ファミリービジネスでの事業変革は何が独特なのか?

「事業変革」は、企業におけるテクノロジーの導入に伴う、プロセスやシステムの変化と捉えられがちですが、ファミリービジネスでは事業変革とデジタル変革は同義ではありません。

ファミリービジネスにおける変革の課題として挙げられるのは、顧客・サプライヤー・従業員とそのファミリーが居住し事業展開する地域社会といった、すべてのステークホルダーの重要な問題や機会です。ファミリービジネスには「変化」に対する異なる考え方と、独特の「変革」に対する思いがあり、その点が他のタイプの企業と異なります。

デジタルの先にあるもの

テクノロジーとデジタル変革は変化の実現手段ですが、事業全般の変革がゴールだとするならそれだけでは十分ではありません。

ファミリービジネスのリーダーたちの事業変革の対象は、ファミリーと事業の存在意義、カルチャー、人類への影響、環境と社会の影響、ガバナンス、説明責任まで含みます。リーダーたちは、テクノロジーやオペレーティングシステムはもちろんのこと、それ以上にファミリービジネスと創業ファミリーにとっての重要な事柄についてテーマを設定し、それらの戦略が事業やステークホルダーにどう影響するか、どこを変えて改善すべきかについて熟考し、理解しようと努めています。

継続的な変革と説明責任を担うカルチャーを創造する

新型コロナウイルス感染症の影響で事業課題が大きく変化し複雑で不明瞭になるなか、ファミリービジネスのリーダーたちは、事業を守るために短期的な戦術変更を迫られましたが、将来に向けた明確なフォーカスは揺らぎませんでした。

事業とファミリーのつながりは、継続的な変革のカルチャーを維持することが重要です。事業はファミリーの財産であり、現在および将来世代の一定のライフスタイルをもたらす必要な手段です。

事業変革に責任を持って取り組むのは誰か?

一般の企業では、役割や責任は狭く定義され、責任の所在は細かく決められています。ファミリービジネスでは役割や責任が流動的で、ファミリーのメンバーが複数の役割を果たすこともあれば、必要な場面や必要なタイミングで本来の責任の範囲外の支援をすることもあります。

一般的な法人企業よりもファミリービジネスは柔軟であり、新しいスキルや専門知識をもたらす次世代のファミリーメンバーが加わることで変化し、進化しています。

デジタル変革の流れはバックオフィスからフロントオフィスへ、そして再びバックオフィスへと向かう

パンデミックの初期、多くのファミリービジネスはハイブリッドやリモートで業務を継続できるよう、バックオフィス業務のデジタル変革に重点を置きました。その後、変化の波はフロントオフィスにも及びましたが、すでにオンライン展開していた競合企業が市場シェアを獲得していました。競争の脅威に駆り立てられたファミリービジネスは、フロントエンド戦略のデジタル化を事業変革の一側面として捉え、デジタル変革が再び脚光を浴びました。パンデミック回復期とされる現在、バックオフィス業務が改めて優先事項になっています。

変革のカルチャーを守る

ファミリービジネスのリーダーやKPMGプライベートエンタープライズの専門家が、価値を創造し、継続的な事業変革を行うために、多くの知見を提供しています。

  • 誰に責任があるか?
  • 継続的な変革にはリスクがつきもの
  • 継続的に変革を続けていると、「変革疲れ」が起きる可能性もある
  • 持続可能性のあるオーナーシップやマネジメントモデルを確立するには、事業に対するファミリーメンバーの意欲を保つことが重要
  • ファミリービジネスの財務パフォーマンスと独立した取締役の関与は相関していることが多い
  • 時として、社内の役割と責任を正式に決め、業績の結果を誰に問うかを定める必要がある
  • 規模の大きいファミリービジネスでは、業績目標の設定と測定のための仕組みを設けている

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