税務情報(2020.6 - 7)

本稿は、2020年6月から7月に財務省・国税庁等から公表された税務情報ならびにKPMG税理士法人のウェブサイトに掲載している情報をまとめてお知らせするものです。

本稿は、2020年6月から7月に財務省・国税庁等から公表された税務情報ならびにKPMG税理士法人のウェブサイトに掲載している情報をまとめてお知らせするものです。

ハイライト

I. 2020年度税制改正

1. 国税庁 - グループ通算制度に関するQ&Aの公表

2020年度税制改正では連結納税制度の見直しが行われ、グループ通算制度(2022年4月1日以後開始事業年度より適用)へ移行することとされました。
これを受け、国税庁は6月3日、以下のQ&Aを公表しました。

このQ&A(全93ページ)は、グループ通算制度に関する税務上の取扱い等を43の設問を用いて解説するもので、2020年3月31日に公布(2020年4月1日施行)された所得税法等の一部を改正する法律に基づき作成されています。
なお、グループ通算制度に係る政省令等が公布された際には、随時、記載内容等について改訂が行われる予定とのことですが、7月31日現在、以下の「2. グループ通算制度の政省令(国税)の公布」に伴う改訂は行われていません。

 

上記に関するe-Tax News
KPMG Japan e-Tax News No.199 (2020年6月8日発行)(日本語)
KPMG Japan e-Tax News No.199 (2020年6月8日発行)(英語)

2. グループ通算制度の政省令(国税)の公布

3. 国税庁 - 法令解釈通達の発遣

国税庁は、主に2020年度税制改正に対応した以下の改正通達を公表しました。

2020年度税制改正項目のうち、たとえば子会社からの配当と子会社株式の譲渡を組み合わせた租税回避への対応や、企業会計基準第30号「時価の算定に関する会計基準」の導入に伴う売買目的有価証券の時価評価金額の計算等の見直しを踏まえた通達の新設・改正等が行われています(2020年度税制改正における連結納税制度からグループ通算制度への移行に関する改正通達は、今回公表された改正通達には含まれていません)。

第1 法人税基本通達関係
第2 連結納税基本通達関係
第3 租税特別措置法関係通達(法人税編)関係
第4 租税特別措置法関係通達(連結納税編)関係
第5 東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律関係通達(法人税編)関係

 

上記に関するe-Tax News
KPMG Japan e-Tax News No.204 (2020年7月7日発行)

4. 国税庁 - 改正の概要・あらましを公表

国税庁のウェブサイトに、毎年この時期に公表される改正の概要・あらましが掲載されました。

法人税の主要な改正((1)5G投資促進税制、(2)子会社からの配当と子会社株式の譲渡を組み合わせた租税回避への対応、(3)オープンイノベーション促進税制)についてはイメージ図や算式等を交えて、また、それ以外については表形式により、改正のポイントがまとめられています(全31ページ)。

2020年度税制改正における所得税の主な改正事項及び2018年度・2019年度税制改正事項のうち2020年度分の所得税から適用される主なものについて解説しています。また、「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律」(2020年4月30日公布・施行)による措置のうち、所得税関係の事項についても触れられています(全20ページ)。

II. 2019年度税制改正

国税庁 - 2019年度税制改正に対応した法人税に係る改正通達の趣旨説明の公表

国税庁は7月8日、2019年度税制改正に対応して発遣された「法人税基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)」(2019年6月28日付)に関する以下の趣旨説明を公表しました。

 

第1 法人税基本通達関係
仮想通貨取引に関する法人税法上の取扱いの整備に対応して新設・改正された通達に係る趣旨説明が含まれています。

第2 租税特別措置法関係通達(法人税編)関係
以下の改正に対応して新設された通達に係る趣旨説明等が含まれています。

  • 試験研究費の税額控除制度のうち特別試験研究費(オープンイノベーション型)に係る税額控除における特別試験研究費の範囲の見直し(研究開発型ベンチャー企業・一定の民間企業等への委託試験研究に係る試験研究費の額の追加)
  • 移転価格税制における(1)独立企業間価格の算定方法へのディスカウント・キャッシュフロー法(DCF法)の追加、(2)移転価格税制上の無形資産の定義の明確化及び(3)評価困難な無形資産に係る国外関連取引(特定無形資産国外関連取引)に関して、税務当局が取引後の事実関係を参照して取引価格の適正性を検証することを可能とする措置(特定無形資産国外関連取引に係る価格調整措置)の導入

 

上記に関するe-Tax News
KPMG Japan e-Tax News No.205 (2020年7月15日発行)

III. 新型コロナウイルス感染症拡大防止関連情報

1. 経済産業省 - 「新型コロナウイルスの影響により株主総会の延期等を行う場合の役員給与の損金算入について」の公表

経済産業省は6月12日、「新型コロナウイルス感染症関連」の「株主総会(オンラインでの開催等)、企業決算・監査等の対応」のページにおいて、以下の資料を公表しました。

この資料は、新型コロナウイルス感染症の影響により、決算・監査に関する業務に大きな遅延が生じ株主総会の延期等を行う企業の役員給与について、法人税法上の損金算入の手続等に関する考え方を以下のとおり整理したものです。なお、これらの内容は国税庁に事前に確認を行ったものであるとのことです。

 

(1)定期同額給与
定期同額給与のうち通常改定の期限

原則 3月経過日等
会計期間開始の日から3ヵ月(確定申告書の提出期限の延長の特例により税務署長の指定する月数の延長が認められている場合には、指定月数に2を加えた月数)を経過する日
特例 定期同額給与の改定が3月経過日等後にされることについて特別の事情があると認められる場合には、その改定の時期
継続して毎年所定の時期にされる改定に限る

 

今回示された考え方

新型コロナウイルス感染症の影響により、決算・監査に関する業務に大きな遅延が生じ、定時株主総会を延期することとなったことに伴い、定時株主総会に合わせて継続して毎年所定の時期にされる役員給与の通常改定が3月経過日等後に行われる場合 自己の都合によらない「特別の事情があると認められる場合」に該当し、定期同額給与の通常改定時期の要件を満たす

 

(2)事前確定届出給与
事前確定届出給与に係る届出の期限

原則 株主総会等の決議により役員の職務について事前確定届出給与の定めをした場合におけるその決議をした日(同日がその職務執行の開始の日後である場合には、その開始の日)から1ヵ月を経過する日
特例 上記の1ヵ月を経過する日が4月経過日等後である場合には、その4月経過日等
その職務執行の開始の日の属する会計期間開始の日から4ヵ月(確定申告書の提出期限の延長の特例により税務署長の指定する月数の延長が認められている場合には、指定月数に3を加えた月数)を経過する日

 

今回示された考え方

新型コロナウイルス感染症の影響により、決算・監査に関する業務に大きな遅延が生じ、定時株主総会を延期することとなったことに伴い、事前確定届出給与に係る定めについての株主総会等の決議が例年の株主総会等の決議の時期より遅れることとなったため、4月経過日等までに事前確定届出給与に関する届出ができない場合 国税通則法第11条(災害等による期限の延長)が認められる

 

(3)業績連動給与
損金算入される一定の業績連動給与の適正手続終了時期要件

要件 3月経過日等までに報酬委員会が決定していること等の適正な手続を経ていること
職務執行期間開始日の属する会計期間開始の日から3ヵ月(確定申告書の提出期限の延長の特例により税務署長の指定する月数の延長が認められている場合には、指定月数に2を加えた月数)を経過する日

 

今回示された考え方

新型コロナウイルス感染症の影響により、決算・監査に関する業務に大きな遅延が生じ、継続会を開催又は株主総会を延期することとなったことに伴い、適正な手続を経た業績連動給与の決定が3月経過日等後になった場合 上記の要件は満たさない
ただし、以下の《事例》のような場合には、その決定は3月経過日等までに行われたものと認められ、上記の要件を満たす

 

《事例》

  • 継続会を行う場合においては、3月経過日等までに開催する当初の株主総会で役員選任決議と併せた決議により業績連動給与を決定し、その後の決算報告を継続会で行う場合
  • 3月経過日等までに開催する報酬委員会又は報酬諮問委員会への諮問を経た取締役会において業績連動給与を決定し、延期された株主総会においてその給与に係る金額等の承認や役員選任の決議を行う場合

上記に関するe-Tax News
KPMG Japan e-Tax News No.200 (2020年6月17日発行)

2. 中小企業庁 - 新型コロナウイルス感染症対応下における経営力向上計画の認定に関する柔軟な取扱いの公表

中小企業庁は6月16日、「経営サポート『経営強化法による支援』
のページに掲載している以下の資料を更新しました。

P.11に「新型コロナウイルス感染症対応下における経営力向上計画の認定に関する柔軟な取扱いについて」(A~C類型共通の取扱い)というページが新たに追加されました。具体的な内容は以下のとおりです。


前提 - 設備の取得時期について(P.10)
(下記は、以前より示されていた取扱いです)

  • 中小企業経営強化税制の適用を受けるためには、中小企業者等は、工業会証明書又は経済産業局確認書を取得したのち、経営力向上計画について主務大臣の認定を受ける必要がある。
  • 経営力向上設備等(以下「設備」という)は、経営力向上計画の認定を受けた後に取得することが原則であるが、設備を取得した後に経営力向上計画を申請することも例外的に認められる。この場合には、その設備の取得日から60日以内に経営力向上計画の申請が受理される必要があるとともに、遅くともその設備を取得し事業の用に供した事業年度内に経営力向上計画の認定を受ける必要がある。

新たに示された「柔軟な取扱い」(P.11)
新型コロナウイルス感染症の影響により、経営力向上計画の申請時に必要な工業会証明書又は経済産業局確認書の発行遅延等により、設備を取得した事業年度末までに認定を受けられないケースにおいて、以下の特例が講じられる旨が示されています。

  • 2020年2月以降に取得した設備に関しては、設備取得から経営力向上計画の申請(受理)までの期間が60日を超過する場合であっても、2020年9月30日までの期間は、その申請は受理される。
  • 2020年9月30日までの期間に申請された経営力向上計画については、特例措置として、設備を取得し事業の用に供した事業年度内に認定を受けたものと同様に取り扱われる(この特例措置により、中小企業経営強化税制の適用要件を満たすことになる)。

また、税務署へ提出することとされている経営力向上計画の認定書が、前述の特例措置の適用により、確定申告書の提出期限までに入手できない場合の取扱い等も記載されています。

3. 国税庁 - 納税の猶予制度の特例 - 「特定日」の改正

新型コロナウイルス感染症等の影響により収入に相当の減少があった納税者を救済するため、「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律」(2020年4月30日公布・施行、以下「新型コロナ税特法」という)により、「納税の猶予制度の特例」が設けられました。
「納税の猶予制度の特例」とは、2020年2月1日から納税の猶予を受けようとする国税の納期限までの間の任意の期間(連続した1ヵ月以上の期間に限ります)において、新型コロナウイルス感染症及び、そのまん延防止のための措置の影響により、納税者の事業等に係る収入が前年同期に比べておおむね20%以上減少しており、かつ、一時に納税を行うことが困難であると認められる場合には、無担保かつ延滞税なしで1年間、納税の猶予が認められる措置です。
この特例措置による納税の猶予の対象となる国税は、「2020年2月1日から『特定日』までに納付すべきほぼ全ての国税」であり、この「特定日」は新型コロナ税特法に係る政令により定められています。2020年6月26日、官報号外第129号において、「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律施行令の一部を改正する政令」が公布され、上記の「特定日」が以下のように改正されました。

【改正前】2021年1月31日
【改正後】2021年2月1日

この改正により、この「納税の猶予制度の特例」の対象となる国税は、「2020年2月1日から2021年2月1日までに納期限が到来するほぼ全ての国税」となりますのでご留意ください。
なお、国税庁のウェブサイトや国税庁及び財務省から公表されている各種資料等においても、「特定日」に係る記載内容が変更されています。

4. 国税庁 - 所得税関連の通達の発遣

国税庁は6月29日、以下のページにおいて新たな法令解釈通達を発遣しました。

新型コロナ税特法により設けられた以下の2つの所得税関連の特例に関する通達が含まれています。

  • 指定行事の中止等により生じた権利を放棄した場合の寄附金控除又は所得税額の特別控除の特例
  • 住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の特例

 

上記3及び4に関するe-Tax News
KPMG Japan e-Tax News No.202 (2020年6月30日発行)(日本語)
KPMG Japan e-Tax News No.202 (2020年6月30日発行)(英語)

新型コロナ税特法に関するKPMG Japan tax newsletter
(2020年6月24日発行)
新型コロナウイルス感染症緊急経済対策における税制上の措置(日本語)
New Tax Measures for COVID-19(英語)
(2020年7月17日発行)
※上記2020年6月24日発行のKPMG Japan tax newsletterでお知らせした納税の猶予制度の特例の内容を、最新の情報に更新したものです。

新型コロナウイルス感染症緊急経済対策 - 納税の猶予制度の特例(日本語)
COVID-19 - Special Grace Period Provision(英語)

IV. 租税条約

セルビアとの租税条約 - 署名

財務省は7月22日、日本国政府とセルビア共和国政府との間で「所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とセルビア共和国との間の条約」の署名が7月21日に行われたことを公表しました。セルビア共和国との間ではこれまで租税条約は存在せず、本条約は、両国間の経済関係の発展を踏まえて新たに締結されるものです。
本条約は、両国間で生ずる二重課税を除去するため、両国において課税することができる所得の範囲を定める規定等を設けています。また、本条約の締結によって、両国の税務当局間において、本条約の規定に従っていない課税についての協議及び租税に関する情報交換の実施が可能となります。

 

財務省プレスリリース
日本語:セルビアとの租税条約が署名されました
英語:Tax Convention with Serbia was Signed

V. その他

国税庁 - 年末調整手続の電子化に関する資料の公表・改訂

国税庁は年末調整手続の電子化に関し、(1)のパンフレットの公表及び(2)(3)のFAQの改訂を行いました。

(1)令和2年分からの年末調整手続の電子化について
年末調整手続の電子化に関するパンフレットについて」というページに、年末調整手続を電子化するにあたり、勤務先及び従業員が準備すべき事項等を記載したパンフレット(スケジュール、勤務先向け1~3、従業員向け1~3の7つに分割されています)が掲載されています。

(2)年末調整手続の電子化及び年調ソフト等に関するFAQ

(3)年末調整控除申告書作成用ソフトウェアに関するFAQ(ソフトウェア開発業者等の方向け)

執筆者

KPMG税理士法人

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