UAEにおける外資規制の改正の影響について

2021年6月3日に配信しました中東ニューズレターを掲載いたします。

2021年6月3日に配信しました中東ニューズレターを掲載いたします。

UAEは最近、投資に優しい地域としての評判を高めるため、いくつかの画期的な改正を行いました。これらの措置の1つは、UAE商事会社法(CCL)、すなわち2015年連邦法第2号(従前のCCL)の大幅な改正を含み、2020年連邦法第26号(修正CCL)が2020年9月に公布されました。

具体的な修正内容

  • 2020年9月27日に発行された修正CCLは、従前のCCLの第10条で要求されていたUAE本土企業におけるUAEの最低出資比率(例:51%)を廃止しました。これは、本土UAE企業(既存および新規)が、2021年6月1日から、各首長国の関係当局から特定の承認を得ることを条件に、100%の外国人保有を認められることを意味します。
  • 改正CCLは、2018年連邦法第19号、すなわち外国直接投資(FDI)法を廃止しました。
  • 修正CCLの下では、特定の事業活動を行う企業に対して、一定の所有制限/追加的なライセンス管理が適用されます。これらのいわゆる「戦略的目的を持った活動」には、石油・ガス、電気通信、公益事業などの分野で活動する企業が含まれると予想されます。
  • 「戦略的目的を持った活動」のリストや、各首長国での関連する申請プロセスなどの詳細は、まだ発表されていません。
  • 改正CCLはまた、UAE本土の支店を通じて営業している外国企業がUAE国民代理人を任命する要件を削除し、2021年3月30日から施行されました。
     

ビジネスへの影響

改正CCLによってもたらされる変化は、疑いなくUAEのビジネス環境に影響を及ぼします。

これまでは、アラブ首長国連邦を拠点とする企業に100%の法的・経済的支配権を保とうとする外国投資家は、自由貿易地域(FTZ)に企業を設立することを選択していました。しかし、UAEのFTZに設立された組織は、一般に、登録されているFTZ内またはUAEの外(関係国の法律に従うことを条件として)で、ライセンスを受けた活動を行うことしか許されていないため、このことはしばしば課題となりました。改正CCLの下では、外国人投資家は、UAE本土に全額出資の会社を設立することで、事業運営の柔軟性を高めることができます。

現地が株式を保有している既存のUAE本土企業も、現地パートナーとの取引関係を維持しながら、100%外資系企業への転換を検討する可能性があります。

外国人保有制限の撤廃は歓迎すべき変化ですが、UAEの企業は以下のような重要な側面を考慮する必要があります。

  • 湾岸協力理事会(GCC)諸国間の統一経済協定第3条に基づき、製造企業が、その製造する製品がGCC原産品となるためには、GCC加盟国の国民が51%の株式を保有する必要があります。この観点から、UAE本土の100%外資系企業によって製造された製品が、他のGCC加盟国によってGCC全域で免税流通が認められるかどうかは不明です。
  • 既存の本土企業(現地が株式を保有している)を100%の外資系企業に転換する際に、資産を新たな企業に移転するとみなされ、当該移転取引に関して付加価値税(VAT)がどう影響するか検討が必要になり、VATが課せられるかどうか、またプロセスを合理化するための「継続企業での移転」救済などの救置が適用されるかどうかも考慮しなければなりません。同様に、UAEで新たな事業体が設立される場合、事業体のVAT登録義務および遵守義務について、正しいVATの取扱いを決定し、必要に応じて適時にVAT登録を行う必要があります。
  • 既存の本土企業(現地が株式を保有している)を100%外資系企業に転換する場合にも、株式を売買する際の評価額について両者の合意が必要であることを考慮し、現事業の評価を考慮する必要があります。このような状況はまた、第三者への事業評価の開示につながる可能性があります。
  • 事業過多や過剰債務となっているUAE本土の企業が、UAEでのリストラを検討する可能性があります。
  • さらに、100%外資とするには、各首長国の関係当局が具体的な承認を本土企業(既存および新規)に求める必要があるため、UAE全域で一貫したアプローチが採用されるかどうかは、現段階ではまだ不明です。


詳細は下記のKPMG Lower Gulf事務所のニューズレターをご参照ください。
Tax Flash - KPMG United Arab Emirates (home.kpmg)
 

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