IFRS適用企業に対するCOVID-19の影響 - 契約は依然として、「自己使用の例外」に該当するか?

IFRS適用企業における、COVID-19が非金融商品の売買契約(自己使用の例外)に及ぼす影響の解説記事です。

IFRS適用企業における、COVID-19が非金融商品の売買契約(自己使用の例外)に及ぼす影響の解説記事です。

論点は何か?

企業は、非金融商品(原油・金属等のコモディティ)の売買契約を、IFRS金融商品の会計基準に基づき、純損益を通じて公正価値で測定するデリバティブとして会計処理することを要求される場合があります。[IFRS 9.2.4]
金融商品に関する会計基準は、非金融商品の売買契約が現金もしくは他の金融商品で純額決済できる場合(契約の対象となる非金融商品が容易に換金可能である場合を含む)に適用されますが、「自己使用の例外」に該当する非金融商品の売買契約には適用されません。[IAS 32.8, IFRS 9.2.4]
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大による経済の混乱の影響を受け、これらの契約の一部は、「自己使用の例外」に該当しなくなる可能性があります。

COVID-19の世界的な流行は、企業がどのような場合に非金融商品の売買契約をデリバティブ商品として会計処理するかについての判断に影響を及ぼすかもしれません。

詳細説明

「自己使用の例外」に適格となるためには、非金融商品の売買契約は、企業の予想される購入、販売または使用の必要に従って当該非金融商品を受け取るまたは引き渡す目的で締結され、引き続きその目的で保有される必要があります。また、企業が過去に類似の契約を純額で現金決済する実務を行っていた場合、当該契約は「自己使用の例外」に該当しないことになります。[IFRS 9.2.4, 2.6]
COVID-19により以下の事象が生じることが予想されます。

  • 事業活動の低迷とそれに続く企業の予想される購入、販売または使用の必要の減少
  • サプライチェーンの混乱により、企業または取引相手が現物決済を行う能力が損なわれる可能性
  • 需要(または供給)の急激な減少により、現物の受渡しを行わずに現金で純額決済し契約が終了または解約される可能性

以下の状況において、企業が「自己使用の例外」を適用する能力に影響が及ぼされる可能性があります。

  • 特定の契約に関しては、その契約を保有することが、減少した予想される購入、販売または使用の必要と整合しなくなる場合(例えば、現物決済ではなく純額での現金決済が予想される場合)。
  • 類似の契約グループに関しては、そのうちの一部を純額で現金決済する場合。

企業に純額決済した過去の実績があり、それにより「自己使用の例外」が適用が認められなくなるかどうかに関しては判断が求められます。純額決済が稀であり、かつ契約当初に予測不能であった事象への対応として行われていた場合は、このケースに該当しません。[Insights into IFRS第16版 7.1.210.40]

そのほか、企業は自社のビジネス慣行に照らし、「類似の契約」の考え方を検討する必要があります。[Insights into IFRS第16版 7.1.210.50]

経営者が今すべきこと

経営者は、以下を踏まえて、非金融商品の売買契約をデリバティブとして会計処理すべきか(すなわち、自己使用の例外が適用できなくなるか)否かを再検討する必要があります。

  • 予想される購入、販売または使用の必要の減少
  • サプライチェーンの混乱により見込まれる純額決済
  • 純額決済の実例

執筆者

有限責任 あずさ監査法人
会計プラクティス部

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