重要なポイント

中古車市場がどのように均衡状態に戻るかは、新車の需要、販売、価格設定に大きな影響を与えます。

  • 今回の中古車価格の急上昇には先例がない。
  • 中古車相場は値崩れするだろう。
  • 新車市場への影響は数年間続く可能性がある。
  • 自動車メーカーにとっては何を意味するのか。
  • ディーラーにとっては何を意味するのか。
  • 貸し手にとっては何を意味するのか。
  • 複数の収束シナリオが想定される。

中古車価格はなぜ急騰したのか

パンデミックの影響により米国の自動車工場が減産した結果、通常であれば、新車を購入する消費者や企業が中古車市場に押し寄せたため、米国の中古車価格は40%以上上昇しました。需給が正常化すれば、中古車価格が平常に戻ることが期待できますが、それがどのように起こるのか、価格がどこまで、どれだけ速く変化するのかは、新車市場と自動車業界全体に大きな影響を与える可能性があります。

かつてない供給ショック

新型コロナウイルス感染拡大の第1波で、自動車の販売と生産はほぼ停止しました。2020年夏に生産を再開しましたが、同年秋には世界的な半導体不足の影響が広がり始めました。また、経済の復活に伴い、サプライチェーンが重大なボトルネックとなったことと相まって、自動車メーカーにも人材不足が生じました。中古車市場在庫は、2020年初めから2021年夏までに17%減少しました。

予想外の需要急増

半導体不足の影響が現れると同時に、自動車需要が伸び始めました。2021年初めにワクチン接種が広がり、政府の追加経済対策による給付が届いたことで、消費者のマインドが復活したためです。一方、2020年半ばに、大手レンタカー会社は財政難に陥ったため約35万台の車両を手放していましたが、経済の回復に伴って、車両の確保に躍起になり、これが需要のかさ上げにつながりました。

結果

かつてない需要増と供給減の結果、中古車の平均販売価格は急上昇しました。Cox Automotiveのデータによると、中古車価格は2021年4月の約2万1,000ドルから、2021年9月には2万6,600ドル以上に急騰しました。

狂騒はいつ終わるのか

新車価格は、現在のインフレ傾向から2022年中は上昇すると推定されますが、いずれ中古車価格と新車価格は従来どおりの関係に回帰するでしょう。したがって、中古車価格は20~30%下落すると予想されます。中古車価格がどれぐらいの期間で正常化するのか、ダメージがどこまで広がるのかは、今後数年間の新車市場の展開にかかっています。

供給の軌道

供給の回復は、半導体を入手できるかどうかにかかっていますが、少なくとも2022年半ばまで生産能力は限定されるでしょう。

需要の軌道

エコノミストは米国経済について引き続き前向きに捉えています。ライトビークルの年間需要は少なくとも1,650~1,700万台になると推測されますが、経済的な逆風が需要を抑制する可能性もあります。

均衡を取り戻すまでのシナリオ

4つの想定シナリオでは、いずれも需要と供給全体のパターンや、外部要因のタイミングと影響が鍵を握っています。不確定要素としてインフレがあげられます。いずれのシナリオでも、市場は新車の供給状況の転換を事前に予測し、新車在庫が充実して中古車需要が通常に戻る前に中古車の価格を変更し始めると予想されます。

示唆・ヒント

中古車価格の上昇が落ち着くまでに、自動車業界の各プレーヤーには、準備を整え、この機会を利用して戦略と運営モデルを修正するための時間があります。

自動車メーカー

自動車メーカーが現在の異常な需給不均衡の収束に備えるなかで、より安定したニューノーマルをつくるチャンスがあります。

ディーラー

中古車販売は予想外の利益率をもたらしていますが、時期が過ぎれば、パンデミック以前の厳しい利益率に戻ります。需給状況が正常化したら、eコマース時代の人材について再考し、サービスと部品の利益を最大化する方法を模索することが喫緊の課題となるでしょう。

サプライヤー

Tier 1、Tier 2の部品サプライヤーにとっては、ジャストインタイムから「ジャストインケース」(万一に備える)在庫モデルに向け、自動車メーカーを動かす機会となっています。

貸し手

中古車価格の急速な下落は、貸し手、現在の自動車の買い手、レンタカー会社、シンジケートローンパッケージの投資家にリスクをもたらします。また、スタグフレーションによる行き詰まりなどのシナリオでは損失リスクが高まるおそれがあります。

結論

現在はここ数十年で最も自動車業界の変動が激しい時期であり、この先の展開と業界の対応は、将来の市場とビジネスモデルに重大な影響を与えます。今日計画し、準備する企業が明日の勝者となるでしょう。

 

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