米国)の企業の経営者を対象としています。


注)いくつかの数値に関しては四捨五入を行っているため、必ずしもその合計が100%にならない場合があります。

KPMGインターナショナルについて

KPMGは、監査、税務、アドバイザリーサービスを提供するプロフェッショナルファームのグローバルネットワークです。世界147ヵ国のメンバーファームに約219,000名のプロフェッショナルを擁し、サービスを提供しています。KPMGネットワークに属する独立した個々のメンバーファームは、スイスの組織体であるKPMG International Cooperative(“KPMG International”)に加盟しています。KPMGの各メンバーファームは法律上独立した別の組織体です。日本におけるメンバーファームは、次のとおりです。 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人、KPMGコンサルティング株式会社、株式会社KPMG FAS、KPMGあずさサステナビリティ株式会社、KPMGヘルスケアジャパン株式会社、KPMG社会保険労務士法人、株式会社KPMG Ignition Tokyo

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