英国:不安定な環境下における回復

KPMG英国のエコノミストがCOVID-19の感染増加に伴い、制限措置が強化された場合の英国経済への影響について分析した。

KPMG英国のエコノミストがCOVID-19の感染増加に伴い、制限措置が強化された場合の英国経済への影響について分析した。

主なポイント

  • 最新のデータによると、感染対策による制限措置の強化に伴い、職場復帰という段階には至っていない。
  • ホスピタリティー業界を救済するための施策「Eat Out to Help Out」の経済効果は薄れてきている。
  • 「リストラ」に関するオンライン検索数の増加は、失業の恐れが高まっていることを示唆している。

COVID-19の感染増加に伴い、パンデミックを抑え込むための制限措置が強化され、私たちは憂鬱な気分で秋を迎えました。経済予測における一連の高頻度データの指標は、第4四半期ではさらに低下しています。

主要都市においての通勤者数は減少

職場への通勤率は、パンデミック前のレベルをはるかに下回っています。9月21日までに英国全体で35%減少しました。主要都市では、労働者は公共交通機関を利用することに消極的であるため、通勤率は平均以下の水準を記録する傾向にあります。また、リモートにて労働が可能なオフィスワーカーの割合が高くなっています。

英国の主要都市の中でもエジンバラは、他都市よりも通勤や仕事に関連した移動が持続的に低いレベルを示しています。ここ数週間、英国のすべての都市において職場への移動がわずかに減少しましたが、新たな制限措置の適用との関連性は少ないとみています。実際、ここ数週間、一部の都市では人の移動がわずかに増加しています。

労働者の職場復帰の減速は、通勤者の人出に依存する企業や、職場でのサービスを提供する企業に打撃を与えています。根本的に継続可能な事業さえ、短期的に消失するリスクがありますが、一方で、新しい働き方を採用するなど、企業はCOVID-19後の世界に機敏に対応をする必要があります。

英国主要都市をまたぐ通勤の図表は、Chief Economist’s note: recovery on shaky groundをご参照ください。

新たな感染増加により、「Eat Out to Help Out」の経済効果が低下

8月には、政府の外食産業支援策「Eat Out to Help Out」の施策による食事の割引により、レストランやカフェで食事をする人の数が増加しました。英国全土で、8月の最終日(銀行休業日)には、通年の3.5倍近くの人々が外食をしました。

9月上旬には、外食者数は一年前に近いレベルに安定しました。「Eat Out to Help Out」による施策が功を成し、迅速な収益の回復を示しました。しかし、最新のデータによると、常連客数が減少しています。新たに講じられた制限措置と感染増加の再発が外食することを妨げており、9月28日から始まる1週間の予約数は、1年前の同時期と比較して10%減少しています。

英国における飲食店のテーブル予約数昨年比の図表は、Chief Economist’s note: recovery on shaky groundをご参照ください。

冬に向け失業への不安が高まる

Google検索のデータから「リストラ」という用語の検索数が増加していることが明らかになりました。地域ごとに実施された都市封鎖や感染の増加により、雇用に関する懸念が高まっています。これは11月に雇用維持制度(JRS)が終了することと関連している可能性があります。 「冬季経済計画」で発表された政府によるJRSの代替案は、非労働時間に対する雇用主の負担が大幅に増加するため、現在の制度と同様の効果をもたらす可能性は低いと考えられます。新しい制度では、賃金補償の適応範囲が限定され、労働者は就労時間の3分の1を労働することが条件となっています。この制度が適用されるのは限定的で、事業を停止している企業には適用されないため、失業率の急激な増加につながる可能性があります。

Googleでの「リストラ」検索数の図表はChief Economist’s note: recovery on shaky groundをご参照ください。

英語コンテンツ(原文)

関連リンク

KPMG英国では、英国と世界経済に関する最新情報を定期的に配信しています。

お問合せ