税務情報(2020.2 - 3)
本稿は、2020年2月から3月に財務省・国税庁等から公表された税務情報ならびにKPMG税理士法人のウェブサイトに掲載している情報をまとめてお知らせするものです。
本稿は、2020年2月から3月に財務省・国税庁等から公表された税務情報ならびにKPMG税理士法人のウェブサイトに掲載している情報をまとめてお知らせするものです。
I.2020年度税制改正
1.2020年度税制改正法案の成立及び政省令の公布
3月27日、第201回通常国会において2020年度税制改正に係る以下の2つの法案が可決・成立しました。また、3月31日、官報令和2年3月31日特別号外第37号において、これらの改正法が関連政省令とともに公布されました。
- 所得税法等の一部を改正する法律案
- 地方税法等の一部を改正する法律案
- 官報令和2年3月31日 特別号外第37号
なお、2020年度税制改正では連結納税制度の見直し(グループ通算制度への移行)が行われることとされていますが(この改正は2022年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。)、この改正に関連する政省令はまだ公布されていません。
上記に関するe-Tax News
KPMG Japan e-Tax News No. 188 (2020年3月27日発行)(日本語)
KPMG Japan e-Tax News No. 188 (2020年3月27日発行)(英語)
連結納税制度の見直し (グループ通算制度への移行)の概要をお知らせするKPMG Japan tax newsletter (2019年12月18日(日本語)及び2020年2月7日(英語)発行
2020年度税制改正 連結納税制度の見直し(グループ通算制度への移行)(日本語)
2020 Tax Reform Proposals - Revision to Consolidated Tax Return Filing System(英語)
主な改正項目の概要をお知らせするKPMG Japan tax newsletter (2019年12月20日発行)
2020年度税制改正大綱 (日本語)
Outline of the 2020 Tax Reform Proposals (英語)
2.税制改正関連法案の国会提出
2月18日、2020年度税制改正に関連する「特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律案」が第201回通常国会へ提出され、経済産業省のウェブサイトに、法律案やその概要及び要綱等が掲載されました。
2020年度税制改正では、「特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律案」の制定を前提として、認定特定高度情報通信技術活用設備(5G)投資促進税制(次世代の最大の資源となる「データ」を様々な分野・地域において利活用できる環境整備に向け、安全性・信頼性が確保された5G(第5世代移動通信システム)設備の導入を促す観点から、全国5G基地局の前倒し整備及びローカル5Gの整備に係る一定の投資について、特別償却又は税額控除を認める措置)が創設されます。
3.企業会計基準委員会 - 実務対応報告第39号「連結納税制度からグループ通算制度への移行に係る税効果会計の適用に関する取扱い」の公表
企業会計基準委員会は3月31日、以下の実務対応報告を公表しました。
2020年度税制改正による連結納税制度の見直し(グループ通算制度への移行)により、グループ通算制度の適用対象となる企業は、改正法人税法の成立日以後に終了する事業年度の決算(四半期決算を含みます。)において、企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」第44項に基づき、グループ通算制度の適用を前提として繰延税金資産の回収可能性の判断を行う必要がありますが、その判断を行うことについて実務上対応が困難であるとの意見があったことから、公開草案のパブリックコンサルテーションを経て、上記の実務対応報告が公表されたものです。
この実務対応報告により、改正法人税法の成立日以後に終了する事業年度の決算(四半期決算を含みます。)についてグループ通算制度の適用を前提とした税効果会計における繰延税金資産及び繰延税金負債の額については、実務対応報告第5 号「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その1)」及び実務対応報告第7 号「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その2)」に関する必要な改廃を企業会計基準委員会が行うまでの間は、グループ通算制度への移行及びグループ通算制度への移行にあわせて単体納税制度の見直しが行われた項目について、注記を要件に、上記の適用指針第44 項の定めを適用せず、改正前の税法の規定に基づくことができます。
II.新型コロナウイルス感染症拡大防止関連情報
1.国税庁からの公表情報
今般の新型コロナウイルス感染症に対する政府の方針を踏まえ、その拡大防止の観点から、国税庁は「新型コロナウイルス感染症に関する対応等について」というページを設け、以下の各種ページ等へのリンクを掲載しています。
(1)確定申告関係(申告・納付期限の延長)
「申告所得税、贈与税及び個人事業者の消費税の申告・納付期限が令和2年4月16日(木)まで延長されました」というページには、以下の情報等が掲載されています。
国税庁は2月27日、申告所得税等の申告・納付期限を2020年4月16日まで延長することをウェブサイトにおいて公表しましたが、3月6日には官報特別号外第20号において、国税通則法施行令第3条第2項(災害等による期限の延長)の規定に基づく国税庁告示第1号を告示し、申告、申請、請求、届出その他書類の提出又は納付(その期限が2020年2月27日から2020年4月15日までの間に到来するもの)をすべき個人のこれらの期限を2020年4月16日まで延長することを定めました。
このページには上記の国税庁告示第1号の内容が記載されており、申告・納付等の期限の延長の対象となるのは、申告所得税(及び復興特別所得税)、贈与税及び個人事業者の消費税(及び地方消費税)並びに国外財産調書及び財産債務調書であることが示されています。
国税庁告示第1号により申告・納付等の期限が延長されることとなる主な手続(申告所得税関係11件、贈与税関係3件、個人事業者の消費税関係2件及びその他2件(国外財産調書及び財産債務調書))が記載されています。
2019年分の確定申告に係る延長後の振替納付日(申告所得税(及び復興特別所得税)は2020年5月15日、個人事業者の消費税(及び地方消費税)は2020年5月19日等)が示されています。
(4月6日には、「確定申告期限の柔軟な取扱いについて - 4月17日(金)以降も申告が可能です - 」というお知らせが掲載され、新型コロナウイルス感染症の各地での感染の拡大状況に鑑み、期限内に申告することが困難な納税者については、期限を区切らず、4月17日(金)以降であっても確定申告書が受け付けられることが公表されました。)
(2)納税が困難な方へ(納税・換価の猶予)
「新型コロナウイルス感染症の影響により納税が困難な方へ」というページには、新型コロナウイルス感染症の影響により国税を一時に納付することができない場合や新型コロナウイルス感染症にり患した場合等の個別の事情がある場合に認められうる換価の猶予(国税徴収法第151条の2)及び納税の猶予(国税通則法第46条)に関する情報が掲載されています。
また、このページに掲載されている「新型コロナウイルス感染症の影響により納税が困難な方には猶予制度があります」というリーフレットでは、上記の猶予制度の要件等を解説しています。
(3)新型コロナウイルス感染症に関するFAQ
新型コロナウイルス感染症に伴う申告手続や納付手続などに関するよくある問合せとそれについての一般的な回答を取りまとめた、「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」が掲載されています。
このFAQは2020年3月18日現在の法令等に基づき作成されたもので、以下の6章から構成されています。
- 令和元年分の確定申告における申告・納付期限の一括延長関係(11問)
- 申告・納付等の期限の個別延長関係(6問 (4月6日に1問追加))
- 納付等の手続関係(4問)
- 納付の猶予制度関係(7問 (4月8日に1問追加))
- 申告所得税等の確定申告に係る申告相談関係(6問)
- 新型コロナウイルス感染症に関連する税務上の取扱い関係(1問(企業が生活困窮者等に自社製品等を提供した場合の取扱い))
2.東京都主税局からの公表情報
国税庁の対応と平仄を合わせ、総務省は申告期限の延長等や納税が困難な方への対応について適切な運営がなされるよう、地方団体に要請しました。(総務省からの要請は、「新型コロナウイルス感染症の影響に伴う地方税における対応について」に掲載されています。)
これを受け、東京都主税局は、「新型コロナウイルス感染症拡大防止対策」というページを設け、以下の情報等を公表しています。
(1)申告・納付期限の延長
2020年2月27日から2020年4月15日までに到来する個人事業税の申告期限を2020年4月16日まで延長することを公表するものです(年の中途において事業を廃止した場合は除かれます)。
この取扱いは同日付けの東京都公示に基づくもので、上記のページには、この東京都公示のリンクのほか、以下の情報等が掲載されています。
- 事業を廃止した場合を除き、所得税の確定申告を行った納税者は個人事業税の申告を行ったものとみなされるため、個人事業税について別途申告を行う必要はない。
- 個人事業税の納税通知書は原則として8月に発送されるが、申告所得税及び個人事業税の申告期限が延長されたことに伴い、一部の納税者については9月以降に納税通知書が発送される可能性がある。
(2)徴収・換価の猶予
2ページのリーフレットで、徴収猶予(地方税法第15条)を受けることができるケースや、申請による換価の猶予(地方税法第15条の6)の制度概要が紹介されています。
48ページの資料(令和2年4月版)で、徴収・換価の猶予を受ける場合の手続の流れ、適用要件及び申請のための必要書類等が、詳細に解説されています。
上記に関するe-Tax News
(日本語)
KPMG Japan e-Tax News No. 184 (2020年2月28日発行)
KPMG Japan e-Tax News No. 185 (2020年3月9日発行)
KPMG Japan e-Tax News No. 186 (2020年3月16日発行)
KPMG Japan e-Tax News No. 187 (2020年3月27日発行)
KPMG Japan e-Tax News No. 190 (2020年4月6日発行)
(英語)
KPMG Japan e-Tax News No. 184 (2020年2月28日発行)
KPMG Japan e-Tax News No. 185 (2020年3月9日発行)
KPMG Japan e-Tax News No. 186 (2020年3月16日発行)
KPMG Japan e-Tax News No. 187 (2020年3月27日発行)
KPMG Japan e-Tax News No. 190 (2020年4月6日発行)
III.2018年度税制改正(国税庁からの公表情報)
1.e-Taxによる申告の特例に係る届出書等の公表
2020年4月1日以後開始事業年度より、資本金1億円超の大法人等の一定の内国法人については電子申告(国税はe-Taxによる申告)が義務化されますが、この義務化の対象となる法人は、定められた期限内に、納税地の所轄税務署長に対し、適用開始事業年度等を記載した届出書を提出することとされています。また、電子申告が困難である場合や電子申告の特例の適用がなくなった場合にも、申請書・届出書を提出する必要があります。
国税庁は、法人税の申告、申請及び届出等の様式を掲載しているページに、以下の3つの届出書及び申請書を新たに掲載しました。
2.財務諸表のCSV形式データの作成方法に関する情報の公表
2020年4月1日以後の申告から、e-Taxにおける財務諸表について、現状のデータ形式(XBRL形式)に加えてCSV形式による提出も可能となることから、国税庁は昨年、e-Taxのウェブサイトに「財務諸表のCSV形式データの作成方法(暫定版)」というページを設け、CSV形式データにおける財務諸表の勘定科目コード及び標準フォーム等の情報を暫定版として提供していました。
国税庁は2月27日、確定版の情報を掲載した新たなページ「財務諸表のCSV形式データの作成方法」を公表するとともに、3月19日にいくつかの情報を追加で掲載しました。
このページに掲載されている情報は以下のとおりです。
- CSV形式データ作成に当たっての留意事項
- 財務諸表(貸借対照表、損益計算書、その他)(令和2年4月1日以後提出分)の勘定科目コード表及び標準フォーム
- 財務諸表CSV形式データの具体的な作成方法
- 勘定科目コード検索ツール(勘定科目コード表から該当するコードを検索できるツール
- CSVファイルチェックコーナー(作成されたCSVファイルのエラーの有無をチェックできるコーナー)
- よくある質問(財務諸表のCSVデータ形式の作成及び提出方法等についてのよくある質問)
上記に関するe-Tax News
(日本語)
KPMG Japan e-Tax News No. 179 (2019年8月2日発行)
KPMG Japan e-Tax News No. 181 (2019年12月23日発行)
KPMG Japan e-Tax News No. 185 (2020年3月9日発行)
KPMG Japan e-Tax News No. 187 (2020年3月27日発行)
(英語)
KPMG Japan e-Tax News No. 185 (2020年3月9日発行)
KPMG Japan e-Tax News No. 187 (2020年3月27日発行)
3.年末調整手続の電子化及び年調ソフト等に関するFAQの公表
2018年度税制改正により、2020年10月1日以後に提出する給与所得者の保険料控除申告書及び住宅借入金等特別控除申告書については、年末調整において生命保険料控除、地震保険料控除及び住宅借入金等特別控除の適用を受ける場合の控除証明書等を電子データにより勤務先に提供することが可能になります。
国税庁は昨年、この年末調整手続の電子化に関する情報を掲載したページ「年末調整手続の電子化に向けた取組について(令和2年分以降)」をウェブサイトに開設していましたが、2月17日、このページにおいてこれまで【作成中】とされていた「4 よくある質問(FAQ)」に「年末調整手続の電子化及び年調ソフト等に関するFAQ」が掲載されました。
このFAQは以下の5章から構成されています。
- 年末調整手続の電子化の概要(14問)
- 年末調整手続の電子化に向けた準備(勤務先)(16問)
- 年末調整手続の電子化に向けた準備(従業員)(18問)
- マイナポータル連携(12問)
- 年調ソフト(25問)
IV.その他
経済産業省 - 「中堅・中小企業向け海外展開のための税制基礎資料」を掲載
経済産業省は、これまで様々な施策により中堅・中小企業の更なる海外展開を推進していますが、今後、より効率的な海外展開を行うためには、海外への進出・事業運営・撤退の各ステージにおいて、日本及び現地の税制、進出後のコンプライアンス要求等を正確に把握したうえで、最適な意思決定を行うことが重要となるという観点から、昨年度より、海外展開に係る検討の一助となる情報提供を行うための税制基礎セミナーを開催しています。
また、上記に加えて、企業が海外の事業活動に係る課税関係を適切に把握し必要な対策を実施するためには、企業がグローバルな税務ガバナンス体制を整備することが重要であるという観点から、今年度より新たに、日本の中堅・中小企業がグローバルな税務ガバナンス体制の整備を進めるうえで、各社にとっての望ましい姿や取り組むべき方策を考える際に必要な検討事項や留意事項をとりまとめ、経理・税務担当者向け及び経営者・経営企画・事業部向けのセミナーを開催しています。
これらのセミナーは、経済産業省の委託事業としてKPMG税理士法人が実施したものであり、以下のセミナー資料が経済産業省の「国際租税」のページに掲載されました。
進出先国税制の概要について
- 令和元年度 経済産業省 委託事業 中堅・中小企業向け
海外展開のための各国税制基礎セミナー資料
この資料は、「Ⅰ 海外展開に際して検討すべき国際税務の基礎知識の解説」及び「Ⅱ 進出先国税制及び執行に係る最新状況の解説」の2章から構成されています。「Ⅱ」では、主要各国(米国、中国、タイ、インドネシア、ベトナム、シンガポール、インド、マレーシア、ドイツ、オーストラリア及びブラジル)の税制の概要や進出時の注意点及び移転価格税制等の情報が、図表を用いて網羅的に解説されています。
グローバル税務ガバナンス体制整備について
- 令和元年度 中小企業・小規模事業者海外展開戦略支援事業(進出先国税制等広報事業)
日本企業のグローバル税務ガバナンス体制の整備に向けた現状及び検討課題の整理と9つの提言
76ページの資料で、以下の6章から構成されています。
・はじめに
・税務ガバナンスとは
・税務ガバナンスの必要性
・望ましい税務ガバナンスの在り方
・日本企業における税務ガバナンス体制の現状と課題
・まとめ - 望ましい税務ガバナンスを実現するための9個の提言
- 令和元年度 経済産業省 委託事業 中堅・中小企業
【経理・税務担当者向け】
グローバル税務ガバナンス体制整備のための情報提供セミナー資料
- 令和元年度 経済産業省 委託事業 中堅・中小企業
【経営者・経営企画及び事業部向け】
グローバル税務ガバナンス体制整備のための情報提供セミナー資料
上記2つのセミナー資料は、「令和元年度 中小企業・小規模事業者海外展開戦略支援事業(進出先国税制等広報事業) 日本企業のグローバル税務ガバナンス体制の整備に向けた現状及び検討課題の整理と9つの提言」に基づき作成されたスライドです。
執筆者
KPMG税理士法人