メキシコ:メキシコ版UBO(実質的支配者)文書化制度の導入

本ニューズレターでは、2022年度税制改正のうち、「実質的支配者(Beneficiario Controlador)」の文書化制度の導入に関する概要について解説します。

本ニューズレターでは、2022年度税制改正のうち、「実質的支配者」の文書化制度の導入に関する概要について解説します。

本ニューズレターでは、2022年度税制改正のうち、「実質的支配者(Beneficiario Controlador)」の文書化制度の導入に関する概要について解説します。

現在、各国政府とその税務当局は、各国において活動を行う企業を実質的に支配しているのは誰なのか、すなわち「実質的支配者(Ultimate Beneficial Owner(UBO))」を企業側に明確にさせる取組みを導入しています。支配者の特定とその文書化を企業側に法的に要求、制度化することにより、企業のビジネス活動や実態の透明性を向上させ、資金洗浄行為等による法人の悪用を防止することを目的としています。

今回のメキシコにおける改正は、その国際的な潮流に沿った内容となっており、今後すべてのメキシコ法人等は「実質的支配者」を自ら特定し、その身元を証明する資料の準備や文書化を行うことが要求されるため、その影響は広範に及び、この改正対応は各企業においてコンプライアンス遵守のための重要な論点となります。

なお、本ニューズレターに関連してKPMGが発行しているスペイン語版のニューズレター(Flash)についても、必要に応じてご参照ください。

1.実質的支配者に関する文書化

今回の改正により、2022年1月1日の時点から、(1)法人、(2)メキシコの信託の委託者、受託者および受益者、(3)その他の法的組織(例えば、SPC等の投資ビークル)の当事者は、会計記録の一部として、「実質的支配者(Beneficiario Controlador、 Ultimate Beneficial Owner)」の身元を裏付ける網羅的かつ最新の情報を、把握、収集および文書化して保管すること、また変更がある際にはその変更を文書にて適宜更新していくことが義務付けられることとなります。

同様に、法人や信託の設立またはその他の法的組織の形成に関連する契約の起草や実行に関与する公証人やその他の人物も、その設立業務に携わることから、設立する法人等の実質的支配者を特定することが別途義務付けられます。

文書化する情報には、実質的支配者に関する以下の項目が含まれます。

  • 氏名
  • 国籍
  • 税務上の居住地
  • 納税者番号
  • 連絡先情報(住所、電子メール、電話番号)

税務当局から、実質的支配者に関する情報の提示を求められた場合には、15営業日以内(正当な理由があれば当該期間の延長申請が可能)に当該情報を提示する義務があります。

当該義務を遵守しなかった場合には、税務当局に対し、実質的支配者1人あたり500,000MXN(約20,000米ドル)から、最大で2,000,000MXN(約100,000米ドル)の範囲でペナルティが課されます。

2.実質的支配者の定義

実質的支配者は、個人、または、個人のグループであり、以下のように定義されます。

  • 法人、信託、その他の法的組織への出資、融資、その他の取引関係を通して直接的または間接的に経済的便益を享受する者、資産やサービスの使用、享受、または処分する権利を行使できる者
  • 法人、信託、その他の法的組織を直接的または間接的に支配している者

また、以下のケースにおいて、個人は、株式等の所有や契約その他の法的活動を通して、当該法人等を支配しているとみなされます。

  • 直接的または間接的に、株主総会における議決権の過半数を有する、または、取締役の過半数を選任・解任することができる者
  • 直接的または間接的に、15%超の議決権を有している者
  • 法人、信託、その他の法的組織の経営方針、事業戦略、組織運営等の意思決定に関わる者

上記の基準を用いても実質的支配者を特定できない場合には、法人においては、取締役会を持たない会社の場合は一人取締役に就く者、取締役会設置会社の場合はその取締役全員が実質的支配者とみなされます。また、信託においては、委託者、受託者、受益者やその他の実質的に信託の法的権利を有する個人が実質的支配者とみなされます。

本ニューズレターは以下よりPDFにてダウンロードいただけます。

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