人材は業務遂行上の最優先事項
CEOにとって、3年間の成長目標達成のための業務遂行上の最優先事項は、必要な人材を獲得・維持するための従業員価値提案(EVP)となっています。
今後3年間の成長目標を達成するために、最も優先すべき運用上の課題は次のうちどれですか
このようななか、企業のESGアプローチは、人材を惹きつけ、維持するための差別化要因として見なされるようになってきています。ESGの透明性と報告に対する大きな需要があると述べたグローバルのCEOのうち、26%が従業員と新入社員からの需要が最も大きいと指摘しています。また、ESGの期待に応えられない場合のマイナス面として、資金調達で生じうる問題(25%)に次いで、採用の問題(22%)も挙げています。
日本企業においては、3年間の成長目標達成のための業務上の最優先事項としてEVPを選択した割合は33%と、グローバル全体の25%と比較しても高くなっています。また、昨今のESG開示の透明性に対する要求や圧力は、機関投資家のみならず従業員からも受けていると考える日本企業のCEOが2021年調査の3%から、2022年調査では31%に増えています。さらに、ESGの透明性と報告については、従業員と新入社員からの需要が最も大きいとの回答が31%で最も多く、ESGの期待に応えられない場合のマイナス面については、採用の問題を挙げるCEOが最も多く(30%)、資金調達で生じうる問題(25%)を超えていました。これらにより、EVPに大きな影響を与える自社のESGの取組みが、優秀な人材獲得・維持に密接に影響することを強く意識していると思われます。
企業のパーパスの実現には、日々の業務がいかに組織のパーパスに繋がるかを理解し、意義ある取組みに貢献しているという認識を共有する従業員の存在が不可欠です。CEOはパーパスを自分事とし、熱意をもって戦略を推し進めるとともに、従業員を動機づける必要があります。
短期的な雇用凍結につながる不況
経済面で苦しい状況が続いているなか、グローバル全体のCEOの39%がすでに雇用凍結を実施しており、さらに46%が今後6カ月間に従業員の縮小を検討していると回答しています。しかしながら、欧米を中心に自主退職が大量に発生する「大退職時代」も沈静化の兆しがあります。それは、今後3年間の展望において、社員数の減少を予測しているのはわずか9%という前向きな結果にも表れています。
日本企業においても、36%がすでに雇用凍結を実施していますが、今後6カ月間に従業員の縮小を検討しているのは37%とグローバル全体よりも低い傾向が出ています。さらに3年間の展望では、社員数の減少を予測しているのはわずか2%とグローバル全体の傾向よりも明るい見通しとなっています。
雇用の凍結の実施
従業員の縮小の検討
新たな試み
グローバル全体では、ハイブリッド/リモートワークは、過去2年間において、特に、コラボレーションとイノベーション(49%)、ワークプレイステクノロジーへの投資(48%)、採用(44%)、生産性(44%)にプラスの影響があったと回答しています。しかしながら、65%は今後3年間でオフィスでの勤務を主とすることを検討しています。
日本企業のCEOにおいては、グローバル全体では特に影響が大きいとされた先述の4つの項目において、いずれもグローバルの傾向ほどプラスの影響を感じていませんでした(コラボレーションとイノベーション(46%)、ワークプレイステクノロジーへの投資(39%)、採用(34%)、生産性(42%))。このことも、今後3年間でオフィスでの勤務を主とすることを検討している割合が72%とグローバル全体に比べ高くなっていることに影響している可能性があります。
過去2年間で、ハイブリッド/リモート勤務が組織に与えた影響
KPMG Insight Plus 専門家コラム
「人的資本」に対する取組みや議論、狭い範囲においてはその報告への関心が、急速に高まっています。しかし、組織にとって大切なリソースが「ヒト・モノ・カネ」であるという認識は、けっして新しいものではありません。 では、なぜいま、「人的資本」なる言葉があらゆるところで表出するようになったのでしょうか。「なぜ」を理解しないまま、今後、要請が高まってくる人的資本に関わる報告への対応に注力しても、「人を活かせる組織」による価値の創出に結びつけることは難しいのではないかと思います。人的資本に関する議論は、なにも目新しいものではない点を、まず、十分に認識すべきでしょう。
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