デジタルトランスフォーメーションのいま Part 2

新型コロナによる経済の悪化に伴い、変化が予想されるDX活用の取組みについて、今後の投資や経営戦略の重要性を踏まえて解説します。

新型コロナによる経済の悪化に伴い、変化が予想されるDX活用の取組みについて、今後の投資や経営戦略の重要性を踏まえて解説します。

さまざまな分野で活用されるデジタル技術について、テーマごとに解説する連載の後編です。Part 1である前編では新しいビジネスの創出をテーマに論じましたが、今回はコロナ禍とDXの関連について、リモートワーク、投資の観点から解説します。

新型コロナウイルスとDX

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大は世界を大きく変えました。その影響は、経済の悪化に伴い、デジタルトランスフォーメーション(DX)の活用にも起きると予想されます。
コロナ禍とDXの関連について、リモートワークを例にとり、考察したいと思います。

コロナ禍を契機としてリモートワークの導入が増えましたが、東日本大震災後や働き方改革など、それ以前からリモートワークの重要性は認識されていました。しかし、日本企業独特の文化もあり、浸透には至らないままコロナ禍となり、日本のリモートワーク比率が欧米と比べて低いことが浮き彫りになりました。
皆様の中には、実際にリモートワークを経験することで、通勤等の時間消費や書類を前提とした手続きなど、今まで意識しなかった業務の非効率性に気づいた方もいるのではないでしょうか?また、今こそDXを活用し業務改善を進めるチャンスだと、前向きにこの危機を捉える方も多いかと思われます。
そのような発想はDXの時代には必要なものです。しかし、リアルな対面でのコミュニケーションも不要というわけではありません。コストはかかりますが、非対面コミュニケーションだけでは生むことのできない価値があるからです。この機会に、⼈間⾏動を⾒直したうえで、VR(仮想現実)やAIなどのテクノロジーを活⽤し、新たなライフスタイルの実現に備えることが重要です。

コロナ禍での投資と経営戦略

KPMGが四半期ごとに発行しているグローバルレポート(「Venture Pulse Q1 2020」)によると、多くの投資家がパンデミックの影響が明らかになるまで投資を控え、また投資を行う企業の選別にも慎重になる傾向があるなど、消極的になっていることがわかりました。
日本でも同様に、当面は新規事業やベンチャー投資の対象をより厳選することが求められると予想されます。
そのような状況においては、自社の社員教育などの内部資源の強化が必要になります。これまでですと、海外進出に軸を置き、英語など外国語の習得・研鑽に力を入れてきた企業が多いのではないかと思われますが、近い将来AIの進化により言語の壁が取り払われるかもしれません。そうなると、言語を習得するよりも、AIそのものを学ぶ方が有効になると言えます。企業がイノベーションへの努力を続けることは必須ですが、そのために何が鍵となるのかを見極めることが、コロナ禍においてはより重要です。

企業は、えてして主力事業の生産性や品質・サービスの向上に捉われがちですが、イノベーションの推進には主力事業と対立もしくは矛盾する事業の可能性への挑戦が必要です。デジタル技術の活用においても、既存事業における「知の深化」と、それにとどまらない他分野への「知の探索」が肝要であり、そのような概念への理解とバランス感覚の獲得が、不確実な時代の新たな経営戦略になると言えるでしょう。

※本レポートは、電気新聞 2020年6月8日/2020年6月15日 掲載の記事を一部加筆・修正の上、再編集したものです。この記事の掲載については、日本電気協会新聞部の許諾を得ており、無断での複写・転載は禁じます。

連載前編はこちら
デジタルトランスフォーメーションのいま Part 1

関連リンク

電気新聞 (2020年6月8日)テクノロジー&トレンド
デジタルトランスフォーメーションのいま 第3回 ポストコロナとDX
「コロナ禍のリモートワークが拓く生産性革命。「リアル」は高い価値に」

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デジタルトランスフォーメーションのいま 第4回 イノベーションとリーダーシップ
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