データによる企業の意思決定の在り方 三菱商事が産業の枠を超えて既存ビジネスモデルの改革に挑む
産業DX部門をリードする三菱商事株式会社 CDO(兼)産業DX部門長 執行役員の平栗 拓也 氏にお話を伺います。
産業DX部門をリードする三菱商事株式会社 CDO(兼)産業DX部門長 執行役員の平栗 拓也 氏にお話を伺います。
世界中からありとあらゆるものを調達する総合商社、三菱商事は中期経営戦略2024においてDX戦略を成長戦略の1つに掲げ、その推進組織として「産業DX部門」を新設しました。国内外の1,700社におよぶ三菱商事グループの豊かな暗黙知を形式知化して産業の枠を超えて横展開することで事業価値を向上させ、ビジネスの環境そのものを変革しようというわけです。
DX機能を開発・提供したオペレーション・エクセレンス向上の事例から何が見えてきたのか、大量データ時代に企業を深く理解することとはどういうことか、データ活用で意思決定する経営者はどうあるべきか。産業DX部門をリードする三菱商事株式会社 CDO(兼)産業DX部門長 執行役員の平栗 拓也 氏にお話を伺います。
インタビュアー=田中 秀和 KPMG FAS 執行役員パートナー
データ活用で、人手不足をカバーし、人間では解けない問題を解決する
田中:
三菱商事グループは意思決定にデータを活用されているそうですが、どのようなシーンで活用なさっているのでしょうか。
平栗 拓也 氏 三菱商事株式会社 CDO(兼)産業DX 部門長 執行役員 慶應義塾大学理工学部卒業後、三菱商事入社。国際戦略研究所、ブラジル現地法人、経営企画部などを経て、2019年4月、デジタル戦略部長。同年9月からエムシーデジタル代表取締役兼CEOを兼任。 |
平栗:
三菱商事は商社です。商社という業態にはさまざまなビジネスモデルがあり、そのビジネスモデルごとにオペレーションの現場を抱えています。オペレーションの品質やスピードを限りなく高めること、つまりオペレーション・エクセレンスはとても重要であり、それに関してデータを活用しています。
データの活用方法は2つ。1つは、人間の暗黙知をアルゴリズムにより形式知化するというものです。レポートなどで指摘されているとおり、日本の生産性は米国の 3分の1程度に低いと言われています。これは、ホワイトカラーの生産性が非常に低いからです。そして、その原因はあまりにも暗黙知が多いことにあります。職人のようにノウハウが個人のなかに埋もれてしまい、形式知化されていないのです。その人でないとできないという仕事がたくさんあるがために、人手不足にも対応できなくなってしまう。これを解決するには、暗黙知を形式知化することです。しかし、人間はかなり高度な意思決定をそのつど繰り返していますから、 AIでなければ暗黙知の形式知化は難しいとされています。
もう1つは、人知が及ばない問題の解決、人間では解けない問題の見える化です。なぜこういうモデルなのか、なぜこういう仕組みになっているのかがよくわからない。それは、過去の経験を積み重ねた結果そうなった、という暗黙知に近い話だからです。実はこうした問題はたくさんあり、そのなかでオペレーションとかビジネスが動いているケースというのも数多くあります。その理由がわからないものをわかるようにする。それが 2つ目です。
そのために、三菱商事は2019年にエムシーデジタル株式会社を、 2021年に株式会社インダストリー・ワンを設立しました。この 2社では、三菱商事の強みを活かしてデジタルトランスフォーメーション(以下、「 DX」という)を社会実装するために、アルゴリズムを使って暗黙知とされている情報の流れを形式知化することにチャレンジしています(図表 1参照)。
図表1
田中:
具体的にどのようにデータを活用されているのか、データ活用でビジネスモデルを変革したという事例があれば教えてください。
田中 秀和 株式会社 KPMG FAS 執行役員パートナー 早稲田大学理工学部卒、米国Iowa State University 大学院修了。KPMG FAS が提供するディールアドバイザリーサービスのなかで、対象企業の内外のデータを用いた先進的データ分析の実施、分析結果に基づく意思決定や戦略実行を支援している。 |
平栗:
三菱商事グループには、三菱食品という非常に歴史のある食品卸の子会社があります。卸問屋は大量に仕入れたものを小分けして売るというビジネスモデルですが、そういう情報の非対称性に依拠したビジネスモデルというのは、昔ならいざ知らず、この情報化社会ではしだいに廃れる運命にあります。そこで、彼らは 1980年代頃から物流機能を強化し、卸という業態から物流会社のようなビジネスモデルに変革しました。たとえば、正確な時間に正確な量の商品をコンビニエンスストアに届けるには、非常に複雑な物流オペレーションが必要です。弊社傘下のローソンの場合、全国に店舗が約15,000ヵ所、物流センターが約 200ヵ所、取扱商品数が約 1万SKU(Stock Keeping Unit 以下、「 SKU」という)ありますが、この組み合わせで在庫を切らさないように商品管理をしなければなりません。そのために、三菱食品にはベテランの発注担当者が何十人といます。彼らは季節や気温、イベントなどといった外部環境に合わせて需要を予測し、在庫を調整していますが、そのノウハウは暗黙知、つまり属人のものです。そのノウハウをアルゴリズム化し、形式知化しているのです。
我々がこのプロジェクトに取り組んでいる理由は 2つあります。 1つは少子化です。労働人口が減るなかで、人に頼ったオペレーションではもう耐えられません。ベテランもどんどん辞めていきますから、ノウハウの継承は必須です。
もう 1つは食品ロスと機会ロスを最小化することです。小売りの場合、販売の変動に対してきちんと商品を供給するためには、多めに在庫を持たなければなりません。しかも、これを「ブルウィップ効果」といって、在庫は卸、メーカー、原材料と、川上に行くほど積み上がります。これを低減するには、需要の変動を見ながら在庫を最適化する必要があります。特に、日本では食品の消費期限・賞味期限に厳しく、賞味期限の 3分の1を切った食品は小売店に納品しない「3分の1ルール」という商習慣があります。最近ではその商習慣を変えようという議論も出てきましたが、現状ではどうしても食品ロスが発生してしまいます。そこで、 AIを使って需要予測をし、発注を最適化することによって在庫最適化を実現しています。
機械に代替できる仕事は 機械に任せ、人間は人間に しかできない仕事をする
田中:
ビジネスモデルの変革でよく出てくるのは「売上・利益が上がった」、「コストが下がった」という財務の話ですが、今のお話の少子化や食品ロスなどは、財務数字の改善という枠組みではなく、より大きな枠組みである、ビジネスの環境変化を促すものと言っていいと思います。まだチャレンジの途中だということですが、このプロジェクトはどのくらいまで進んでいるのでしょうか。
平栗:
小売業は、基本的に発注を受けたときに欠品があってはいけないビジネスです。そのおおよその目安を欠品率と言いますが、この欠品率を守るのが卸売業やメーカーの制約条件になっています。さきほど人手不足をカバーするために人間の暗黙知をアルゴリズムにすると話しましたが、ここではこの制約条件遵守を機械に代替させています。もちろん、発注担当者のなかにはベテランもいますし、経験が浅い人もいます。ですから、目標はベテランのレベルとし、今のアルゴリズムはそのレベルまで到達できています。
ここに行き着くまでものすごく苦労しました。アルゴリズムのチューニングだけで 1年弱かかっています。一番気をつけたのは、単純に KPIを数字で作らず、ベテランの感覚を再現するようにしたことです。というのも、在庫調整には数字に表れない部分がたくさんあるからです。ベテランだったら「こういうふうに私はコントロールしています」というのがあるのですが、その「こういうふうに」というのは数字ではありません。「こんな感じ」という動き方なのです。チューニングには彼らにも協力してもらいましたが、「これならいける」という感覚を得られるまでに相当かかりました。しかも、これは全体の動きではありません。「商品 Aはこれくらいだったらなんとかなるけれども、商品 Bはここまで在庫を落としてしまうとだめ」といったように、個別の SKUごとに違います。そのこともあって、チューニングはとても大変でした。
田中:
では、ついに目標を達成したとき、そのベテランの発注担当者の反応はいかがでしたでしょうか。「機械に自分と同じ発注ができるのか」と、驚かれたりはしませんでしたか?
平栗:
驚かれたというよりは、「これなら使える」という感じでした。これはどの産業でも一緒だと思うのですが、なり手がいなくなる仕事はこれからたくさん出てきます。ですから、もしそういう仕事を機械で代替できるのなら機械でやってもらい、人間は人間でないとできないような仕事をすべきだと思います。発注業務もこれまでは人間でなければできませんでしたが、これからは違います。機械で代替できるのであれば、他にやるべき仕事にシフトしていくほうがいいのではないかと思っています。
物流の難問とされる「幹線配車 問題」をAIで解き明かす
平栗:
2つ目が、人知が及ばない問題の解決です。これは、ある大手物流会社と配車計画最適化のPoCをやったときの話です。運送業には、全国の物流網に定期便を走らせ、その定期便に複数の会社の荷物をまとめて載せて運ぶ「特別積み合わせ貨物運送事業者」というライセンスがあります。走ることを保証しているので、荷物があってもなくても、必ずトラックは走ります。
その物流会社は設立時は小さな会社でしたが、やがて全国規模に拡大しました。しかし、どうしてそのネットワークができたのか、今では誰も説明できません。その会社が持っているトラックの台数も、走らせているルートが正しいのか正しくないのかも、誰も説明できない。そんな状態になっていたのです。
ですが、企業なので、やはりコストを削減したいわけです。コスト削減には、トラックの台数かもしくは便を削るのが一番ですが、どこをどう削ったらいいのかがわかりません。そこで、この幹線配車問題をAIで解いてみようということで、共同開発することになりました。
幹線配車問題は、簡単に言えば、AIでよく話題になる巡回セールスマン問題を直列に複数組み合わせたものです。N台のトラックで、Nヵ所で荷物を積み込み、Nヵ所で積み替えて、Nヵ所に配るということで、その組み合わせ数は243京の4乗以上になります。
田中:
膨大な組み合わせですね。
平栗:
そうです。これはスーパーコンピュータでも解けない。今まで、世界でもこれが解けた人はいないと言われていました。これをアルゴリズム化して、しかも、使い物にするために1時間くらいで計算結果を出さなければいけません。このアルゴリズムを組めると、どの路線、どのトラックを削れるかがシミュレーションでき、ボトムラインを上げることができます。これはAIでなければできない話だと思います。
今の話は物流ネットワークの問題でしたが、同じような問題は他にもたくさんあります。社会システムは人間の暗黙知の組み合わせでできていて、非常に複雑です。それを見える化するということは、とても価値のあることだと思います。
田中:
このデータ社会ではさまざまな情報を取得できますが、「見える化」はなかなか実現できません。そこにメスを入れるというのは、今後さらに発展があるように感じます。
産業DXを、 産業・企業に 関係なく横展開する
田中:
これまでさまざまなプロジェクトに携われてきた経験から、DXをはじめとするデータを用いた意思決定を企業で成功させるための要因は何だと思われますか。
平栗:
私どもがDXの取組みを始めたのは3年ほど前からですが、その頃は個別の課題を、AIを使ったりシステム化したりして解決していました。そうやっていくうちに、アルゴリズムにすると物事が抽象化されることに気づきました。そうすると、産業や企業に関係なく横展開できるようになります。
たとえば、さきほどお話した在庫調整のアルゴリズムは食品業界用に開発したものですが、在庫管理であれば当然、他の産業でも利用できます。幹線配車問題も、物流の最適化ということで、どのような事業でも使えるわけです。三菱商事は産業別に事業グループを形成していますが、産業にとらわれないものもあることがわかったというわけです。
そこで、これまで開発してきたものを再利用することにしました。プラットフォームを作ってライブラリ化し、データセットとアルゴリズムを分けて管理できるようにしようと思っていて、今はプラットフォームの初期バージョンができたところです。私はこれを「産業DXプラットフォーム」と呼んでいるのですが、これが完成するとアルゴリズムやAIを作る生産性が飛躍的に上がります。今までのように1件1件要件定義する必要がなくなるからです(図表2参照)。
図表2
田中:
アルゴリズムによって暗黙知を形式知化したものを、もう一度抽象化し、横展開するということですね。これまで経験、勘、度胸で意思決定してきたところでデータを活用していくことになりますが、ここに至るまでにどのような困難がありましたか。
平栗:
データを使うことの困難は、事前に成果を約束できないことです。とにかくデータを見て分析してみないと、どのくらいの成果が出るかはわからない。設備投資にどのくらいかかるのかわからないけれども、アジャイルで始めなければならない。このような方法は、事業計画を立て、投資計画を立て、リソース計画を立てるという企業文化にまったく馴染みません。これが一番悩ましいところですね。
田中:
確かに、私も「最終的にどれくらいのベネフィットがあるんだ」とか、「スケジュールはどうなってるんだ」とか、よくお客様に聞かれます。
平栗:
スケジュールも立てられないですよね。
田中:
そうなのです。「まずデータを見ながらアプローチをディスカッションしましょう」という依頼から開始し、その時点では何がどのくらい改善されるかは明確にお伝え出来ないわけです。そうすると、たとえ身近なプロジェクトでもなかなかGOと言ってもらえません。また、自然災害などの突発的な事象によってデータによる意思決定が外れてしまうと、「やはりデータは役に立たない」といった否定的意見が出たりします。
平栗:
今の話は、おそらく2つの問題に分かれます。まず、現場の意識です。当然ですが、最初から信用はしてもらえません。この壁を突破するのはとても大変ですが、これは相手の信頼を勝ち得る以外に方法はありません。コンサルテーション能力で乗り越えるしかない。きちんと会話をして、その人のためになるようなペインポイントをこちらが提示できるかどうかです。
そのために、我々の組織はアルゴリズムを作るチーム、コンサルティングをやるチーム、ビジネスを考えるチーム、この3つのチームを作って、三位一体でやっています。なぜなら、コンサルティングというのは慣れている人でないと難しいからです。いくらアルゴリズムができる人がいても、ビジネスが上手な人がいても、人を説得して前向きなモチベーションを引き出すのは難しい。それは、それに長けた人でなければできません。
もう1つの、「突発的なことが起きたら、データ活用では対応できないのではないか」というのは、確かにあります。たとえば、食品流通で悩ましいのは、セールやイベントで商品が急に売れてしまうといったことが起きることです。これを予測することはなかなかできません。ですから、アルゴリズムではこうした異常値は基本的に除去しています。それは、機械で判断すべきことではないからです。
何が言いたいのかというと、機械でやることと人手がやることをしっかり分けて、オーバーコミットしてはいけないということです。そこは事前に、正直にわかりやすく説明する必要があります。
田中:
オーバーコミットすると、必要以上の期待をお客様に抱かせてしまうことになります。
平栗:
そうです。AIというと何でもできると思われがちですが、そうではありません。開発の現場では、今、「期待値コントロール」という言葉が浸透してきました。どういう期待値コントロールでいくか、オーバーコミットしないように、常にプロジェクトメンバーで共有するようにしています。
大量にデータがある時代において、 「企業を深く理解する」とは どういうことなのか
田中:
私たちは企業の意思決定のサポート業務としてデータ分析をします。たとえばM&Aならばその会社を買収すべきか、買収後にはどのくらい伸びるのか、対象企業を深く理解するために分析しているのですが、そのとき考えることがあります。「企業を深く理解する」とはどういうことなのだろう、と。
平栗:
月並みかもしれませんが、デューデリジェンスをする際に重要なのは、静的なデータではなく動的なデータをどれだけ取り込めるかだと思います。ただ、これは、今はまだ難しいと思います。たとえば財務諸表は、人間が作った会計ルールに基づいて処理された結果のアウトプットですから、作成過程でものすごい量の情報が削ぎ落とされてしまっています。ある意味、恣意的に作られたデータとも言えるでしょう。ですから、それをいくら見ても、見えないもののほうが多いと思うのです。そこで、動的データでいろいろな角度からいろいろな暗黙知を導き出すようなことができると、その企業の実態が見えるし、価値もわかる。それができるといいなと思います。
弊社も連結経営ですが、実態としては財務諸表を連結しているだけですから、それを見ても事業投資先の詳細な実態まではわかりません。本来なら、フロントにあるトランザクションデータをすべて集め、それをさまざまな角度でAIで分析して、各企業の健全性や成長性を判断しながらポートフォリオを管理するべきなのでしょうが、残念ながらそれはできていません。それは、会計というルールがあって、連結決算は会計上連結するという制度ができあがっているからです。
田中:
データをトランザクションレベルで見ることができるようになると、動的データを立体的に見ることができるようになり、企業に対する理解も深まるような気がします。ただ、そこまでになるのには、組織や人の意識、行動の変革が必要ですから、かなり難しいように思えます。
平栗:
少し説明が難しいのですが、企業の活動を、自然を見るのと同じように見る。あるがままの姿で観察して、そこからデータを取ってきて学び、AIがそれに意味づけをして、出てきたファクトやファインディングを意思決定に使う。そういう活動が求められているのだと思います。これからは、そういうデータの振る舞いそのものを分析するようなことができる企業が伸びそうな気がします。
田中:
本当の中心に置いていないのでしょうね、人材戦略を。
産業DXで、他の企業も含めて社会全体を良くする
田中:
先ほど、人がやることと機械がやることを分けて考えるという話がありましたが、必ずしもすべての意思決定をデータでできるわけではないと思います。データを用いた意思決定をするにあたり、経営者はどのような意識を持つべきでしょうか。
平栗:
最終的には人間が決めることなので、第六感みたいなものは必ずあります。さきほどの食品卸のベテラン発注担当者の話に似ていますが、優れた経営者というのはやはりそういった第六感が働くのだと思います。
ですから、経営者が意思決定をするときには、その前に「データドリブンで判断したらこうなる」、「でも、自分はこう考える」といった練習をしたらいいのではないでしょうか。そして、ギャップがあれば「なぜ」と考える。「なぜ」を考えられることが、経営者にとって大事です。データを信じきるのもダメだし、見ないものダメ。そこを自分のリファレンスとして、データから上がってくる示唆やインプリケーションを直視できることが重要です。
また、そういう経営者がこれから出てこないと、これだけデータが爆発している時代に、データと関わらずに企業の意思決定をするというのはあまりにも無謀です。自分でデータを触りながらも自分の感覚がある。データを自分で触って感触を得られるようになるべきだと思います。
田中:
最近ではビジネスのなかで社会課題の解決を目指す取組みも多くみられます。今後、どのような社会課題を解決するために、データが活用されていくと思いますか。展望があるようでしたら、お聞かせください。
平栗:
三菱商事の強みを言い表す言葉に「産業を俯瞰する」という言葉があります。これは、三菱商事がほぼすべての産業に接地しており、しかもバリューチェーンの川上から川下までオペレーションしていることから来た言葉で、我々の活動が社会をより良くするためのものであることを示しています。あらゆる産業でデータを活用して効率を上げる、もしくは良いサービスを提供する。それが結果的に社会課題の解決につながるということです。言い方を変えると、ビジネスモデルを通じて、そのビジネスモデルが接している社会の課題をしっかり解決していくということが、我々の目指すあり方です。
一般的には、社会課題ありきでそれを解決するビジネスモデルを考えるのでしょうが、私はそれではビジネスにならないと思っています。株主もいればお客様もいて、お客様が作られる社会があるわけで、ビジネスモデルは前提にあるべきだと思うからです。ビジネスモデルを通じて社会を良くするのであり、そのビジネスモデルを良くするのがデータだと考えています。
だからこそ、我々は「三菱商事の DX」ではなく、「産業 DX」と言っています。今、作っているプラットフォームやモデルをオープンにして、三菱商事のビジネスノウハウを使っていただくことで、他の企業も含めて社会全体が良くなっていくのが理想です。
田中:
収益を生み出す強いビジネスモデルを構築し、収益と同時に生み出されるデータを意思決定に用いることで社会課題が解決されていくからこそ、成功されているということですね。本日はありがとうございました。