Article Posted date
02 July 2024
このたび、世界のエネルギー市場とエネルギー転換に向けた動向を概観する統計資料である「Statistical Review of World Energy 2024年版」が公開されました。本統計資料は、英国のThe Energy Instituteが毎年、前年における世界のエネルギー動向を分析し、1952年から発刊している歴史ある年次統計資料で、エネルギー消費・生産・取引や排出量に関する最新の情報を包括的かつ無償で提供するデータソースです。
KPMGは2023年からKearneyと共に参画しており、73回目となる今年の統計では、蓄電池・電池、炭素回収、水素やアンモニア、さらにはウランなどの重要鉱物に関する情報も新たに取り上げています。将来の見通しやシナリオと組み合わせたうえで、さまざまな業界における事業機会・リスクの特定や意思決定にご活用ください。
Statistical Review of World Energy 2024年版で参照可能なコンテンツ(例)
- 世界・国別一次エネルギー源別需給量・取引量・価格
- 化石燃料・重要鉱物の生産量・埋蔵量・価格
- 世界・国別二酸化炭素回収・有効利用(CCUS)導入量
- 世界・国別・電源別電力発電量(各種再エネ含)
- 系統用蓄電池の導入容量
- エネルギー源別排出量
なお、Energy charting toolでは、必要に応じてデータをカスタマイズして、チャートを作成することが可能です。
Statistical Review of World Energy 2024年版のハイライト
1. 化石燃料の消費拡大を背景に、世界のエネルギー消費量・排出量は過去最高値を更新
- 世界における一次エネルギー消費量は、前年比2%増の620エクサジュール(EJ)となり過去最高値を記録
- 世界における化石燃料消費量は、前年比1.5%増の505 EJと過去最高値を更新
- エネルギー由来の排出量は2%増加し、初めて40ギガトン(GtC)を超過
2. 太陽光・風力発電の導入加速により、世界の再エネ発電量は過去最高水準へ
- 世界における再エネ由来発電量(水力を除く)は、13%増の4,748TWhと過去最高値を記録
- 太陽光と風力発電の導入が加速され(太陽光と風力発電の総追加導入量におけるシェアは74%)、一次エネルギー消費量に占める再エネの割合は8%(水力を含めると15%)まで拡大
3. 欧州では、ウクライナ紛争の継続により、ガスのリバランスが定着
- 欧州のガス需要は、前年の13%減に続き、2023年も前年比7%減少
- 欧州では、LNG輸入量が2年連続でパイプラインでのガス輸入量を上回り、ガス輸入に占めるロシア産輸入ガスの割合は、2021年の45%から15%まで低下
4. 主要先進国における化石燃料への依存はピークに達した可能性が高い
- 欧州ではエネルギー需要の削減と再エネ導入の加速を背景に、化石燃料の消費量が、産業革命以来初めて一次エネルギー消費量の70%を下回った
- 米国における化石燃料の消費量も、一次エネルギー消費量の80%まで低減
5. 新興国が化石燃料消費の増加抑制に苦戦する一方、中国は世界の再エネ導入を牽引
- インドの化石燃料消費量は拡大(前年比8%増)を続け、欧州と北米の石炭消費量合計を初めて上回った
- アフリカのエネルギー消費量における化石燃料の割合は90%と依然高止まり
- 一方、中国では、一次エネルギーにおける化石燃料の割合は、2011年以降一貫して減少し、2023年は81.6%まで低下。世界における再エネの追加導入量の55%のシェアを占める