グローバル・オートモーティブ・エグゼクティブ・サーベイ2020

COVID-19は広範囲かつ複雑に影響を及ぼしていますが、自動車業界において、これからも変わらない確かなことは「変化が発展を生む」ということです。30ヵ国1,154人の自動車業界エグゼクティブと2,000人以上の消費者を対象とした調査結果を報告します。

30ヵ国1,154人の自動車業界エグゼクティブと2,000人以上の消費者を対象とした調査結果を報告します。

COVID-19の影響に関する8つのキーポイント

  1. COVID-19を世界的な波と捉えることが重要であり、世界に展開する生産・販売拠点の視点から同時に評価する必要があります。
  2. 需給チェーン内の時間差を捉える波状流行への対応モデルが今後も必要です。
  3. COVID-19危機は需要の根本的な変化を生み、深刻な構造的景気後退のような影響をもたらします。
  4. 公共交通機関には長期的な影響が及ぶと考えられます。
  5. 手元資金が潤沢な企業は、幅広い統合を見込んでM&Aのターゲットを見つけるなど、新しいパートナーシップの機会を活かすことができます。
  6. 文化による違いに対応することが重要になります。
  7. CO2排出量の削減目標が検証され、eモビリティが広く普及するかどうかは政府の補助金にかかってきます。
  8. 前へ進む方法はただ1つ、競争を業界全体の「協争」へと再定義することです。

メガトレンド

COVID-19を含むメガトレンドの分析を行っています。

自動車業界における明白な4大主要トレンドが特定されていますが、これらは2017年以降ほぼ定着しています。COVID-19によって、焦点は技術開発から存続と事業運営に重点を置いたアジェンダへと移行する可能性があります。

世界的に競合する産業政策が自動車業界の未来をつくるでしょう。補助金・税優遇戦略は、ポストCOVID-19の政府による景気刺激策の一環として一段と大きな役割を持つようになり、技術的アジェンダを達成し市場シェアを確立するために欠かせない手段となります。エグゼクティブの83%は、自動車メーカーの将来の技術的アジェンダは規制当局の影響をより一層受けるだろうと回答しています。

COVID-19を世界的な波と捉えることが重要であり、世界に展開する生産・販売拠点の視点から同時に評価する必要があると考えています。企業は販売チームを解雇すべきではありません。カスタマーリレーションシップとデジタル需要を管理すること、初期費用を抑えた提案を行うことに重点を置くべきです。

製品価値

パワートレインや自動運転といった技術動向に注目します。

原材料と産業政策が国ごとまたは地域の要因に根差している限り、明確な単一の投資戦略は立てられません。西欧のエグゼクティブはBEVとPHEVに重点を置いていますが、北米のエグゼクティブは、ICE開発への投資に意欲的です。

エグゼクティブと消費者のいずれも、完全自動運転車は当初の予想よりも後ろ倒しになると考えています。消費者の方がエグゼクティブより早く公道を完全自動運転車が走ると予想しており、実現年は両者とも2030年を挙げています。

依然として消費者にとってBEVの導入をためらう最大の要因は購入価格です。消費者の最大の関心は自動車の購入価格であり、eモビリティがもたらす総保有コスト(TCO)のメリットは軽視されています。
 

顧客価値

顧客の日常のパートナーの座を巡って、プレイヤー間の接戦が展開されています。

個々のタッチポイントで顧客を理解することが重要です。顧客のモビリティ決定要因は、データプライバシーとセキュリティ、総保有コスト(TCO)、シームレスでスムーズなモビリティ体験が中心になるでしょう。エグゼクティブと消費者の約半数は、今後5年間自動車メーカーが顧客に最も近い存在だろうと回答しています。

世界で「ただ1つ」のモビリティコンセプトはありません。モビリティコンセプトは都市部と農村部で異なったものになると予想され、エグゼクティブの80%以上がこれに同意しています。

実店舗の20~30%に及ぶ大幅な削減または形態変更が行われると見られます。ポストCOVID-19危機がこの結果に拍車をかけるでしょう。実店舗数の大幅削減のみならず、エグゼクティブの80%以上は既存店舗の形態変更は避けられないと予想しています。

エコシステムの価値

将来的に存続の役に立つエコシステムに投資することで次のレベルへと進める可能性があります。

COVID-19後の統合:モバイル/テック企業とウェブ/デジタル企業上位15社の時価総額は、従来の自動車メーカーとサプライヤー上位50社の時価総額の5倍以上です。自社の支えとなり、将来的に存続の役に立つエコシステムに投資すべきです。

所有から利用への変革は、ビジネスのやり方を根本から覆します。市場での成功を決める尺度は販売台数から走行距離に変わりつつありますが、ほとんどの企業は、そのようなエコシステム思考の指標を導入していません。

データはデータ駆動型ビジネスモデルの原材料です――エグゼクティブの40%以上が、データの収益化に最適なのはCar2X通信などのセキュリティ志向アプリケーションだと回答しています。COVID-19後の現実世界ではフィジカルインテグリティの重要性がはるかに高まるため、このような支持の拡大が見込まれます。データ競争では、自動車メーカーではなくICT企業が勝者であることは明らかです。

日本語版特別編 経営者インタビュー

下記の経営者の方々にインタビューを実施しました。

株式会社ジェイテクト 専務取締役 経営管理本部長 牧野 一久 氏
フタバ産業株式会社 代表取締役 社長 吉貴 寛良 氏
大手サプライヤー 経営企画担当部長
(インタビュー実施順)

また、記事の最後には、COVID-19がCASEと呼ばれる自動車業界の変化やモビリティの動向にグローバルでどのような影響を与えたのか、株式会社国際経済研究所非常勤フェローでありKPMGモビリティ研究所のアドバイザーでもある宮代陽之氏へのインタビューを掲載しました。

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