タイ:タイの移転価格税制アップデート - 移転価格開示フォームの改正

2021年1月1日以降開始事業年度につき、タイにおいても国別報告書が導入されました。

タイ - 移転価格開示フォームの改正についてお知らせいたします。

国別報告書(Country by Country Report 「"CbCR"」)導入に伴い、移転価格開示フォーム(Transfer Pricing Disclosure Form 「"TPDF"」)にて開示すべき内容の追加、並びにTPDF作成にあたってのQ&Aがタイ歳入局より発表されました。

1.TPDF追加項目

収益の額が2億バーツ以上の在タイ企業は、これまで税務申告書と同時にTPDFを提出しているものと思いますが、今回、TPDFの追加項目としてCbCRの提出義務者である最終親会社を記載することが求められることになりました。具体的には、連結総収入の額が1,000億円以上の日系企業グループに属する在タイ企業は、TPDFの追加項目の欄で、“はい”と回答したうえで、最終親会社を明記する必要があります。

CbCRとは、移転価格税制上、準備すべき文書の一つで、多国籍企業が事業活動を行っている各税務管轄地における総収入額、税引前利益、法人税額等を国別に集計して報告する文書を指します。連結総収入の額が1,000億円以上の日系企業については、通常、日本の最終親会社がCbCRの提出義務者となり、日本の国税庁にCbCRを提出することで、日本の国税庁からタイ歳入局に当該CbCRが開示されること(予定)になります。

今回のTPDFにおける追加項目の趣旨は、タイ歳入局が多国籍企業のCbCR提出義務者を把握することにあり、以下が記載すべき内容の日本語参考訳及び記載例(赤字)となります。

図表1

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2.タイ最入局が公表したQ&Aの紹介(関連者判定の事例紹介)

今回公表されたTPDF作成にかかるQ&Aのなかで、これまで法令上不明瞭であった関連者の定義について、事例とともにいくつか紹介されております。その中で、注意が必要な事例がありましたのでご紹介いたします。

図表2
  • A社は、C社の資本を15%、D社の資本を70%直接保有している。
  • B社は、C社の資本を40%、D社の資本を20%直接保有している。
  • A社とB社の間に、資本関係や取引関係はない。
  • C社とD社は直接取引を行っている。

タイ歳入局の見解

同一の複数株主に保有されている法人で、当該複数株主の保有割合の合計が50%以上となる場合、被保有法人は関連者に該当するとしています。なお、複数株主間における資本関係や取引関係の有無は問わず、複数株主が個人の場合にも同様の考え方が適用されます。

上記の例によれば、C社とD社は、それぞれA社とB社という同一の複数株主に資本を直接保有されており、A社とB社の保有割合を合わせると50%以上となるため(C社:A社15%+B社40%=55%、D社:A社70%+B社20%=90%)、C社とD社は関連者に該当するとされております。

まとめ

日本では、すでに2016年4月1日以降開始事業年度を対象にCbCRが導入されており、多くの日系企業は日本本社側で対応済みであると思われます。したがって、今回のTPDFの追加項目についても、日本本社の名前を記載することで足りる内容となっております。

今回のニューズレターの中でご留意いただきたい点は、関連者の考え方となります。上述の事例の場合、これまでC社とD社は直接または間接の資本関係が50%以上とならないため関連者に該当しないと考えられ、TPDFの開示対象会社としていなかったと思います。複数株主(上記A社及びB社)間における資本関係・取引関係の有無を基準としていない点が日本における関連者の定義と大きく異なります。したがって、日本本社側で関連者として認識していない法人がタイの移転価格税制上の観点から関連者となりうることも起きえます。

今回の取り扱いに違和感はあるものの、現時点で公表されている事実関係を踏まえ実務対応をしていく必要があると考えられます。また、実際にタイ歳入局よりTPDFの提出や修正を求められている会社が出てきており、今後のTPDF作成にあたっては、関連者のリストを見直すとともに、公表されているQ&Aと照らし合わせて関連者の漏れがないかご確認いただくことが重要になると思われます。