地域的な包括的経済連携(RCEP)の最新情報
Trade and Customs Newsletter - 2020年11月に署名された、地域的な包括的経済連携(RCEP)についてポイントを整理しています。
Trade and Customs Newsletter - 2020年11月に署名された、地域的な包括的経済連携(RCEP)についてポイントを整理しています。
地域的な包括的経済連携(RCEP)の戦略的活用
With/Afterコロナへの対応、米中対立やBrexitなどの地政学リスク、拡大するFTA経済圏その他税制環境の変化への対応など、事業環境上の課題の多様化・複雑化が顕著になる昨今においては、事業環境の変化に応じてタイムリーに経営判断を行い、自社のサプライチェーン上において最適な形で環境の変化を取り込み、適応することが求められています。
そのような状況下、1つの大きな事業環境の変化として注目されているのが、地域的な包括的経済連携(以下、RCEP)の誕生です(2020年11月に署名)。このRCEPの最大の特徴は、日本の貿易総額の26%に相当する相手国である中国・韓国との初めてのFTAであるという点です。その結果、日本の貿易総額のうち約78%を占める地域が経済連携協定によりカバーされることになります。
このように大きなインパクトをもたらすRCEPについて、協定の概要、関税メリットやコンプライアンス上求められる原産地規則等について添付PDF資料にまとめましたので是非ご一読下さい。
なお、関税メリットに関して主だったものは以下の通りです。
日本への輸入:
- 工業製品の日本輸入時における最終的な関税撤廃率は、対中国98%、韓国93%に上昇する(現状は両国とも47%)。
- 中国、韓国から多く輸入されていて、なおかつ日本輸入時における関税率が比較的高い衣類・履物等の関税が撤廃される。
日本からの輸出:
- 日本から中国または韓国への輸入に関して、大幅に関税が軽減され、現行の両国に対する関税撤廃率も、中国8%、韓国19%から中国約86%、韓国約83%と大幅に上昇する。
今後は、これまでの既存のEPAおよびFTAに加えてRCEPも利用しながら、自社のサプライチェーンにおける関税コスト等の軽減を図りつつサプライチェーンの最適化を目指す必要が出てきますが、一方で、輸入国側での調査(検認)に備えてコンプライアンス対応(原産地管理等)も徹底していくことが必要となります。
FTAの利用拡大という経営判断を適切に行うためには、コンプライアンス対応のために追加的に発生する事務手間などのコストも考慮し、事業構造の最適化により見込める関税を含むコスト削減効果との見合いで、経済合理性を追求していくといった検証を行った上で適切な経営判断を行うということが求められています。
そのような経営判断に必要となる情報の提供を目的として、添付PDF資料において、RCEPの概要(関税インパクトや、コンプライアンス上求められる原産地規則等)、RCEPにより日本企業が受ける影響等について主に貿易の観点から説明をさせていただきます。
Trade & Customs Newsletter No.23
執筆者
KPMG税理士法人
関税・間接税サービス
パートナー 神津 隆幸