世界のeスポーツ市場(2):韓国

韓国のeスポーツ市場の隆盛について、「PCバン」「OnGameNet(現OGN)」「プロチーム、プロリーグの誕生」の3つの要因から解説する。

韓国のeスポーツ市場の隆盛について、「PCバン」「OnGameNet(現OGN)」「プロチーム、プロリーグの誕生」の3つの要因から解説する。

eスポーツが1つの産業としてプロリーグ・試合放送・スポンサーなどの現状のエコシステム(生態系)として定着したのは韓国が世界で最初である。
もともと韓国のゲーム市場は1990年代中盤までは日本の家庭用ゲーム機のゲームに人気があり、ゲームに対する一般的なイメージも日本と同じような状況だった。他の国に比べると、日本と韓国のゲーム事情は近い環境であった。
ところが、パソコンやインターネットの普及とともにオンラインゲームが流行。多彩なゲームの中で、相手とリアルタイムで戦略・戦術を競う「リアル・タイム・ストラテジー(RTS)」と呼ばれるジャンルのゲームの人気が高まった。特に米ブリザード・エンターテイメントのRTSゲーム「スタークラフト」が大ヒットしたことで、プレーヤー層が1つのコミュニティになる基盤ができあがった。
これを契機に、1つのゲームタイトルの流行に終わらず、韓国ではeスポーツがコンテンツ産業として成長した。その要因として大きく3つが考えられる。

まず1つは、「PCバン」と呼ばれる日本のネットカフェのようなゲーム専用施設ビジネスが誕生したことである。ピーク時には全国2万ヵ所以上のPCバンが24時間営業した。誰もが気軽にゲームができる環境が整い、自宅にパソコンがなくとも人気ゲーム「スタークラフト」を楽しめるようになり、ライト層のゲームコミュニティが拡大するのに大きな貢献を果たした。各地のPCバンでは大小の大会イベントが開かれ、各地域で有名な「ゲーム選手」が登場し始めた。

2つ目は、韓国内にeスポーツのプロリーグが誕生する前の2000年ごろから、世界初のeスポーツ専用チャンネル「OnGameNet(現OGN)」がケーブルテレビ上で始まったことである。各地のローカルゲーム選手を集めたより大きな大会を主催するとともに視聴コンテンツとして普及したことで、それまでゲームへの関心が低い、またプレーしていなかった層を取り込むことに成功した。

最後の3つ目の理由は、国内eスポーツのプロチーム・プロリーグが発足したことである。実力のあるプレーヤーがプロ専業を目指せるように、プロチームに所属。そこでは一定の給料と大会賞金・賞与が支給され、チームのトレーニングハウスでコーチングスタッフの指導を受ける合宿訓練の仕組みが体系化された。

こうした背景から韓国国内でのeスポーツの人気は高まり、2004年に釜山で開催されたプロリーグの決勝戦には10万人もの観客が集まるまでになった。そしてその人気は、それまでeスポーツの分野に進出していなかった大手企業が協賛するきっかけになった。

 

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日経産業新聞 2020年2月14日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

執筆者

KPMGコンサルティング
シニアマネジャー Hyun Baro(ヒョン バロ)

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