「eスポーツ市場拡大の利点」第2回。eスポーツの登場により、ゲーム産業とは直接関係のなかった企業にも大きなビジネスチャンスが訪れています。eスポーツ市場拡大に伴い、成長の加速が期待される「直接産業」と「周辺産業」について解説します。
本連載は、日刊工業新聞(2021年4月~7月)に連載された記事の転載となります。以下の文章は原則連載時のままとし、場合によって若干の補足を加えて掲載しています。
eスポーツの登場によりゲーム産業で大きなパラダイムシフトが起きている。
これまでは、顧客がゲームを購入してプレーするようなゲームパブリッシャーとの1対1のシンプルなエコシステム(生態系)だった。だが、eスポーツは興行を中心に産業が広がっているため、ユーチューバーなどによるストリーミング(逐次再生)、イベントの実施、練習施設の利用、プロ選手を始めとしたさまざまなプレーヤーなどでエコシステムを形成している。
これは他の産業にも言えることだが、ゲーム開発やゲーム機器以外にもニーズが発生したことで異業種からの参入ハードルが下がり、もともとゲーム産業とは関わりのなかった企業にも大きなビジネスチャンスが訪れている。
業界団体の日本eスポーツ連合(JeSU)によると、eスポーツ産業のエコシステムは、eスポーツの「直接産業」と、その他の「周辺産業」の大きく2つに分けられる。
直接産業は、大会・チーム運営などに伴うスポンサー・広告、放送・配信権、グッズ・チケット、ゲームライセンスに関わるビジネスである。
これに対して周辺産業は、前述したストリーミングやイベント・練習施設のほか、選手・ゲーム開発者の育成、ゲーミングパソコンなどの関連機器販売、宿泊施設、通信環境整備といったeスポーツに関わる、さまざまな周辺ビジネスを指す。
たとえば、海外では自動車業界が積極的にeスポーツへ参入しており、周辺産業に多様な関わり方をしており、また国内でも専門の事業部を設立し、若年層へのアプローチや会社の認知度向上を目指しているケースも見られる。既存事業の商品を自社eスポーツ選手への報酬とすることによってマーケティング効果などの相乗効果を狙っていることがうかがえる。
今後も市場の拡大に伴い、直接産業だけでなく周辺産業も多種多様な広がりを見せていくことが期待される。身近な企業も気づけばeスポーツに参入しているかもしれない。
執筆者
KPMGコンサルティング
シニアコンサルタント Greene Cody
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日刊工業新聞 2021年4月30日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日刊工業新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。