人手不足時代に見る海外先進エネルギー企業の人材戦略

世界のエネルギー業界では、ベビーブーマー世代の大量退職に加え、求められるスキルのデジタル化が進み、人材獲得競争は一段と激化しています。海外事例を参考にしつつ、日本独自の価値観や若手世代の特性を踏まえた人材戦略の方向性を考察します。

世界のエネルギー業界では、人材獲得競争が一段と激化しています。海外事例を参考にしつつ、日本独自の価値観や若手世代の特性を踏まえた人材戦略の方向性について考察します。

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ハイライト

  1. 世界のエネルギー業界が直面する労働市場の変化
  2. 多様性・公平性・包摂性(DE&I)の強化を通じた人材獲得と定着
  3. デジタル・専門人材
  4. 中堅層・その他
  5. 海外の知見を活かしつつ、日本独自の人材戦略を

1.世界のエネルギー業界が直面する労働市場の変化

近年、世界のエネルギー業界では、事業投資の拡大に伴い、雇用・採用数が急増しています。その一方で、ベビーブーマー世代の大量退職に加え、事業の近代化により求められるスキルのデジタル化も進み、テック企業や製造業との人材獲得競争は一段と激化しています。

とりわけ、石油・ガスといった、いわゆる伝統的なエネルギー企業では、若年層における就業先としての人気が低迷しているうえ、エネルギー事業に関連するSTEM系(科学・技術・工学・数学分野等の理工系)学位を持つ若手人材の供給も、その需要に追いついていないのが現状です。実際に、国際エネルギー機関(IEA)が27ヵ国190を超えるエネルギー関連企業を対象に実施した調査 では、ほぼすべての職種で、「採用意欲は高いものの、適格人材が見つからない」との回答が2年連続で多数を占めています。特に、建設部門では、回答企業の75%が採用難に直面しており、状況はきわめて深刻です。

こうしたなか、足元の労働市場で、急速に存在感が高まるのが、1990年代後半から2010年代に生まれた、いわゆるZ世代です。アメリカでは、すでに総労働人口の18%を占め、1946~1964年生まれのベビーブーマー世代のシェア(15%)を凌駕するまでに拡大しています 。世界全体でも、その比率は、2025年末までに30%近くまで拡大する見通しです 。こうした欧米の先進国では、Z世代は他の世代に比べて、柔軟な働き方に加え、自らの目的意識や存在意義、さらには社会への貢献を実感できる企業を慎重に選ぶ傾向が強いという特徴があります。こうした価値観の変化を踏まえ、企業には、報酬や裁量の充実に加えて、社会に対して果たすべき自社の役割や責任、そして目的としての社会的使命(ミッション)を明確に打ち出すことが求められています。

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