Article Posted date
18 March 2024
ハイライト
石油・ガス企業におけるエネルギー・トランジション計画の導入
世界がネット・ゼロの実現に向けて動き出すなか、マーケットリーダー、消費者、ステークホルダー等の多くは、石油・ガスセクターの事業者がこれらの目標を達成するために重要な役割を果たすことを期待しています。一方、近年における再エネの普及拡大にもかかわらず、世界の一次エネルギー消費に占める化石燃料の割合は、2022年時点で82%と、比較的高止まりしています。石油・ガス企業が、エネルギー安全保障、経済性および持続可能性を担保しながら、エネルギー需要に対する安定的な供給を維持するには、どのようなエネルギー・トランジションが必要とされているのでしょうか。
石油・ガス企業のバランス型ポートフォリオにおける事業機会
石油・ガス企業は、CO2排出量を削減し、よりクリーンなエネルギーの未来へ移行するという世界的な取組みにおいて不可欠な存在であり、エネルギー・トランジションは、彼らの積極的な関与なしには実現できません。石油・ガス企業にとって、バランスの取れたポートフォリオを構築することは、よりクリーンなエネルギーへ移行するための総合的な戦略において、極めて重要な役割を果たします。
各国エネルギー政策・規制の有効活用
2015年に、約200ヵ国によって、世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して2℃より充分低く抑えると同時に、1.5℃に抑える努力を追求するという目標を掲げるパリ協定が採択されました。これらの重要な目標を実現するには、温室効果ガス(GHG)排出量を2030年までに半減し、さらに2050年までにほぼゼロにする必要があります。官民双方のリーダーは、このパリ協定での目標を期日どおりに実現するためには、政府による一連の厳格な脱炭素政策・規制に遵守する必要があることを認識しています。
すでに、多くの国や地域において、CO2排出量の削減を後押しする政策・制度が導入されています。例えば、英国の気候変動法には、2050年までに1990年比で排出量を100%削減するという公約が盛り込まれており、欧州のグリーン・ディールでも、同様の排出量削減を加盟国全体で実現するという目標が掲げられています。中国でも、具体的な脱炭素化目標が最新の5ヵ年計画に組み込まれ、サウジアラビアの公共投資基金(PIF)も、国内外の持続可能な投資に焦点を当てた投資ポートフォリオの構築を支援しています。
エネルギー・トランジション目標の実現に向けたステップ
分野・時間軸別エネルギー・トランジションの取組み(例)
短期 |
中期 | 長期 | |
---|---|---|---|
バリューチェーン | ・各生産・製造段階における排出量の定量・可視化 ・バリューチェーン全体における排出集約的なプロセスの特定 |
・スコープ3排出量の削減に向けたサプライヤーや消費者との協力 | ・オフセットとCCUSを通じた残余排出量への対策 |
政策・規制 | ・既存制度を活用したクリーンエネルギーと代替燃料・資源への投資 ・既定基準に沿ったカテゴリー別排出量の開示 |
・堅実な気候変動対策・戦略の導入・策定における他企業や関連団体との連携 | ・長期的な政策展望に基づく移行計画の実行・推進 |
テクノロジー | ・再エネ発電、バイオマス原料の利用、LDAR(漏出検知・修復システム)等、費用対効果および成熟度の高い技術の採用 ・石炭から天然ガスへの転換、CCUSやブルー水素の導入 |
・業界大手企業との技術的提携 ・商用化済みクリーン・テクノロジーの実装・展開 |
・CCUSやグリーン水素等の新興低炭素・低排出テクノロジーの気候変動戦略への組込みと商用化の実現に向けた取組みの加速 |
広範なESG考慮事項 | ・移行計画におけるより広範なESGの観点の組込み | ・移行計画におけるESGに関連する取組みの戦略的導入 | ・従業員や地域社会に対する気候変動によるリスクや影響の緩和を目指したホライズン・スキャニングの実施 |
取組みを加速するポイント | ・よりクリーンな事業への移行に向けた政府による既存インセンティブ施策の活用 | ・持続可能な燃料の開発等、ビジネスモデルの革新に向けたインフラの整備 | ・より長期的な気候変動適応戦略の策定 |
指標・目標 | ・1.5℃シナリオに整合する野心的な中期目標の設定 |
・データの利用可能性の進展に応じた定期的な測定基準の見直し・改定 ・気候変動が事業運営に及ぼす物理的リスクに関するシナリオ分析の実施 |
・ネット・ゼロ目標におけるスコープ1と2を越えた排出削減量の盛込み |
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