「国際的な税制改革-第2の柱モデルルール(IAS第12号の改訂)」公表
国際会計基準審議会(以下、IASB)は、2023年5月23日に、「国際的な税制改革-第2の柱モデルルール(IAS第12号の改訂)」を公表しました。
国際会計基準審議会(以下、IASB)は、「国際的な税制改革-第2の柱モデルルール(IAS第12号の改訂)」を公表しました。
概要
IASBは、2023年5月23日に、「国際的な税制改革-第2の柱モデルルール(IAS第12号の改訂)」(以下、改訂IAS第12号)を公表しました。
改訂IAS第12号は、2023年1月9日に公表された公開草案「国際的な税制改革-第2の柱モデルルール(IAS第12号の改訂案)」における提案を一部修正および補足した上で最終確定されました。
改訂IAS第12号は、経済協力開発機構(OECD)で検討されてきた、経済のデジタル化に伴う課税上の課題への対応(BEPS2.0)のうち、第2の柱(多国籍企業に対して最低税率15%まで上乗せ課税するグローバル・ミニマム課税の導入によって、各国間の税の引き下げ競争に歯止めをかけることを目的とする仕組み)モデルルールを採用して法制化された税制により生じる法人所得税(税率が最低税率15%を下回っている不足分の上乗せ課税。適格国内最低トップアップ税※を含む。以下、第2の柱法人所得税)に関連する繰延税金に関する認識要求および開示要求の適用を、一時的に免除するものです。加えて、改訂IAS第12号では、影響を受ける企業に対し第2の柱法人所得税に関する特定の情報を開示することを要求しています。
※第2の柱モデルルールと同様のルールを用いて、利益が発生する国・地域がそれぞれの利益に課税する税制
内容
I.例外規定
一時的な例外規定(強制)が設けられ、第2の柱法人所得税(適格国内最低トップアップ税を含む)に関連する繰延税金資産および繰延税金負債の認識および開示は不要とされました。
II.開示
次の新たな開示が要求されています。
1.例外規定を適用している旨の注記
企業によっては第2の柱に関する税制による影響を受けず、当該例外規定を適用しないことから、本注記は企業固有の情報を提供するものとされています。
2.第2の柱法人所得税に関連する当期税金費用(収益)を個別に開示
3.(第2の柱に関する税制が制定または実質的に制定されているが施行されていない期間)財務諸表利用者が当該税制から生じる第2の柱法人所得税に対する企業のエクスポージャーを理解するのに役立つ、既に入手した情報あるいは合理的な見積情報を開示
上記の開示については、財務諸表利用者が第2の柱法人所得税に対する企業のエクスポージャーを理解するのに役立つ情報の提供という開示目的が明確にされていますが、具体的に開示すべき項目や開示情報作成の基礎は特定されていません。しかし、この開示目的を達成するために、次の点に留意する必要があります。
・開示する情報は報告期間の末日時点のものであり、将来起こりうる取引やその他の事象に関する情報の開示は要求されない(例えば、将来利益の予測、将来期間に実施が予想される緩和措置の反映、あるいは将来起こりうる税制変更を考慮することは要求されない)
・定量的情報および定性的情報の双方が必要となる
・開示される情報は、第2の柱に関する税制の全ての要求事項を反映することまでは求められず、想定される範囲の形式で開示することも可能である
また、「既に入手した情報あるいは合理的な見積情報」に関して、情報を把握できず、かつ、合理的に見積ることができない場合には、代わりに、その旨およびエクスポージャー評価の進捗状況に関する情報を開示しなければなりません。
例示
a.企業が第2の柱に関する税制によってどのような影響を受けるか、第2の柱法人所得税に対するエクスポージャーが存在する可能性のある主な法域に関する情報などの定性的情報
b.次のような定量的情報
i.第2の柱法人所得税が課される可能性がある利益の割合はどの程度か、また、それらの利益に適用される平均実効税率
ii.当該税制が施行された場合の平均実効税率の変化度合
III.適用時期
適用時期は次のとおりです。
1.上記IおよびII.1は、改訂IAS第12号公表時から即適用、かつ、遡及適用
その結果、第2の柱に関する税制が制定または実質的に制定された日から適用されます。当該日が改訂IAS第12号公表前であっても、この税制の影響を受ける場合には、例外規定が適用され、かつ、例外規定を適用している旨の注記が要求されます。
2.上記II.2およびII.3は、2023年1月1日以降に開始する年次報告期間から適用
2023年12月31日以前に終了する期中財務報告への適用は要求されません。
執筆者
有限責任 あずさ監査法人
会計プラクティス部
シニアマネジャー 鈴木 和仁