円滑な販売活動のための事業継続計画とは

「レジリエンスを高める」第15回 - 有事でも円滑に販売活動を継続させるために、企業が留意すべき事業継続計画(BCP)について解説する。

有事でも円滑に販売活動を継続させるために、企業が留意すべき事業継続計画(BCP)について解説する。

大規模な自然災害が発生した際、製造業における事業継続に関して、「生産の復旧」や「調達資材の確保」、「物流網の回復」にスポットライトが当てられるが、企業としての存続に特に重要なのは「販売」であると筆者は考えている。

災害時には、被災地域の経済停滞等によって企業の売り上げは急速に減少し、キャッシュフローも悪化し、よほどキャッシュリッチな企業でない限り、資金繰りに苦しむことになる。キャッシュインが減少しても、従業員への給与支払い、災害見舞金の支給、取引先への支払いなどのキャッシュアウトは継続して発生する。銀行からの一時的な借り増しによる資金調達も一案だが、被災した状況の中でも、販売活動を可能な限り縮小することなく継続し、キャッシュインを減少させないことが重要である。

では、有事の中でも販売活動を継続させるために、企業は何に留意する必要があるだろうか。
まず、第一に考慮すべきなのは、有事の発生時点における販売在庫の把握・確保は当然ながら、その他には主に「取引先」「営業人員」「販売経路」の3点が挙げられる。
なかでも最も重要な要素は売り先である「取引先」である。有事の際、販売現場の営業人員は限りある販売在庫をどの取引先に、どれだけの量を供給すべきか判断できないというケースが予想される。事前に取引先の優先順位付けや、その配分を検討しておくことが重要である。また、食品関係や医療関係の製造事業者は被災地への支援物資についても配慮する必要があり、取引先への販売とのバランスをとり、販売計画を見直す必要がある。

「営業人員」は、取引先からの問い合わせ対応や商流変更などのイレギュラー対応を行う上で重要な役割を果たす。一方、販売拠点が被災した場合には、営業人員自身が被災し出勤できないケースも想定される。他エリアからの応援体制の整備など、平時から販売拠点における事業継続計画(BCP)を整備しておくべきである。

「販売経路」も重要である。平時から取引のある商社や卸業者が被災し、その機能が停止する場合に備え、商流上はこれらの企業を通すとしても、自社が小売店等に直接商品を届けるための代替販売経路を検討しておくべきである。平時からオペレーションについて検討し、文書化することなどでルール作りをしておくことが望ましい。
また、販売システムの停止に備え、紙伝票による代替運用などのBCPの作成も有効な手段の1つである。

日経産業新聞 2017年11月28日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

執筆者

KPMGコンサルティング
マネジャー 岩田 啓

レジリエンスを高める

お問合せ