国際的な税制改革(BEPS2.0) - 第2の柱 改訂IAS第12号の適用にあたっての留意点

週刊 経営財務(株式会社税務研究会発行)の2023年7月31日号にあずさ監査法人の解説記事が掲載されました。

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この記事は、「週刊 経営財務 No.3615」に掲載したものです。発行元である税務研究会の許可を得て、あずさ監査法人がウェブサイトに掲載しているものですので、他への転載・転用はご遠慮ください。

国際会計基準審議会(IASB)から2023年5月に改訂IAS第12号「法人所得税」(以下「改訂IAS12」という。)が公表された。改訂IAS12は、経済協力開発機構(OECD)/G20「BEPS(税源浸食と利益移転:Base Erosion and Profit Shifting)包摂的枠組み」において議論が進められた第2の柱(グローバルミニマム課税)から生じる繰延税金の会計処理からの一時的な救済措置を企業に与えるものである。

本稿では、第2の柱(グローバルミニマム課税)におけるGloBEルールの概要とともに、GloBEルールへの改訂IAS12の適用にあたっての留意点について解説を行う。なお、本稿は2023年7月5日時点の状況に基づくものであり、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることをあらかじめ申し添える。

1.国際的な税制改革(BEPS2.0) - 第2の柱の概要

(1)BEPS2.0とは

2015年10月のBEPSプロジェクトの最終報告書で結論がでていなかった「経済のデジタル化に伴う課税上の課題」について、2021年10月、OECD/G20「BEPS包摂的枠組み」において、2本の柱による対応策の大枠が国際的に合意された。これがいわゆるBEPS2.0と呼ばれているものである。2本の柱の概要は以下のとおりである。

1.第1の柱
「第1の柱」は、売上高200億ユーロ相当額超、かつ利益率10%超の多国籍企業グループを対象に、利益率10%を超える残余利益の25%に係る課税権を市場国に配分するルールである。

経済のデジタル化を背景に、市場国に支店等の恒久的施設(PE:Permanent Establishment)を置かずにビジネスを行う企業が増加しているが、第1の柱は、これらの企業が市場国において課税されないという問題に対応するものである。

2.第2の柱(グローバルミニマム課税)
「第2の柱」は、大きく分けるとGloBE(Global Anti-Base Erosion)ルールとSTTR(Subject to Tax Rule:租税条約の特典否認ルール)の2つのルールからなる。

GloBEルールは年間総収入金額が7.5億ユーロ相当額以上の多国籍企業グループを対象に、国・地域ごとに最低でも実効税率15%の課税を確保するルールであり、それぞれの国・地域の国内法で導入することになる。STTRは、最低税率(9%)未満で課税されている利子、使用料等の関連者への一定の支払いに対し、最低税率までの差を支払元の国で課税するルールであり、所得の源泉地国で租税条約上の特典を否認することになる。

第2の柱は、各国において低い法人税率や優遇税制によって外国企業を誘致する「法人税引下げ競争」により各国の法人税収基盤が弱体化するという問題への対応だけでなく、税制面において企業間の公平な競争条件を阻害している問題に対応するものである。

(2)GloBEルールの概要

1.構成されるルール
GloBEルールはIIR(Income Inclusion Rule:所得合算ルール)とそれを補完するUTPR(Undertaxed Profits Rule:軽課税所得ルール)から構成される。また、各国の国内法において、これらのルールに基づき他国で上乗せ課税されることを防ぐため、自国で課税する国内トップアップ税という仕組みもある。

(a)IIR(所得合算ルール)
IIRとは軽課税国に所在する子会社等に係る実効税率と最低税率(15%)の差分を最終親会社等の所在する国・地域において上乗せ課税するルールである。

例えば、日本に最終親会社がある多国籍企業グループの中に、実効税率が最低税率(15%)に満たない国・地域の子会社等がある場合、その満たない税率に係る一定の額を、最終親会社等がその最終親会社等の納税地で納税することになる(日本が納税地の場合、各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税・地方法人税として納税することになる。)。

(b)UTPR(軽課税所得ルール)
最終親会社等が軽課税国・地域に所在している場合や最終親会社等の所在地国・地域でIIRが導入されていない場合、IIRでは課税されないこともある。このようにIIRでは十分に課税されない場合に、UTPR導入済みの国・地域に所在する多国籍企業グループ内の会社等に上乗せ課税し、これらの会社等の所在地国・地域で納税する、IIRのバックストップとして設けられたルールがUTPRである。

図表1 国際最低課税額に対する法人税のイメージ

国際的な税制改革(BEPS2.0) - 第2の柱 改訂IAS第12号の適用にあたっての留意点-1

(3)日本のIIRに相当する税制の概要

1.適用閾値の判定
IIRは、判定対象会計年度の直前の4対象会計年度のうち、2以上の対象会計年度において、最終親会社の連結等財務諸表上の総収入金額が7.5億ユーロ相当額以上となる多国籍企業グループ(特定多国籍企業グループ等)に適用される。この総収入金額は、財務会計上の連結等財務諸表の総収入金額(売上金額、収入金額、その他収益の額の合計額)が用いられる。

2.適用対象企業の特定
上記1.の適用閾値を満たした連結等財務諸表の最終親会社、連結される構成会社等(その恒久的施設を含む。)、そして持分法が適用される会社等のうち所有持分が50%以上である共同支配会社等(その恒久的施設を含む。)がGloBEルールの対象となる。重要性又は売却目的であることを理由として、最終親会社の連結等財務諸表に連結されていない会社等も構成会社等としてGloBEルールの対象となる。

3.所在地国別の実効税率の算定
実効税率が最低税率15%に満たない軽課税国に該当するか否かの判定は、構成会社等ごとに判定をするのではなく、同一の所在地国にある構成会社等を合算して判定する。ただし、被少数保有構成会社等及び各種投資会社等は、別々のグループとして判定する。また、無国籍構成会社等は会社等毎に判定し、共同支配会社等は上記の構成会社等と同様に判定するが別グループとして取り扱う。所在地国別実効税率を算定する際の分母(所在地国別グループ純所得の金額)と分子(所在地国別調整後対象租税額)は、同一所在地国にある個社毎に連結等財務諸表の作成のための個別財務諸表における当期純損益と税金費用に一定の調整をした上で合算して算出する。

4.グループ国際最低課税額の計算
グループ国際最低課税額は、上記「3.所在地国別の実効税率の算定」と同様に所在地国別に算定される。グループ国際最低課税額は、超過利益にトップアップ税率(所在地国別実効税率が最低税率15%に満たない場合のその満たない率)を乗じ、自国内国際最低課税額(国内トップアップ税)がある場合はそれを控除して算定する(再計算国別国際最低課税額、未分配所得国際最低課税額がある場合には、別途加算する。)。

自国内国際最低課税額ルール(国内トップアップ税ルール)は、自国が軽課税国となりグループ国際最低課税額相当額が発生した場合に、それを最終親会社等の所在地国・地域ではなく、自国に納税させることができるルールとなる。

第2の柱は「法人税引下げ競争」に歯止めをかけることを目的としていることを考えると、自国内国際最低課税額(国内トップアップ税)の導入でもその目的を達成することができ、IIRやUTPRによって他国で納税されることを防ぐため、今後各国で自国内国際最低課税額ルール(国内トップアップ税ルール)が導入されていくものと考えられる。

(a)超過利益
超過利益は、所在地国別グループ純所得(その所在地国のすべての構成会社等の個別計算所得金額の合計額から個別計算損失金額の合計額を控除した残額)から実体ベースの所得除外額(有形固定資産等の額の一定割合の金額と給与等の一定割合の金額の合計額)を控除して算定する。グループ国際最低課税額の計算において、課税対象を「所在地国別グループ純所得」とするのではなく、実体的な活動から生じる一定の金額を除いた「超過利益」としたのは、もともと第2の柱が「経済のデジタル化」により無形資産に関連する収入に焦点を当てて課税を行うことを目的としていたからと考えられる。

(b)各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税の課税標準(国際最低課税額)の計算
所在地国別に計算されたグループ国際最低課税額(トップアップ税)の合計額は、その所在地国に所在する構成会社等毎に個別計算所得金額の比で按分される(会社等別国際最低課税額)。最終親会社等の課税標準(国際最低課税額)は、各構成会社等に按分された会社等別国際最低課税額に帰属割合を乗じて計算される(共同支配会社等も同様)。

最終親会社等の下に被部分保有親会社等(最終親会社等以外で、グループ会社等以外の者に20%超の所有持分を保有されている構成会社等)が存在し、その所在地国で国際最低課税額等を有する場合は、まず被部分保有親会社等で国際最低課税額等が課される。そして、上記の最終親会社等の課税標準(国際最低課税額)からは、この被部分保有親会社等に課される国際最低課税額等のうち、最終親会社の被部分保有親会社等への所有持分に相当する金額が控除される。

5.特定多国籍企業グループ等報告事項等(GloBE情報申告書)の提供
特定多国籍企業グループ等に属する内国法人は、対象会計年度末から15ヵ月以内(適用初年度は18ヵ月以内)に特定多国籍企業グループ等報告事項等(GloBE情報申告書)を提供しなければならない。

2.改訂IAS12の内容

1.範囲
IAS第12号「法人所得税」(以下「IAS12」という。)は、「法人所得税」の会計処理に適用することとされている。ここで「法人所得税」とは、「課税所得を課税標準として課される国内及び国外のすべての税金をいう」とされている(IAS12.1及び2)。

トップアップ税(日本のIIRに相当する税制における国際最低課税額)は、グループの最終親会社の連結財務諸表では、課税所得に対応する税金といえるため、連結財務諸表上は、IAS12の範囲内であると考えられる。 しかし、例えば報告企業外の企業の利益に対してそのような税金を支払う義務がある場合など、グループの子会社の財務諸表においてトップアップ税が法人所得税であるかどうかは不明確と言える。

この点について、改訂IAS12ではトップアップ税が当然に「法人所得税」に該当するものとしているのではなく、改訂IAS12を適用する前に、企業はトップアップ税が「法人所得税」であるか否かを判断することとされている(改訂IAS12.BC103)。

2.一時的な例外
改訂IAS12では、第2の柱のモデルルールに関する税制から生じる税金(以下「第2の柱の法人所得税」という。)に関連する繰延税金資産及び繰延税金負債を認識又は開示してはならないという、一時的な例外が定められている(改訂IAS12.4A)。この一時的な例外は、財務諸表の比較可能性を高める点、及び改訂IAS12の原則及び要件と矛盾する会計方針を不用意に策定してしまうリスクを排除する点から強制適用とされている。

このような例外が定められたのは、第2の柱のモデルルールを短期間で導入することによって生じる、繰延税金の会計処理に関する懸念事項が利害関係者からIASBに伝えられたという背景がある。

一時的な例外が定められたことにより、日本を初めとする第2の柱のモデルルールに関する税制を導入した国の企業では、当該税制が繰延税金にどのように影響があるのかを評価、分析するといった追加の作業を行うことから免除された。

改訂IAS12は第2の柱の法人所得税に関連する繰延税金資産及び繰延税金負債を認識又は開示してはならないとしているが、そもそも第2の柱のモデルルールに関する税制の適用にあたってどのような一時差異が発生する可能性があるのかについて言及していない。この点について、今後の基準開発の過程で明らかになるものと考えられる。

なお、一時的な例外の対象として「認識及び開示」をしないのは、あくまでも第2の柱の法人所得税に関連する繰延税金に関するものであり、今回追加された開示要求とは異なる。

3.開示
改訂IAS12では、第2の柱の法人所得税に対する企業のエクスポージャー(特に第2の柱のモデルルールに関する税制の発効前)を投資家がよりよく理解するのに役立てるため、追加的な開示を要求している。具体的な開示項目は以下の通りである。

  • 一時的な例外を適用している旨(改訂IAS12.88A)
  • 第2の柱の法人所得税に関連する当期税金費用(収益)を個別に開示(改訂IAS12.88B)
  • (第2の柱のモデルルールに関する税制が制定され又は実質的に制定されているがまだ適用されていない期間)第2の柱の法人所得税に対する企業のエクスポージャーを理解するのに役立つ情報を開示(改訂IAS12.88C)


(a)一時的な例外を適用している旨の開示
改訂IAS12では企業に対し一時的な例外を適用している旨の開示を求めた理由として、以下の点を挙げている(改訂IAS12.BC102)。

(a)第2の柱のモデルルールに関する税制の影響を受けず、例外を適用しない企業もあり、この開示は企業固有の情報を提供することになる。

(b)例外が適用されている期間中、財務諸表の利用者に対して例外を適用していることの透明性を高める。


このように一時的な例外を適用することは強制ではあるものの、一時的な例外を適用していることを開示すること自体が、第2の柱の法人所得税の影響を受ける可能性があることを示唆し、財務諸表利用者にとって意味をもつものと考えられている。したがって、一時的な例外を適用している旨の開示も第2の柱のモデルルールに関する税制の対象となりうるか判断した上で行うことになる。

なお、日本基準では、実務対応報告第44号「グローバル・ミニマム課税に対応する法人税法の改正に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い」(以下「実務対応報告第44号」という。)において、改訂IAS12と同様、グローバル・ミニマム課税制度の適用による税効果会計に対する影響を反映しないこととしているが(実務対応報告第44号第3項)、実務対応報告第44号を適用した旨の注記を求めないこととしている。これは企業がグローバル・ミニマム課税制度の施行日以後その適用が見込まれるか否かの判断を適時にかつ適切に行うことについて懸念があるとの意見が聞かれたことに対応したものである。

(b)第2の柱の法人所得税に関連する当期税金費用の開示
改訂IAS12では、第2の柱の法人所得税に関連する当期税金費用(収益)を個別に開示することとされている。このような情報を開示するのは、財務諸表の利用者が、企業全体の税金費用に対する第2の柱の法人所得税の影響の程度を理解するのに役立つ点が挙げられている(IAS12.BC114)。また、第2の柱の法人所得税は当期税金として認識しなければならないため、開示のための追加コストは限定的であることも理由として挙げられている(改訂IAS12.BC114)。

(c)第2の柱の法人所得税に対するエクスポージャーに関する開示
第2の柱の法人所得税に対するエクスポージャーに関する開示について、公開草案では、過大なコストや労力を伴わないものとするため、IAS12に従って作成した情報を開示するよう提案されていたが、公開草案に対するフィードバックを受けて、最終的には以下の開示目的を定めた上で、当該開示目的を達成するための情報を開示することを要求している(改訂IAS12.88C)。

企業は、財務諸表の利用者が第2の柱の法人所得税に対する企業のエクスポージャーを理解するのに役立つ既知の又は合理的に見積可能な情報を開示しなければならない。


当該エクスポージャーに関する開示は第2の柱の要件全てに適合する必要はなく、範囲の形で開示することも可能とされている(改訂IAS12.88D)。そのため第2の柱のモデルルールに関する税制の全ての要件を反映しなくとも第2の柱の法人所得税に対するエクスポージャーに大きく影響を及ぼす可能性のある項目に絞り、範囲の形で開示することも考えられる。

また情報が既知でも合理的に見積可能でない場合には、企業は代わりにその旨を記述し、企業の第2の柱の法人所得税に対するエクスポージャーの評価の進捗に関する情報を開示しなければならないとされている(IAS12.88D)。

これらを踏まえ、改訂IAS12で例示されている内容は以下のとおりである。

区分 例示

定性的な情報

第2の柱のモデルルールに関する税制によってどのような影響を受けるか、及び第2の柱の法人所得税に対するエクスポージャーが存在する可能性がある主な法域に関する情報

定量的な情報

(i)第2の柱の法人所得税が課される可能性のある構成事業体の利益の割合及び当該利益に適用される平均実効税率。

(ii)第2の柱に関する税制が適用されていたならば、企業の平均実効税率がどのように変化していたかを示す指標。


4.発効日
改訂IAS12における一時的な例外の適用及び一時的な例外を適用した旨の開示については、改訂IAS12号の公表後ただちに適用され、IAS8号「会計方針、会計上の見積りの変更及び誤謬」にしたがって、遡及適用される。

第2の柱の法人所得税に対する企業のエクスポージャーに関する開示及び当期税金費用の個別開示については、2023年1月1日以降に開始する年次報告期間に対して適用される。ただし、2023年12月31日以前に終了する期中財務報告期間について適用することは要求されないこととされている。ここで期中財務報告期間に関する開示が要求されないのは、あくまでも「2023年12月31日以前に終了する期中財務報告期間」とされており、それ以降の期中財務報告期間については言及されていない。

3.会計処理及び開示に関する今後の対応

1.第2の柱の法人所得税に対する企業のエクスポージャーに関する開示への対応
3月決算企業を想定したスケジュールは図表2のとおりである。第2の柱の法人所得税に対するエクスポージャーに関する開示は、2023年1月1日以降に開始する年次報告期間に対して適用されることから、3月決算の場合は2024年3月期末に当該エクスポージャーに関する開示が必要になる。12月決算の場合は、更に早まり2023年12月末から開示が必要となるため、残りの準備期間が1年を切っている点に留意する必要がある。

図表2 3月決算会社スケジュール例

国際的な税制改革(BEPS2.0) - 第2の柱 改訂IAS第12号の適用にあたっての留意点-2

当該エクスポージャーに関する開示は定性的及び定量的な情報を開示することになり、例示によると、定性情報について当該エクスポージャーが存在する可能性がある主な法域に関する情報が挙げられているため、このような情報を開示することが一般的になると想定される。

また、多国籍企業グループによっては所在地国が多岐にわたる可能性があるが、少なくとも企業のエクスポージャーに影響を与える国・地域の情報は事前に把握しておく必要がある。例えば韓国では2022年12月にIIR及びUTPRに相当する税制改正法案が可決されており、これらの税制は2024年1月1日以後開始する対象会計年度から適用するとされているが、2025年以降にずれ込む可能性も考えられる。韓国の税制改正にはUTPRも含むため、UTPRの適用時期如何によって、2023年12月期の当該エクスポージャーに関する開示に大きく影響する可能性がある。

またイギリスではIIRが2023年12月31日以後開始する事業年度から適用されるため、12月決算で、イギリスに中間親会社を持っている日本の最終親会社は、連結財務諸表上、2024年12月期からトップアップ税を認識することも考えられ、韓国と同様に今後の動向に留意が必要である。

第2の柱の法人所得税に対するエクスポージャーに関する開示は報告期間の末日における既知の又は合理的に見積可能な情報を定性的及び定量的に開示することとされている(改訂IAS12.88D)。報告期間の末日における情報であるため、将来における税制の変更の可能性を検討することを要求されないが、その反面、期末時点で制定されている税制については考慮することになる。

また、定量情報については、情報が期末時点で既知でも合理的に見積可能でない場合には、当該エクスポージャーの評価の進捗に関する情報を開示することも考えられるが、翌第1四半期から当期税金を計上するという前提にたつと、2023年期末時点において既知でも合理的に見積可能でない場合に該当するかは慎重に判断する必要があると考えられる。

2.当期税金の見積計上及び開示への対応
トップアップ税がIAS12で定める法人所得税に該当すると判断する場合、トップアップ税は、その算定根拠となる低課税国に所在する企業の所得が生じた期に認識することが想定される。

申告までの期間が長く設定されているのは、トップアップ税の計算が複雑であることが考慮されていることを踏まえると、トップアップ税の見積計上に不確実性が生じる可能性があると考えられる。

そのため、以下の検討も必要になると考えられる。

  • IAS第1号「財務諸表の表示」の「見積りの不確実性の発生要因」(IAS第1号第125項から第133項)
  • IFRIC解釈指針第23号「法人所得税の税務処理に関する不確実性」

執筆者

有限責任 あずさ監査法人
テクニカル・ディレクター 公認会計士
三宮 朋広(さんのみや ともひろ)

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