関税法における帳簿書類の電子保存に関する最新情報

Trade and Customs Newsletter - 令和3年の関税法改正により、関税法における帳簿書類の電子保存の取扱いについてポイントを整理しています。

Trade and Customs Newsletter - 令和3年の関税法改正により、関税法における帳簿書類の電子保存の取扱いについてポイントを整理しています。

令和3年の関税法改正により、関税法における帳簿書類の電子保存の取扱いに大きな見直しが行われました。実務的な取扱いを示した関税法基本通達の改正内容が先日公開されたことを受け、関税における帳簿書類の電子保存に係る改正の影響を概説します。

関税関係帳簿書類の電子保存に係る改正の影響

関税法において輸出入を行う企業に保存が求められている帳簿書類(以下、「関税関係帳簿書類」)は、原則的な保存方法である紙保存に代えて電子的に保存を行うことが認められています。現行法上、関税関係帳簿書類の電子保存には厳格な要件が設けられており、かつ電子保存を行う輸出入を行う企業は事前に当局の承認を得る必要があります。しかし、令和3年関税法改正により、関税関係帳簿書類の電子保存について大幅な見直しが行われ、電子保存の要件が大幅に緩和されました。つまり、関税関係帳簿書類の電子保存を行うハードルが大きく下がった一方で、電子保存にあたっては企業の自主的な取組みに委ねられる点が大きな変更と言えます。

  • 改正による主な変更点
    • 事前承認制度の廃止
      関税関係帳簿書類の電子保存を行おうとする企業にとって大きなハードルとなっていた事前承認制度が廃止され、一定の要件を満たせば特別な手続きなく帳簿書類の電子保存が可能となりました。
    • スキャナ保存
      関税関係書類のスキャナ保存の要件であったタイムスタンプ付与が必須要件ではなくなり、また、ダブルチェック体制や一定期間の紙原本保管など、運用面で大きな負荷を強いていた適正事務処理要件が廃止されました。
    • 優良な保存を行う
      より厳格な方法によって関税関係帳簿(輸入関税関係帳簿および特例輸入関税関係帳簿)の電子保存を行う輸入者は、当該帳簿に記載された事項にかかる申告漏れに関して課される過少申告加算税が5%軽減されるベネフィットを享受できる措置が新たに設けられました。
    • 隠蔽または仮装があった場合の重加算税の加重措置
      関税関係帳簿のスキャナ保存を行う輸入者について、その電磁定記録に記録された事項に関し、隠蔽し、または仮装された事実があった場合には、その事実に関し生じた申告漏れ等に課される重加算税が10%加重される措置が整備されました。

  • 改正後の関税関係帳簿書類に係る対応のポイント
    • 国税における帳簿書類の電子保存との関係
      法人税や所得税など国税において保存が求められている帳簿書類の電子保存は電子帳簿保存法(以下、「電帳法」)によって定められていますが、関税における帳簿書類の電子保存を行う場合においては、国税におけるそれらの取扱いにも注意が必要です。特に、書類に関しては、インボイスなど同一の書類が国税と関税両方の保存義務対象となっているものも多くあります。両法において保存義務対象となる書類について電子保存を行い紙原本の保存を取りやめようとする場合、電帳法における保存要件と関税法における保存要件の両方を確認する必要がある点にご注意ください。
    • 関税関係帳簿整備の検討
      輸入者の多くで、書類または輸出入許可書に帳簿へ記載すべき事項をすべて記載されていることから、当該書類または輸出入許可書(以下「帳簿代用書類」という)を保存することにより、帳簿への記載を省略しているケースが多いかと思います。しかし、帳簿代用書類として輸入許可書を保存している場合には、当該帳簿代用書類は、前述した優良な保存を行う輸入電子帳簿の過少申告加算税5%減の対象となる帳簿に該当しないため、当該過少申告加算税の軽減措置は適用されません。そのため、会計システムや業務システム等で輸入電子帳簿を新たに備え付けることで、過少申告加算税軽減措置を受けることも可能になる場合があるため、そのような観点からも電子帳簿の整備をご検討ください。

電子取引情報の保存に係る改正の影響

輸出入を行う企業は、貨物の取引情報の授受を電磁的にやり取りした場合、その取引情報データを保存することが関税法上義務付けられています。今回の改正により、それらの取引情報データの保存についてタイムスタンプの付与期限や検索要件などの保存要件が緩和され、データで保存する場合の保存方法の選択肢が増えました。

一方、国税においても電帳法により電磁的にやり取りした取引情報のデータ保存が義務付けられており、令和3年税制改正により関税と同じように保存要件が緩和されています。ただし、国税では取引情報データを紙に出力して保存する措置が廃止され、令和4年1月1日以後に行う電子取引の取引情報についてはデータ保存のみが認められることとなります。関税においては引き続き出力紙での保存が認められていますが、書類と同様に、関税法において保存義務対象となる電子取引の中には、国税においても保存義務対象となるものも多くあると思われますので、それら両法において保存が求められる電子取引については、両法の保存要件を考慮のうえ取扱い方法を検討する必要がある点にご注意ください。

なお、関税法において電子取引情報をデータで保存する場合、スキャナ保存同様、重加算税の加重措置が整備された点にも併せてご留意ください。

 

Trade & Customs Newsletter No.24

 

執筆者

KPMG税理士法人
関税・間接税サービス
パートナー 神津 隆幸

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