本サーベイでは「パワートレインの未来」、「デジタル消費者」、「脆弱なサプライチェーン」、「新たなテクノロジーと新規参入者」という、自動車業界を揺るがす4つの領域に関するエグゼクティブの見解について分析し、また、日本で実施した消費者アンケート結果との比較を取り入れ、多角的に将来展望を検証しています。

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グローバル展望

自動車業界のエグゼクティブは、長期的で収益性を伴う成長見通しについて、2021年よりも楽観的な見方をしています。今後5年間の利益の向上を確信している回答者の割合は、2021年には53%だったのが83%まで増えています。

一方、マクロ経済が逆風に直面する可能性を踏まえて、当面の業績についてはより慎重な見方を示すようになっています。回答者の76%は、インフレと高金利が2023年の事業に与える悪影響を懸念しています。

「懸念していない」と「懸念している」の差異を地域別にみると、中国は18%と懸念度合いが相対的に低い一方、北米・欧州およびその他のアジア地域では懸念傾向が非常に高くなっています。

パワートレインの未来

EV市場の各国/地域での予測値は下降しています。昨年調査でみられた、回答の幅についても縮小傾向にあることから、より現実的な見解が示されていると考えられます。2035年電動化100%(含むHEV)には更なるICE車からの乗り換え促進策が必要とされそうです。

EVコスト見直しでは、回答者の70%は、政府の補助金がなくても2030年までにICE車と同程度になると見ています。

BEVの充電許容時間は、充電技術の実際の能力がより明確になってきています。エグゼクティブが想定する、消費者が許容できる充電待ち時間(80%充電)は、2021年の時点よりも長くなっています。

自動車業界のエグゼクティブは、Teslaが2030年におけるバッテリー駆動車の市場リーダーになると予測しています。これは2021年と同様の結果ですが、2位との差はかなり縮まっています。

デジタル消費者

78%のエグゼクティブが、2030年までに新車購入の大半はデジタル上で完結すると見ており、71%の日本の回答者も同様の見方をしています。

自動車のサブスクリプションサービスの導入が新車だけでなく、中古車にも拡大しています。しかし、サブスクリプションサービスを使いたいと回答している日本の消費者は37%であり、心的ハードルはまだまだ高いようです。所有から利用へ、また購入者の世代交代により、サブスクリプションサービスを使いたい割合が増えていくことが予想されます。

シェアリングやMaaSを利用したいと答えた人は38%、利用したくないと答えた人が62%となりました。日本におけるカーシェアリング台数および会員の増加が報告されている中、利用意向には昨年から変化が表れていません。年代別では20代以下が最も利用意向が高くなっています。

脆弱なサプライチェーン

日本のエグゼクティブは、グローバルと比較すると、市場/セグメントの選択(撤退)、安全在庫の確保、内製化の推進において、より高い意向の一方、フィナンシャルヘッジや、直接購買については、グローバルよりも低い意向回答となっています。

関税、貿易ルール、規制が、以前にも増して複雑になっていることが、部品調達が困難になっている背景にあります(EUでのICE規制・CO2削減目標、米国のインフレ抑制法など)。世界的な自動車メーカーは、これらのルールを注意深く確認し方向性を決めなければなりません。

新たなテクノロジーと新規参入者

2021年から2022年にかけて変化した最も注目すべきセンチメントのひとつは、今後数年のうちに事業の非戦略的部分を売却する可能性がきわめて高いとした回答数が、およそ2倍に増加したことです。

新興EVメーカーが多数市場に参入し、量産体制の整備に多額の資金を必要としているなか、大きな成長機会として浮上しているのが自動車の委託製造です。76%の回答者が、自動車メーカーは第三者に製造を委託することで成功できると考えています。

電動垂直離着陸機として知られる空飛ぶ車への関心は依然として高まっていますが、エグゼクティブは、それが広く利用可能になる時期については、予測を後退させています。10人中およそ7人のエグゼクティブが、eVTOLは2030年代頃に普及すると見ています。

まとめ

今回の調査から、KPMGは想定すべき4つの事項を考察しました。

想定外に備える

広範囲のシナリオに対し、問うべき戦略的アジェンダはいくつもあります。リーダーはすべての想定を検証し、長年信じてきたことに疑問を投げかけ、このような思考が報われる文化を育てなければなりません。

単独ではできない

成功のためには、企業はソフトウェア開発やSaaS(サービスとしてのソフトウェア)から人工知能/ディープラーニングのアルゴリズム、顧客分析、大量の新しいデータセットまで、自社の強みの領域外のスキルを開発する必要があります。提携、合弁事業、買収によって獲得する必要のあるものもあります。

顧客が大事

成功は、パーソナライゼーション、効率、信頼、特に提供されたデータ管理に関する信頼に基づき、長年にわたる円滑なカスタマーエクスペリエンスを創造できるかどうかにかかってくると考えられます。

スピードが重要

自動車業界は急速に進化しており、競争相手よりも迅速に適切な判断を下す企業が勝者になると考えられます。

<付録>日本における消費者調査結果

上記のグローバルサーベイに加え、2022年11月に日本国内在住の18歳から64歳までの消費者(自動車保有者、非保有者総数)にアンケート調査を実施し、6,687名の回答を得られました。下記のアンケート項目について分析し考察をします。

<日本消費者アンケートの内容>

  • 電動化(BEV化)に対する見解
  • 消費行動のデジタル化に対する見解
  • SDGsを意識した消費
  • まとめ

英語コンテンツ(原文)