あなたの会社にIFRS第17号「保険契約」が適用されるかも?

IFRSのヒント - IFRS第17号「保険契約」は、保険会社でなくても適用される可能性があるので、あなたの会社でも対応が必要かもしれません。

IFRS第17号「保険契約」は、保険会社でなくても適用される可能性があるので、あなたの会社でも対応が必要かもしれません。

IFRSのヒント

IFRSの適用現場から、実務のつれづれを語ります。

IFRSを既に適用している、あるいは将来適用を予定している保険会社では、IFRS第17号適用に向けて検討を進めていますが、実は、基準が定義する「保険契約」がある場合には、保険会社でなくともIFRS第17号が適用される可能性があります。IFRS第17号の適用が必要となる契約がある場合には、保険数理の専門家の関与やシステム対応が必要となることが予想されるので、そうした契約の有無につき早期に検討しておくことが望まれます。

基準が定義する「保険契約」とは?

保険契約とは、「発行者が当事者(保険契約者)から、所定の不確実な将来事象(保険事故)が保険契約者に不利な影響を与えた場合に保険契約者に補償することに同意することにより、重要な保険リスクを引き受ける契約」と定義されています。
この定義をそのまま当てはめると、意外と適用される契約が少なくないかもしれません。例えば、
「商品が壊れた場合、5年以内であれば無償で修理や交換を保証します。」
「工場設備に不具合があった場合に備えて、修理・メンテナンスサービスを定額料金でやらせていただきます。」

などといった契約は、修理や交換といった事象が将来発生するか不確実なため、「保険契約」の定義に該当すると思われます。

基準の適用除外・選択適用

上記の例などに対し、そのコストと便益等の観点から、IFRS第17号では、たとえ保険契約の定義に該当する契約でも、IFRS第17号の適用を除外あるいは他の基準との選択適用を認めています。それらは基準に列挙されており、該当する場合にはIFRS第17号の適用を回避できます。言い換えると、それら以外の保険契約の定義に該当する契約がある場合は、IFRS第17号の適用の要否を慎重に判断しなければなりません。
主な適用除外・選択適用(IFRS第17号第7項、第8項参照)

  • 製造業者、販売業者等が顧客への財・サービスに関して提供した製品保証(IFRS第15号「顧客との契約から生じる契約」を適用)
  • 従業員給付制度から生じる雇用主の資産・負債(IAS第19号「従業員給付」、IFRS第2号「株式に基づく報酬」を適用)
  • 債務者が期日に債務の支払を行わない場合に補償する金融保証契約(IFRS第9号「金融商品」とIFRS第17号の選択適用)
  • ロードサービスや修理サービス等の固定料金サービス(一定条件を満たした場合、IFRS第15号とIFRS第17号の選択適用)

また、2019年6月に公表された修正公開草案では、クレジットカードに付帯する保険契約や住宅ローンなどの貸付金契約に付された死亡時の返済免除の条項についても、IFRS第17号の適用除外等が提案されています。
あなたの会社にとって全く無関係な基準ではないかもしれませんから、一度会社の取引・契約等を確認して影響の有無を検討してみてはいかがでしょうか。
IFRS第17号についてもう少し詳しく知りたい方は、あずさ監査法人発行の解説をご覧ください。

執筆者

有限責任 あずさ監査法人
会計プラクティス部

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