公開草案「IFRS第17号の修正」に関するアウトリーチの報告
ポイント解説速報 - 国際会計基準審議会(IASB)は、アウトリーチにおける利害関係者からのフィードバックについて報告した。公開草案「IFRS第17号の修正」(以下、本公開草案)に対するコメントレターの分析は、来月から行われる予定である。
国際会計基準審議会(IASB)は、アウトリーチにおける利害関係者からのフィードバックについて報告した。
ハイライト
- さまざまな地域に対してアウトリーチが行われた。
- 本公開草案の内容に対するフィードバックや提案は、概ね肯定的なものであった。
- 一部のフィードバックにおいては、本公開草案で修正が提案されていない領域に関する懸念もあった。
- 次のステップ:本公開草案に対するコメントレターの概要は11月に公表される予定である。
新しい保険契約の会計基準(IFRS第17号)を修正する提案に関して行われた利害関係者に対するアウトリーチからのフィードバックが公表された
アウトリーチは保険契約を発行する企業を中心に行われたが、監査人や規制当局、会計基準設定主体、および財務諸表利用者からのフィードバックもあった。当該アウトリーチは、本公開草案の90日間のコメント募集期間中にIASBがさまざまな地域に対して行ったものであり、10月のIASB会議にて概要が報告された。
IASBスタッフは、本公開草案に対するコメントレターの概要を11月のIASB会議において提供する予定としている。
「IASBがアウトリーチを通じて概ね肯定的なフィードバックを受け取ったこと、および最終的な修正を2020年中頃までに公表するというIASBの目標が継続していることは励みになることである。2023年適用など、さらなる適用日延期の議論にかかわらず、円滑な移行プロセスを求める保険会社にとっては、無駄にする時間はない」
Joachim Koelschbach
KPMG’s Global IFRS Insurance Leader
利害関係者の反応および提案
ほとんどの利害関係者は本公開草案の提案内容に賛成したが、追加的なコメントも見られた。(以下参照)
修正内容 | アウトリーチのフィードバック |
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クレジットカード契約および融資契約に関する適用範囲の除外 | 一部の利害関係者は、本公開草案で修正が提案されているクレジットカード契約の範囲が狭すぎることを懸念した。一方で、クレジットカード契約がIFRS第9号「金融商品」において当期純利益を通じて公正価値で測定する(FVTPL)区分とされることについて懸念する利害関係者もいた。 |
契約獲得キャッシュ・フローの回収可能性 | 一部の利害関係者は、提案されている修正内容はIFRS第17号を適用することの継続的なコストを増加させることになることを懸念した。また、IASBに対し以下に関するガイダンスの提供を求めた利害関係者もいた。:
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投資サービスへの契約上のサービス・マージン(CSM)の配分 | 一部の利害関係者は、投資リターン・サービスが存在するための要件が狭すぎるとの見解を示した(特に、「ある金額を引き出す権利」または「投資要素の存在」に関する要件について)。 また、複数サービスを提供する契約について、カバー単位の特定の複雑性について懸念した利害関係者もいた。 |
保有する再保険契約 - 損失の填補 | ほとんどの利害関係者が、修正が提案されている再保険契約の範囲が狭すぎるという見解を示した(例:本公開草案で定義されている比例的な再保険以外のタイプにも修正内容が適用されるべきと考える利害関係者もいた)。 |
財政状態計算書の表示 | ほとんどの利害関係者が、提案されている修正内容がIFRS第17号の導入コストを軽減するであろうことに賛成した。 |
リスク軽減オプションの適用可能性 | 一部の利害関係者は、リスク軽減目的で保有され、FVTPL区分で会計処理されるすべての金融商品に対してもリスク軽減オプションの適用を拡大するべきであるとの見解を示した。 |
IFRS第17号の発効日とIFRS第9号の一時的免除 | 一部の利害関係者は、IFRS第17号の適用日を2年延期し、2023年1月1日以降とすることや、大規模な保険会社と小規模な保険会社で異なる発効日を設けることを提案した。 また、IFRS第9号とIFRS第17号の平仄は必ずしも必須ではないと考える保険会社や、IFRS第9号の適用がさらに延期されることを特に懸念する財務諸表利用者もいた。 |
移行に関する軽減措置 | 多くの利害関係者は、決済期間中に取得された支払備金に関する軽減措置をIFRS第17号の移行後の期間にも拡大することを望んだ。これにより、企業結合に関する現行の保険会計実務がIFRS導入後も続けることができるようになるであろう。 また、移行措置においてリスク軽減オプションを遡及的に適用することができることを望む利害関係者もいた。 |
軽微な修正と用語 | 一部の利害関係者は、変動手数料アプローチの要件が個々の契約単位で評価するかのように編集されることを懸念した。 また、用語の変更(例:カバー単位の規定において、「カバー」を「サービス」に置き換えることなど)についてはさまざまな見解が見られた。 |
他の領域の懸念に対するフィードバックおよび提案
本公開草案で修正が提案されているスコープ外の領域についてもフィードバックがあった。
期中財務報告
IAS第34号「期中財務報告」は、企業の報告の頻度が年次の測定結果に影響しないことを要求している。 IFRS第17号にはこの要求の例外が含まれており、期中財務諸表で行われた会計上の見積りの取扱いは変更できない。
多くの利害関係者は、この規定により、企業が期中財務諸表を作成するかどうか、および作成の頻度に応じて、CSMの計算が異なることを懸念した。これは比較可能性を損なう可能性があり、導入コストがかかる可能性がある。
年次コホート
IFRS第17号では、1年超離れて発行された保険契約を同じグループに含めることはできない。一部の利害関係者は、この要求について懸念を示し、適用するためにはコストがかかり、世代を超えてリスクを共有するような特定の保険契約については有用な情報を提供しないと主張した。
次のステップ
11月のIASB会議では、IASBスタッフは以下を提供する予定としている。
- 本公開草案に対するコメントレターのフィードバックの概要
- 再審議のための論点の順序付けおよびグルーピングの計画
特定の論点に関するフィードバックの詳細な分析は、将来のIASB会議でそれらの論点を再審議する際に提示されるだろう。IASBの目標は引き続き、2020年中頃にIFRS第17号の最終修正を公表することとされている。