カーボンニュートラル目標の達成に寄与するとして、クリーンテック・スタートアップへの期待が高まっています。これまで日本政府はクリーンテックに特化したスタートアップのみを対象とする支援を実施してきませんでした。しかし、2023年に、日本政府はGX推進のための各種支援策やGX推進機構の設置が発表され、日本発のクリーンテック・スタートアップが活躍することが期待されます。今後、日本政府はクリーンテック・スタートアップ領域にさまざまな支援を実施することが想定されますが、この領域にはどのような支援が必要とされるのでしょうか。本稿ではクリーンテック・スタートアップの特徴と世界が寄せる期待を示しつつ、化石燃料の産出国でありながらもクリーンテック・スタートアップを次々に生み出しているカナダを例に、クリーンテック・スタートアップへの公共部門の支援策の在り方について考察します。

クリーンテック・スタートアップ振興に向けた公的支援のあり方の主要論点

  • 世界各国が2050年までにカーボンニュートラルを実現することを目指すなか、イノベーションによりGXを推進するキープレイヤーとしてクリーンテック・スタートアップへの期待が高まっています。クリーンテック・スタートアップは、エネルギー分野等において気候変動対策技術の開発やサービスの提供を行うスタートアップです。さまざまな企業が環境パフォーマンスの向上を求められるなか、スタートアップが市場に参入しやすい状況になってきています。他方、クリーンテック・スタートアップによる技術開発は初期投資が大きく、長期間かけて行われるため、通常のVCモデルに適合せず、投資が集めにくいという特徴もあります。
  • クリーンテック・スタートアップへの主な公的支援には、資金提供(補助金、デット、エクイティ)、インフラ提供、サービス提供(ビジネスサービス、技術的知識等)、ネットワーキングがあり、クリーンテックの開発段階に合わせて柔軟に支援する必要があります。化石燃料の産出国かつ利用量も多いカナダでは、クリーンテック・スタートアップが多く設立されており、2023年には10社がGlobal Cleantech 100に選出されました。カナダでは公共機関がクリーンテック・スタートアップを対象とした様々なイニシアティブを実施しています。
  • 日本政府はクリーンテック・スタートアップに特化した支援や投資額をあまりしてきていませんが、2023年末、GX実現に向けたさまざまな取組みを進めると発表しました。日本政府が長期的に複合的な観点で支援を行うことで日本発のクリーンテック・スタートアップが育成され、活躍することが期待されます。

1.グリーン分野のイノベーション創出に向けたサイクル

(1)GX推進の必要条件~イノベーションの創出

日本を含む世界各国において、2050年にカーボンニュートラル(CN)を実現することを表明し、新興国や開発途上国においても期限付きのネットゼロを表明している国が出てきています。これまでの削減状況を鑑みると、極めてチャレンジングな目標が掲げられている状況です。

カーボンニュートラルを実現するためには、既存の技術やサービスを継続的に活用し続けて解決に繋げることは困難です。世界が挑むこの社会課題を解決しつつ、さらなる経済成長を実現するために、抜本的な変革(イノベーション)が必要です。現在、化石燃料を使わず、クリーンなエネルギーを活用した経済社会を実現するための変革とそのための活動、いわゆるグリーントランスフォーメーション(GX)を推進するためのイノベーションが必要とされています。

(2)イノベーション創出の必要条件~クリーンテック・スタートアップの成長

社会課題を解決し、経済成長を牽引するキープレイヤーとして、スタートアップに注目が集まっています。スタートアップは、既存の概念や手法にこだわらず、柔軟な発想でイノベーションを生み出し、社会課題を解決することをミッションとして技術・サービスの開発を行っています。日本政府も「スタートアップ育成5か年計画」において、スタートアップが社会課題を成長のエンジンに転換し、持続可能な経済社会を実現する主体と示しており、大きな期待を寄せています。さらに、スタートアップは技術開発を進めるために投資や融資を受け、限られた時間のなかで成果を上げることが求められており、CN目標のように期限付きの達成目標にスタートアップが大きく貢献できると予想できます。

近年、気候変動対策となる技術の開発やサービスの提供を行うクリーンテック・スタートアップが登場しました。クリーンテックとは、温室効果ガス排出量の削減や地球温暖化の影響等への対処に貢献する技術のことであり、再生可能エネルギーや省エネ、廃棄物削減等に関する技術等が含まれます。また、「再生不能資源を全く消費しない、もしくはその消費量を減らし、従来と変わらない効用を生み出すことのできる製品・サービスプロセス」と定義されることもあります。「クリーンテック」に代わり「クライメートテック」という言葉が用いられることも増えてきましたが、クリーンテックとほぼ同義であり、本稿では「クリーンテック」を用いています。クリーンテック・スタートアップには、太陽光、地熱等の再エネ、水素・アンモニア等の新エネルギー、空調、蓄電池、燃料電池等のエネルギー関連技術の開発や、農業・畜産業の低炭素化技術の開発を行っているスタートアップがあります。

クリーンテック・スタートアップには、エネルギー分野の技術開発に注力する企業が多くいますが、これまでエネルギー分野の技術・サービスの開発には多額の資金と研究施設が必要であり、市場へのアクセスも必要だったため、大企業が開発主体でした。ところが近年は、分野・企業規模を問わず、さまざまな企業の環境パフォーマンスがこれまでにも増して重視されるようになり、多様な企業ニーズに対応できる創エネや省エネ技術への需要が高まってきています。このような動きもあり、中小企業やスタートアップがエネルギー市場に参入しやすくなりました。特に、太陽光発電や蓄電池、燃料電池等の再エネ関連技術やヒートポンプや空調などの省エネ関連技術、また、EV等のCO2排出量削減技術はスタートアップでも市場への参入障壁が低い技術分野です。障壁の低い分野から市場に参入し、資金が確保できてから分野を拡大させる戦略も考えられます。

(3)クリーンテック・スタートアップ成長の必要条件~誕生の促進・育成土壌の整備

限られた時間のなかでCNを達成するためにはGXを推進するクリーンテック・スタートアップの誕生・育成を促進させる必要がありますが、そのためにはどのような環境整備が必要でしょうか。

クリーンテック・スタートアップはアイディアをプロトタイプにするための研究・技術開発を行うにあたり、研究設備等への大規模な初期投資を必要とする場合が多いです。また、スタートアップのビジネスモデルはマネタイズまでに長期間を要すことに加え、期待収益率から大きく外れることも想定されます。よって、通常のベンチャーキャピタルモデルに合わず、スケールアップの見込みを立てるのが困難であり、民間投資により資金を得ることが難しい場合があります。特にエネルギー分野は長期的な目線で実証事業も行いながら技術開発が行われる分野であり、ビジネス化まで時間がかかることから、公的機関による支援が有効と考えられます。

2.クリーンテック・スタートアップへの政策的支援

公的機関がクリーンテック・スタートアップへのサポートにはどのようなものがあるのでしょうか。国際エネルギー機関(IEA)が2022年3月に公表した‟How Governments Support Clean Energy Start-ups”では、環境負荷の低い技術開発を行うスタートアップ等を対象とした公的機関による支援の内容が整理されています。本報告書に整理されているクリーンテック・スタートアップ支援策の類型を紹介します。

 

クリーンテック・スタートアップを対象とした政府による支援

サポートの種類

  直接支援 第三者を通じた間接支援
(1)資金提供(補助金、デット、エクイティ)
  • コンソーシアムへの補助金提供
  • 単独受領者への補助金提供
  • コンペティション等での優勝者への助成金提供
  • ローンまたはローン保証の提供
  • エンジェル投資、シードエクイティ投資
  • 助成金提供
  • コンペティション等での優勝者への助成金提供
  • エンジェル投資、シードエクイティ投資

 

(2)インフラ提供
  • 公的研究機関から専門知識の提供
  • 機器調達
  • 公共施設をオフィススペースとして提供
  • 実証環境の提供
  • 民間研究機関から専門知識の提供
  • 民間企業の設備をオフィススペースとして提供
(3)サービス
  • ビジネスサービス(経営陣の結成、投資家へのピッチの改善、財務モデルの構築、スタッフの採用、法的助言、知的財産・事業戦略策定のための支援)
  • 技術的専門知識の提供
  • 妥当性検証と認証
(4)ネットワーキング
  • ピアツーピアの機会の提供
  • 投資家や潜在顧客との繋がり提供
  • 政策との連携(政策決定者とのセッションの機会提供等)
  • 国際的なコネクションの提供

出典:IEAのレポート“How Governments Support Clean Energy Start-ups”(2022年3月)を参考に、KPMG作成 

シードステージのスタートアップは、いち早くアイディアをプロトタイプ等の形あるものにし、企業の存続期間を延ばすためにも、可能な限り迅速に資金にアクセスする必要があります。スタートアップの成熟度合いによって資金が必要な時期は異なりますが、政府が実施できる資金提供には、直接的な支援と第三者を通して行う支援があり、資金提供の条件を鑑みてスタートアップが成熟度に合わせて適切な資金提供を選択できるようになる必要があります。直接的な支援は、政府機関からスタートアップに直接譲渡される補助金です。申請者や支出の対象が定められており、スタートアップの資金管理能力も審査基準に入ることがあります。第三者を通して行う支援とは一般的にはインキュベーターを通した支援を指します。インキュベーターは資金やサービスなどをスタートアップに提供する代わりにスタートアップの株式を取得します。このような方式を好まないスタートアップも存在するため、そのような場合には政府からの直接支援を活用します。

シードステージのスタートアップは、資金のみならず、プロトタイプ等を製作するためのインフラへのアクセスも必要です。大学発のスタートアップは大学の研究施設を利用できますが、そうでないスタートアップの場合、研究施設へのアクセスや自ら研究設備を準備することは困難です。政府から国立もしくは公立の研究施設の利用許可、もしくはインキュベーターやアクセラレーターから研究施設のアクセス権を得ることで、研究開発を進められます。

そのほか、スタートアップの持続的な企業経営や国内外へのサービス展開を支援するにあたり、ビジネスに関する知識やノウハウの提供も重要です。また、スタートアップが専門家からの助言を得たり、技術・サービスの提供範囲を広げることを目的として、関係者と連携したりするために、政府機関が持つ国内外のネットワークを活用することもできるでしょう。

現在、日本政府は、起業を試みる個人や起業したばかりのスタートアップ、海外進出を希望するスタートアップを対象にさまざまなサービスやネットワークを提供する委託事業も実施しています。また、日本政府は資金支援やスタートアップと研究施設を有する企業との連携を促すプロジェクト等を提供してきていますが、クリーンテック・スタートアップに特化した支援プログラムは少ない状況です。日本は世界からも化石燃料に依存していることを指摘されており、現状からの脱却のために2023年12月にGX推進指針を策定しました。2024年夏にはGX推進機構が設置され、今後、民間企業を対象としたGX投資支援が行われる予定です。クリーンテック・スタートアップもその投資対象となることから、化石燃料をエネルギー源として利用している他国でのスタートアップ支援策を参考にすべく、ここではカナダ政府によるスタートアップ支援策を紹介します。

3.カナダのクリーンテック・スタートアップ支援策

(1)カナダの産業構造と環境政策

カナダは石油、天然ガス、石炭等のエネルギー資源が豊富であり、世界第4位の産油国です。石油精製時の温室効果ガス排出量が多いこともあり、産業別温室効果ガス排出量の約3割を石油・ガスセクターが占めています。そのような産業構造を持つカナダですが、一方でカナダ政府は環境保護政策に非常に力を入れており、2030年までに40~45%(2005年比)のCO₂排出量削減目標を立てています。2016年に「環境にやさしい成長と気候変動に関するバンクーバー宣言(“Vancouver Declaration on Clean Growth and Climate Change”)」を公表し、そのなかで連邦政府と州・準州政府を対象に気候変動対策を実現するよう明記しました。同年に公表した「環境に優しい成長と気候変動に関する汎カナダ枠組み(‟Pan-Canadian Framework on Clean Growth and Climate Change”)」では、カナダの気候変動対策のための重点施策の1つに「革新的な低炭素技術の開発と雇用機会の創出」を掲げ、バイオ燃料や水素等の低炭素化技術への投資を行うことを示しました。さらに、2023年12月には、石油・ガス部門のGHG排出量に上限を設定する計画を示しており、国内の脱炭素化を加速化しようとしていることがわかります。

カナダ政府による重点的施策の成果か、Cleantech Groupが作成した“GLOBAL CLEANTECH 100”の2023年版ではカナダ企業が10社以選定されています。Cleantech Groupは脱炭素技術の研究開発やコンサルティング事業を行う企業です。“GLOBAL CLEANTECH 100”は、Cleantech Groupと有識者が選出したCNに寄与する有望な世界のスタートアップ100社であり、Cleantech Groupが開催するフォーラムで発表されます。

選定されたカナダのスタートアップには、地熱発電の技術開発を行う企業、メタンからクリーン水素を取り出す技術を開発した企業、リサイクル可能な亜鉛を用いた蓄電池を開発・提供する企業等があります。
カナダ政府はクリーンテックを以下のように定義しています。

  • 環境汚染や劣化を緩和、もしくは、全くなくすことができる環境保全活動
  • 天然資源の効率的な活用し、資源枯渇へのセーフガードとなる資源管理活動
  • 産業基準と比較して省エネや資源集約的な方法で資源の利用

(2)カナダ政府によるイニシアティブと支援内容

世界でも有望なスタートアップを育成するためにカナダ政府はどのような支援を行っているのでしょうか。下表にカナダ政府によるスタートアップを対象としたイニシアティブと支援内容の一部を紹介します。

カナダ政府によるイニシアティブと支援内容

イニシアティブ: Impact Canada

支援概要
カナダ枢密院事務局のImpact and Innovation Unitが運営。カナダ政府が優先的に取り組むべき分野における課題を解決するための新しい政策やプログラム手法の開発に繋げることが目的。
クリーンテックのみならず、エネルギーや農業等を対象としたプログラムも実施。例えば、プログラムの1つであるWomen in Cleantech Challengeでは、女性のクリーンテック起業家を対象に、応募者の中から競争形式で選定された優勝者に対して1年間に11.5百万米ドルを支給し、国立エネルギー研究所の利用許可やスタッフ雇用支援等が行われた。

(1)資金提供(補助金、デット、エクイティ) 資金付与(成果や達成度に合わせた助成金、寄付金)
(2)インフラ提供 研究施設の利用権の提供(技術サービスの開発・試験用)
(3)サービス キャパシティビルディング、コーチング
(4)ネットワーキング 政府の科学技術専門家、規制当局、ビジネスの専門家等とのネットワーク構築

 

イニシアティブ:Canadian Technology Accelerator

支援概要
カナダ政府グローバル連携省商務部(Global Affairs Canada's Trade Commissioner Service)が2013年に開始したプログラム。クリーンテックのみならず、ICTや生命科学・デジタルヘルス等の分野に取り組むスタートアップを対象としている。これまでに730社のカナダのスタートアップを支援し、総額7.5億カナダドルの資本調達を実現。日本にも2019年に導入されており、カナダ大使館商務部がカナダのスタートアップの日本進出・事業拡大を支援している。

(1)資金提供(補助金、デット、エクイティ)  - 
(2)インフラ提供 ワークスペースの提供
(3)サービス コーチング、メンタリング、市場戦略の提供
(4)ネットワーキング 商務部のネットワークを活用して海外企業とのパートナーシップ形成支援、投資家やベンチャーキャピタルの紹介

 

イニシアティブ:Science and Technology Assistance for Cleantech

支援概要
カナダ天然資源省エネルギー研究開発室が主導するClean Growth Programの一環。エネルギー、工業、林業の分野を対象に、クリーン技術の研究、開発、実証を支援。中小企業が先導して研究所とコンソーシアムを組むことで応募可能なプログラム。総額1.55億米ドルが提供され、2022年に終了。

(1)資金提供(補助金、デット、エクイティ) 1コンソーシアムに対して最大で900万カナダドル(700万米ドル)を5年間にわたって支給
(2)インフラ提供 研究施設の利用
(3)サービス    - 
(4)ネットワーキング  - 

出典:カナダ政府による公開情報を基にKPMGが作成

Impact Canadaは開始以来、プロジェクト実施者や参加企業から情報収集し、より効果的かつ効率的な政策・プログラム実施のための調査を行っています。調査において、Impact Canadaに参加した企業のうち、進捗率の高い企業は特に資金提供以外のインセンティブを重視していることが明確になりました。

また、カナダのトロント地域には、北米最大級の都市型イノベーションハブがあることも特徴的です。トロント地域は従来から小売り・サービス業などが多い地域で、現在は大学・研究機関や病院、金融機関、政府機関、ベンチャーキャピタルや企業等が集っています。2000年にはカナダ政府が同地区に政府系非営利団体を設立し、クリーンテック、医療、フィンテック、エンタープライズ・ソフトウェア分野の起業家を対象に起業からスケールアップまでの各成長段階に応じた支援を行っています。これまでに1,400社が支援を受けています。

さらに、2023年2月、カナダのイノベーション・科学・産業省はカナダ持続可能開発基金(SDTC)を通して、クリーンテック・スタートアップ17社に対して6,829万カナダドルが助成することを発表しました。SDTCとはクリーンテック向けに資金提供や助言を行うことを目的に2021年にカナダ政府によって設立された基金です。2023年2月までに500社以上に総額15億8000万カナダドル以上を助成し、年間31億カナダドルの収益、2万942人の新規雇用創出、194の新技術の市場投入、年間2,260tのCO₂削減を達成しています。SDTCの支援対象のうち10社がGlobal Cleantechに選出されています。カナダ政府によると、2021年のクリーンテック企業によるカナダ経済への経済効果は282億カナダドル以上で、商品・サービスの輸出額は92億カナダドルです。また、188,000人の雇用を生み出しており、クリーンテック分野の雇用のうち女性が41%を占めています。クリーンテックの支援を通してカナダ政府はCN実現のための貢献のみならず、経済効果と雇用創出を実現しています。

カナダ政府はスタートアップや中小企業等のリーンテック開発を促進させるため、カナダ政府ウェブサイトにClean Growth Hubを設置しています。カナダ政府は本サイトにクリーンテック支援に関する補助金等の紹介、財務や知財、規制等、ビジネスに関する情報を提供しており、企業が助言を希望する場合には個別に対応しています。

以上のように、カナダ政府はクリーンテック・スタートアップを対象とした資金支援、インフラ、サービス、ネットワーキングの支援を幅広く行うとともに、スタートアップが自らの技術を社会実装できるように関連企業が集まるハブを設置し、エコシステムを形成することでクリーンテックの成長と拡大に寄与しています。

4.日本への示唆

日本政府は2022年11月に「スタートアップ育成5か年計画」を掲げ、過去最大の1兆円規模の起業支援を表明しました。支援の対象には気候変動対策関連の技術開発を行う企業を含むことが「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」で明示されています。日本においてもクリーンテック・スタートアップの認知度が上がりつつあり、支援の対象としての重要性が認められていると考えられます。

これまでも日本政府はスタートアップを対象とした研究開発型支援、ビジネスプランの添削やピッチの場の提供、融資制度や債務保証制度等の設置を行ってきましたが、GX分野のスタートアップを対象とするものは少なく、日本政府からクリーンテック・スタートアップへの投資額も多くはありませんでした。

2023年12月、日本政府はGX実現に向けた取組を公表しました。この公表において、政府は、日本のGX関連技術が市場に進出する段階で国際競争に劣後してしまうことを課題とし、柔軟な研究体制とリスクマネーへのアクセスを持つスタートアップを対象にGX関連技術開発の支援を行うことを示しています。また、スタートアップのGX関連の技術シーズを初期の段階から既存企業の需要と組み合わせ、設備投資への支援や、GXリーグの参画企業と連携した支援を実施し、早期社会実装を促しました。

クリーンテック・スタートアップによる技術開発は初期投資が大きく、長期間かけて行われるという特徴を踏まえると、長期的に複合的な観点で支援できるようになることは、日本発のクリーンテック・スタートアップ育成の第1歩に繋がると考えられます。今後日本から世界に出て活躍する技術を創出するためにも、日本政府によるクリーンテック・スタートアップ支援策の広がりに期待します。

執筆者

KPMGジャパン ガバメント・パブリックセクター
シニアアソシエイト 吉永 由美佳

監修者

KPMGジャパン ガバメント・パブリックセクター
ディレクター 林 哲也

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