ラオス:税制改正
2021年12月21日にラオス人民民主共和国主席から改正税法(No.231/PC)が公布されました。本改正はVAT税率の軽減(10%→7%)など、主に一般消費者や零細・中小事業者の救済を目的とした改正となっており、2022年1月1日より施行されます。主な改正内容は以下の通りです。
ラオスの税制改正について解説いたします。
Article Posted date
19 January 2022
1.付加価値税(Value Added Tax (“VAT”) )
a.VATの税率(変更)
以下の取引にかかるVATの税率が10%から7%に軽減
- ラオス国内での物品の販売、物品の輸入およびサービスの提供
- ラオス国内での鉱物の販売および輸入
- ラオス国内の一般消費者および事業者への電気の供給
b.VAT申告・納付期限(変更)
ラオス国内での物品の販売およびサービスの提供にかかる月次VATの申告・納付期限が翌月20日までに延長(改正前は、翌月15日まで)
c.VATの非課税項目の追加(以下の項目が追加)
- 関連法令により定める無害または即毒性のない農薬の生産に使用される原料
- ラオス国内に供給するための電気の輸入
- ラオスの電力会社へのラオス国内の電気の供給
- 海外または経済特区への鉱物の輸出
- 海外または経済特区への電気の輸出
d.仕入税額控除できない仕入VATの追加(以下の項目が追加)
- 鉱物および電気の購入にかかる仕入VAT(ただし、法人税の計算上は損金算入可)
- 2021年までに仕入税額控除ができなかった10%の税率の仕入VATの繰越残高(ただし、法人税の計算上は損金算入可)
e.還付申請が認められないVATの追加(以下の項目が追加)
- 2021年の最後の3ヵ月において仕入税額控除できなかった10%の税率の仕入VATの繰越残高(ただし、法人税の計算上は損金算入可)
f.税務当局の指導/指摘方法(新規)
以下の場合には納税者に対して書面で警告がなされることになった。
- VAT申告書に納税者番号の記載が漏れている場合
- VAT申告書に記載される電話番号、会社住所等の変更について税務当局への通知が漏れている場合
- 会計関連資料の提出漏れまたは不正確・不完全な資料や情報の提出があった場合
- 税務担当官や税務当局への非協力や妨害行為があった場合
2.法人税(Profit Tax)
a.零細事業者/小規模事業者/中規模事業者に適用される軽減税率(新規)
事業者 | 税率 |
法人登録され、任意でVAT登録された零細事業者(Micro enterprise) |
0.1% |
新たに法人登録され、VAT登録された小規模事業者(Small enterprise) | 3% (3年間に限る) |
新たに法人登録され、VAT登録された中規模事業者(Medium enterprise) | 5%(3年間に限る) |
(ご参考:零細事業者/小規模事業者/中規模事業者の定義)
事業内容 | 基準 | 零細事業 Micro enterprise |
小規模事業 |
中規模事業 Medium enterprise |
製造業 | 年間平均従業員数(人) | 1~5 | 6~50 | 51~99 |
総資産(KIP) | <100,000,000 | <100,000,000 | <400,000,000 | |
年間売上高(KIP) | <400,000,000 | <2,000,000,000 | <4,000,000,000 | |
販売業 | 年間平均従業員数(人) | 1~5 | 6~50 | 51~99 |
総資産(KIP) | <150,000,000 | <100,000,000 | <4,000,000,000 | |
年間売上高(KIP) | <400,000,000 | <3,000,000,000 | <6,00,000,000 | |
サービス業 | 年間平均従業員数(人) | 1~5 | 6~50 | 51~99 |
総資産(KIP) | <200,000,000 | <150,000,000 | <6,000,000,000 | |
年間売上高(KIP) | <400,000,000 | <1,500,000,000 | <4,000,000,000 |
b.損金算入が認められない費用の追加(以下の項目が追加)
- 有効なインボイスまたは補足資料があるが、月次のVAT申告に含まれていない費用
- 市場価格と比較して不相当に高額な費用
- 別法令により電力事業および鉱業向けに損金算入が認められている費用
3.物品税(Excise Tax)
a.特定の物品に係る物品税率の改正(主な物品に係る改正の要約)
物品名 | 税率 | |
改正前 | 改正後 | |
ガソリン(ハイオク) | 35% | 40% |
ガソリン(レギュラー) | 30% | 41% |
ディーゼル | 20% | 21% |
バイク | 20%~100% | 20%~110% |
自動車 | 3%~90% | 3%~102% |
リキュール・アルコール飲料 | 60%~70% | 62%~80% |
ビール | 50% | 20%~60% |
タバコ | 35%~60% | 42%~57% |
b.特定のサービスに係る物品税率の改正(主なサービスに係る改正の要約)
サービス名 | 税率 | |
改正前 | 改正後 | |
インターネット | 3% | 2020年:2% 2023年以降:0% |
携帯電話サービス、デジタルテレビ、ケーブルテレビ | 5% | 5% |
娯楽(ナイトクラブ、ディスコ、カラオケ) | 35% | 40% |
ゴルフ | 20% | 25% |
美容サロン | 10% | 13% |
KPMGのコメント
今回の税制改正のポイントは、VAT税率の引き下げ(10%→7%)や零細・小規模・中小事業者に対する法人税率の軽減などの優遇措置が取られており、新型コロナウイルス感染症による経済停滞の影響を大きく受けている一般消費者および中小事業者の救済を目的とした改正と読み取れます。