2022年度秋季予算案(Autumn Statement)についての要点

英国政府は、2022年11月17日に2022年度秋季予算案を公表しました。今回の発表で、増税と歳出削減で財政不足に対応するという事前通告がされていましたが、今後5年間の課税標準額の凍結と現行の歳出制限を維持することでインフレを抑制し、生活への影響を緩和することで厳しい財政再建を達成するとしています。

英国政府は、2022年11月17日に2022年度秋季予算案(Autumn Statement)を公表しました。

今回の発表では、増税と歳出削減で財政不足に対応するという事前通告がなされていましたが、今後5年間の課税標準額の凍結と現行の歳出制限を維持することでインフレを抑制し、生活への影響を緩和することで厳しい財政再建を達成するとしています。

2022年秋季予算案の主な論点

法人税関連

  • 2022年10月17日のハント財務相の声明のとおり、年間利益が250,000ポンド以上の企業の法人税率は、2023年4月1日より25%に引き上げられる。
  • 迂回利益税の25%から31%への引き上げ、銀行業に適用されるサーチャージ(追加税率)の8%から3%への引き下げも実施される。
  • Annual Investment Allowance(年間投資償却制度)の限度額は、恒久的に100万ポンドに据え置かれる。
  • 2023年4月より、英国で事業を行う特定多国籍企業グループの移転価格文書(マスターファイルおよび英国ローカルファイル)の作成・保存が法制化される。
  • 特別償却制度(Super-deduction)の規定改定はなく、それ以上の言及はなかったため、当初の予定どおり2023年3月31日で適用が終了になると考えられる。
  • 2023年4月より、大企業向けの試験研究開発費税制(RDEC)の控除率が13%から20%へ引き上げられる。中小企業向けの追加控除は130%から86%へ引き下げられ、控除率は14.5%から10%へ引き下げられる。
  • すべての企業を対象とした簡易的な試験研究開発費税制について協議される予定であり、また、データクラウドコンピューティングを対象範囲に加える等の試験研究開発費税制の見直しも、予定通り行われる。


個人所得税および社会保険料関連

  • 基礎税率、高税率、追加税率は、それぞれ20%、40%、45%で、2023/24年まで据え置かれる。
  • 高税率への閾値は2028年4月6日まで50,270ポンドに据え置かれるが、追加税率への閾値は2023年4月6日より150,000ポンドから125,140ポンドに引き下げられる。基礎控除額は2028年4月6日まで12,570ポンドに据え置かれる。
  • 配当所得の免税額は2,000ポンドから1,000ポンド(2023年4月6日以降)および500ポンド(2024年4月6日以降)に引き下げられる。
  • 国民保険料は2023/24年は以前の発表のとおり増額はなく、13.8%とされる。また、従業者および雇用者の閾値は2023/24年も維持され、2028年4月6日までは現行水準が維持される見込みである。


生活賃金および最低賃金

  • 2023年4月1日以降、以下のとおり変更される。
    • 生活賃金(23歳以上):時給10.42ポンドへ増額(以前は時給9.50ポンド)
    • 最低賃金(21-22歳):時給10.18ポンドへ増額
    • 最低賃金(18-20歳):時給7.49ポンドへ増額
    • 最低賃金(16-17歳):時給5.28ポンドへ増額
    • 最低賃金(アプレンティス):時給5.28ポンドへ増額


超過利潤課税(Windfall taxes)

  • 石油・ガス企業の利益に課される超過利潤課税の税率は2023年1月1日より25%から35%に引き上げられ、2028年3月まで据え置かれる予定。
  • 発電会社に対し、新規かつ一時的な電力事業者賦課金が導入され、2023年1月1日から2028年3月31日の期間、例外的発電収入(Exceptional Generation Receipts)に対して45%の税率で課税される。


付加価値税および間接税

  • VAT登録の閾値(85,000ポンド)は2026年まで据え置かれる。
  • 2025年4月より、電気自動車についてもガソリン車やディーゼル車と同様に課税が行われる。
  • 2年間で、100以上の品目について輸入関税が撤廃される。


2022年度秋季予算案(Autumn Statement)についてのその他の要点、留意事項については、Autumn Statement 2022(英語)よりご覧ください。

お問合せ