グローバルの展望
世界経済が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による下降局面からの回復途上にあるため、自動車業界のエグゼクティブの大半は、企業の命運も向上すると考えています。回答者の53%は今後5年間で自動車業界がより高い収益性を上げ成長すると確信しており、成長見通しについてややまたは強く懸念しているとの回答は38%でした。
楽観的な見通しには国により格差があります。米国のエグゼクティブはより高い収益性を伴った成長を確信しています(66%)が、ヨーロッパはさほどでもなく(ドイツ49%)、アジアのセンチメントはその中間(中国55%)です。
エグゼクティブの約半数は、次の大規模な破壊的変革を乗り切る力があると回答しています。将来の見通しに強い確信を持つ一方で、回答者の半数以上が主要資材の供給に不安を抱えており、特に米国では労働力不足に懸念を示しています。
パワートレインの未来
エグゼクティブは、EVの市場シェアが2030年までに急拡大すると予想していますが、どの程度の市場シェアを獲得するかについての見解は一致していません。
回答者の73%は、2030年までにEVのコストは内燃機関エンジン車(ICE)と同等になると予想しています。
回答者の77%は政府の補助金なしでもEVは普及すると考えていますが、91%は補助金自体を支持しています。
EVにとってインフラは大きな課題です。外出先で80%を充電するのに待てる時間は? との問いに回答者の77%は30分以下と答えています。そのためDC急速充電スタンドが必要となるものの設置コストも嵩み、また30分で80%充電できるほど高速ではないのが現状です。
デジタル消費者 - 消費行動のデジタル化
自動車販売
エグゼクティブは、自動車の購入方法に大きな変化が起こると予想しています。回答者の78%は2030年までにオンラインで自動車が購入されるようになり、さらに回答者の半数は2030年までに新車の60%以上が自動車メーカーから直接販売されるだろうと考えています。
新しいビジネスモデル
エグゼクティブは、自動車の所有形態が大きく変化すると予想しています。回答者の84%が、2030年までに自動車のサブスクリプションが販売やリースと競合すると考えており、自動車メーカーに新たなビジネスチャンスが訪れると予想しています。また、回答者の約半数が、サブスクリプションを成功させるのは自動車メーカーだとしています。
車両データ
自動車は大量のデータを生成すると予想されており、自動車メーカーはそれらを収益化できる可能性があります。回答者の43%が、自動車会社はドライバーと車両のデータを保険会社に販売するだろうと答えています。
新たなテクノロジーと新規参入者
エグゼクティブの大半が、大手テクノロジー企業(Google、Apple、Amazon、Huawei)が自動車市場に参入するだろうと予想しています。また、回答者の61%が今後10年間に潤沢な資本を持つ新規参入者が影響力を及ぼすだろうと回答しています。
新規参入の自動車メーカーのなかには、サードパーティを使って自動車を製造する企業も現れており、回答者の82%は彼らが委託製造に成功するだろうと考えています。また、先進的な生産は自動車メーカーにとって重要な能力であり、先進的で高いスキルを持つ人材採用の重要性を強調する結果となっています。
脆弱なサプライチェーン
エグゼクティブは、半導体、鉄鋼、レアアースなどの資材価格や調達、人材の確保とそのコストなどといったサプライチェーンに影響を及ぼすさまざまな問題を懸念しています。
エグゼクティブの55%は、労働力不足をとても、または非常に懸念しています。特に米国ではこの懸念が強く、回答者の70%以上を占めています。
まとめ
今回の調査から、エグゼクティブは大きな変革を予測しています。次の10年を既存の能力だけで乗り切るには十分とは言えず、相応の覚悟が必要となるでしょう。検討すべきは以下の4つです。
- 想定外に備える
- 単独ではできない
- 顧客が大事
- スピードが重要
<付録>日本における消費者調査について
上記のグローバルサーベイに加え、2022年1月に日本国内在住の自動車保有者(18歳~64歳)にアンケート調査を実施し、5,260名の回答を得られました。下記のアンケート項目について分析し考察をします。
<日本消費者アンケートの内容>
- 電動化(BEV化)に対する見解
- 自動運転車の実用化に対する見解
- コネクテッド・シェアリングに対する見解
- その他(オンライン販売・サブスクリプション)に対する見解