UAEの法人税導入に係る通達等を踏まえたポイント・留意事項

月刊「国際税務」2023年12月号に寄稿された記事を紹介します。

UAEの法人税導入に係る通達等を踏まえたポイント・留意事項について解説します。

この記事は、月刊「国際税務」2023年12月号に掲載したものです。

発行元である国際税務研究会の許可を得て、あずさ監査法人がウェブサイトに掲載しているものですので、他への転載・転用はご遠慮ください。

本誌の昨年12月号に掲載した「来年導入予定のアラブ首長国連邦での連邦法人税について」では、それまでに公表された法人税Q&AとPublic Consultation Documentをベースにアラブ首長国連邦(以下、UAE)の連邦法人税について解説しました。その後、連邦法人税法(Federal Decree-Law No.47)及び約30の通達(Ministerial Decision、 Cabinet Decision)が公表されましたので、今回はそれらをベースに連邦法人税法について解説します。

連邦法人税概要

適用時期

法人税法は今年6月1日以降開始税務年度から適用されるため、12月決算では2024年1月1日から、3月決算では2024年4月1日からスタートする税務年度から適用されます。5月〜11月決算の会社にはすでに法人税が適用されています(執筆時点)。

課税対象範囲

課税対象範囲にはUAE国内で設立・登記された法人が挙げられ、これにはフリーゾーン企業も含みます。また、UAE国内で管理・コントロールされている外国法人も居住者に含められ、課税対象です。UAE国内で管理・コントロールされているか否かの判断については、主に取締役会の開催場所がポイントとなります。中東にはUAE以外の国に会社登記しながら、取締役がUAEのドバイに在住してそこから出張ベースでビジネスを行うケースもあります。このようなケースでは、UAEで法人税の課税対象となる可能性があり、注意が必要です。

その他、外国法人であってもUAE国内に恒久的施設(いわゆるPE)があったり、UAE国内を源泉とする所得がある場合も課税対象となります。PEには非居住者がビジネスを固定的な施設で行う、支店や事務所、作業場、工場、6か月超存在する建設プロジェクトなどといったいわゆる支店PE、建設PEが例として挙げられています。また、非居住者の代理人としてUAE国内でビジネスを実施する権利を常々行使しているいわゆる代理人PEも例示されています。これらの課税対象者には税務登録及び税務申告が必須です。

免除者

法人税法において一定の免除者が定められており、これらは課税対象とはなりません。これには政府系企業や政府がコントロールしている企業、すでに首長国レベルの法人税を課せられてきた一定の天然資源ビジネス関連企業、適格公益企業、投資ファンドや年金ファンドなどが含まれます。

適用税率

法人税率は、適格フリーゾーン企業(後述)以外には9%が適用されますが、37万5千ディルハム以下の所得には0%が適用されます。一方、適格フリーゾーン企業には適格所得(後述)には0%、非適格所得には9%の税率が適用されます(非適格所得には37万5千ディルハム以下の所得にも9%が適用されます)。

昨年12月号に掲載した「来年導入予定のアラブ首長国連邦での連邦法人税について」では、「『税源浸食と利益移転』(以下、BEPS)2.0の第二の柱に定められた大規模な国際企業(年間の連結売上高が7億5千万ユーロ以上)については別の税率が適用されるとなります」と解説しましたが、法人税法ではこれが明示されず、0%か9%が適用されることになります。しかし、BEPS2.0第二の柱により各国が最低税率15%を課すGloBEルールを導入すれば、UAEでもこの15%の税率が導入されると見込まれています。

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執筆者

KPMG Lower Gulf Limitedドバイ事務所
パートナー 日本国公認会計士 笠間 智樹

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