中国人民元経済圏の拡大等が米国の制裁措置の有効性に与える影響について
本寄稿は、一般財団法人 安全保障貿易情報センター発行の「CISTECジャーナル2023年7月号」の「中国人民元経済圏の拡大等が米国の制裁措置の有効性に与える影響について」を転載しています。
一般財団法人 安全保障貿易情報センター発行の「CISTECジャーナル2023年7月号」の「中国人民元経済圏の拡大等が米国の制裁措置の有効性に与える影響について」を転載しています。
米国は、経済制裁を活用し、国家安全保障上の目的を達成しようとしていますが、その有効性には、米ドルの基軸性が影響していると言われています。しかし、米ドルの決済比率や米ドルの保有比率が低下するなどを通じて、基軸通貨としての米ドルの優位性が低下するようなことがあれば、米国経済制裁の有効性には、マイナスの影響を与える可能性があります。本稿は、中国人民元経済圏の拡大を含め、米ドルの基軸性に影響を与える可能性のある要因について、米国政府の公表資料、制裁に関する先行研究も踏まえつつ、検証、整理したものです。
現在、米ドルの基軸通貨としての優位性が大幅に減少する可能性は小さいものの、中長期的には、その優位性は保証されているわけではなく、いくつかの課題があります。その課題とは、中国人民元経済圏の拡大、デジタル通貨の成長、CBDC に関する実証研究の進展、地政学的緊張などです。米ドルの金融市場の厚みと流動性、そして基軸通貨としての歴史的な役割から、米ドルは当面、世界の金融システムにおいて重要な通貨であり続ける可能性は高く、近い将来に、中国人民元が米ドルの事実上の基軸通貨の地位を大きく脅かす可能性は低く、米ドルの基軸性や、基軸性に基づく米国の制裁措置への影響は、当面は限定的であろうと思われます。
しかし、より中長期的な視点に立てば、人民元経済圏やデジタル人民元の拡大などにより、米ドルの影響力が低下してゆく可能性はないとは言えません。中国人民元経済圏の拡大、デジタル通貨やCBDCの進展、地政学的動向には、引き続き、注視すべきであろうと思われます。
寄稿の全文は、添付のPDFをご覧ください。
執筆者
あずさ監査法人
金融統轄事業部 金融アドバイザリー事業部
エグゼクティブ・アドバイザー 尾崎 寛