世界の石油供給の不確実な状況

2022年、石油の供給逼迫と供給混乱を背景に、石油価格は過去最高値まで高騰しましたが、一方で今年下半期から状況は一転し、供給過剰に陥る可能性もあります。ボラティリティの高まりは、継続すると予想されますが、当面、石油市場はタイトなレンジが続くでしょう。

緊張が高まるロシアとの関係が欧州のガス供給および価格に及ぼす影響

ロシアによるウクライナ侵攻を受け、地政学情勢は緊迫化し、欧州を中心にガス供給と価格の不安定要因となっています。現在の懸念事項は、ウクライナ情勢とそれに伴う経済制裁により、大量のガス供給が遮断され、価格が高止まりし、結果的にEUの経済成長が損なわれることです。

世界的な脱炭素化への取組みが石油・ガス業界に影響を及ぼす可能性

世界のエネルギー転換の動きは活発であるものの、そのアプローチやスピードは国ごとに異なり、エネルギー転換とエネルギー安全保障は、分裂した(Disruptive)概念ではなく、同義である、と捉えている国もあります。昨今の欧州情勢に見られるように、政治は、エネルギー転換に影響をもたらします。

政府は、長期的なエネルギーの目標と国民の短期的なニーズのバランスを取らなければならないため、国としてのエネルギー転換への道筋は厳しいものになるでしょう。

「アクティビスト」による石油・ガス業界への影響

アクティビストは、石油・ガス業界への圧力を強めており、石油・ガス事業者のオペレーションに係る「社会的ライセンス」を疑問視しています。これは、彼らが環境汚染と気候変動による損害の責任が石油・ガス業界にあると考えているためです。

石油・ガス業界は、環境汚染や気候変動の問題に取り組んできましたが、昨今の地球温暖化の脅威に対する社会的な関心の高まりが、この問題をますます深刻なものにしています。

最善の結果を望み、最悪の事態に備える

石油・ガス企業は、組織としての優位性を保ちながら最悪の事態に備えるために、7つのポイントについて検討を進める必要があります。

  1. ESG(環境、社会、ガバナンス)に関する計画の整備
  2. 組織の危機管理マニュアルの定期的な更新確認
  3. 組織のコモディティリスク管理方針の見直し
  4. 政府の政策・規制変更の影響理解
  5. すべてのステークホルダーとの関係構築への努力継続と、業界・業界横断的な協力態勢の検討・構築
  6. 既存のサプライチェーン体制のレジリエンスの向上余地の検討
  7. 組織のサイバーセキュリティ方針・内容の見直し

不確実性を乗り切るための最終提言

脱炭素化や気候変動対策は今後も推進されるでしょうし、漸進的なテクノロジー頼りでは、エネルギー転換に関する成果を出すことは難しいでしょう。石油・ガス業界は転換を余儀なくされており、不可避な事態に備える対策を早急に講じる必要があります。

人材不足という差し迫るリスク

近年、石油・ガス業界は、労働力の高齢化、新規業界参入者や若年層不足、テクノロジー業界との人材獲得競争の激化を背景に、人材不足に直面しており、これは主に以下の理由に起因しています。

石油・ガス業界に対するマイナスイメージ

石油・ガス業界は、(一概には言えないものの)メディアによってネガティブに捉えられることが多く、その結果優秀な人材が当該業界を敬遠する傾向にあります。

「適正な」技能を持つ人材の欠如

エネルギー業界の経営幹部は、脱炭素化戦略を成功に導く、科学・エンジニアリング分野の学位を有する従業員の不足を指摘しており、多くの企業が、気候変動分野における従業者のスキルギャップへの対応を検討しているとされています。

職場の新たなダイナミクス

石油・ガス業界は、柔軟性を持ち、近代的な職場環境に適応する必要があります。より柔軟な働き方への取組みは、エネルギー企業が、次世代の価値をより適切に評価する一助となるでしょう。また、労働力の多様化に伴い、さまざまなバックグラウンドを持つ人々との働き方について理解を深める必要があります。

英語コンテンツ(原文)

Drilling Down magazine

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