IFRS適用企業に対するCOVID-19の影響 - ヘッジ会計はどのような影響を受けるか

IFRS適用企業における、COVID-19がヘッジ会計に及ぼす影響の解説記事です。

IFRS適用企業における、COVID-19がヘッジ会計に及ぼす影響の解説記事です。

論点は何か?

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大による経済の混乱の影響を受け、企業にとって、増大するリスク・エクスポージャーをどのように管理するかが課題となっています。
企業がIAS第39号「金融商品:認識及び測定」またはIFRS第9号「金融商品」に基づき、リスク管理戦略の一環としてヘッジ会計を適用している場合、下記の点について検討が必要です。

  • IFRSにおけるヘッジ会計の要件を引き続き満たすかどうか
  • 純損益に認識すべきヘッジの非有効部分があるかどうか
  • キャッシュフロー・ヘッジ・リザーブに累積された金額を、純損益に振り替えるべきかどうか

COVID-19の世界的な流行は、企業がヘッジ会計を適用する時期と方法に影響を及ぼす可能性があります。

詳細説明

ヘッジされた取引の変更

企業は、原材料及び棚卸資産の購入・販売等の予定取引に対し、頻繁にキャッシュフロー・ヘッジを適用しています。予定取引は、発生の可能性が高い場合にのみ、ヘッジ対象に指定されます。この発生の可能性に関する評価には、報告日時点の予想を反映させる必要があります。COVID-19の影響を受け、多くの地域や様々な業界において実際の取引量と予定の取引量が減少しています(例えば、ジェット燃料取引)。[IAS 39.88(c), IFRS 9.6.3.3]

COVID-19の発生により、ヘッジされた予定取引の発生の可能性が低くなる、または発生時期に影響がある場合、ヘッジ会計を中止しなければならない、または非有効部分が存在する可能性があります。同様に、IFRS第9号では、発生の可能性が高い予定取引の取引量の減少もヘッジ会計の一部中止につながる可能性があります。[IAS 39.101(b), IFRS 9.6.5.6, B6.5.25, B6.5.27(b), BC6.317]

予定取引の発生可能性がもはや高くはなくなったことによりヘッジ関係が中止となる場合、企業は当該取引の発生が依然として見込まれるか否かについて判断しなければなりません。判断結果に基づいて、以下の会計処理が行われます。

  • 発生がまだ見込まれる場合:キャッシュフロー・ヘッジ・リザーブに累積されたヘッジ手段に係る損益は、通常は将来キャッシュフローが生じるまで維持する。
  • 発生がもはや見込まれない場合:キャッシュフロー・ヘッジ・リザーブに累積されたヘッジ手段に係る損益は、直ちに純損益に振り替えなければならない。[IAS 39.101(b)–(c), IFRS 9.6.5.12(a)–(b)]

上記に加えて、COVID-19の発生により生じる金融商品の契約条項の変更は、ヘッジ対象としての適格性に影響を及ぼすと考えられます。例えば、顧客が中途解約を行う場合に契約条項により重大なペナルティが科される定期預金商品に、銀行が公正価値ヘッジ会計を適用しているケースがあります。もし銀行がペナルティに対する権利を放棄し、顧客による中途解約を可能とする場合、当該契約は要求払預金と同様の性質を持つ商品とみなされます。この場合、ヘッジされる公正価値エクスポジャーは存在しないため、ヘッジ関係は中止されます。[IAS 39.AG118(b), BC87(d), IFRS 13.47]

経営者が今すべきこと

  • キャッシュフロー・ヘッジのヘッジ対象に指定された予定取引について、その発生可能性が引き続き高いか否かを評価します。発生可能性が高くない場合は、当該取引が依然として発生する見込みがあるか否かを検討します。
  • COVID-19の影響により、ヘッジされた金融商品の契約条件が変更された場合、当該金融商品が引き続きヘッジ対象として適格か否かを決定します。
  • COVID-19の影響によるヘッジ手段とヘッジ対象の信用リスクの変動が、ヘッジの有効性の判定と非有効部分の測定に影響を与えるか否かについて評価します。
  • キャッシュフロー・ヘッジ・リザーブに累積された損失が将来の期間において回収できるか否かについて評価します。

英語コンテンツ(原文) 

執筆者

有限責任 あずさ監査法人
会計プラクティス部

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