プロセスマイニングを理解するシリーズ第1回目は、プロセスマイニングが、システムに蓄積されたデータを元に作成するイベントログから業務の流れのすべてを事実に基づいて可視化できることをご紹介しました。シリーズ第2回目は、プロセスマイニングにより見えてくるものは何か、それによって業務はどう改善できるのかについてご紹介します。

発見:業務の流れに多くのバリエーションがあることが見えてくる

プロセスマイニングという手法が導入される以前、業務の流れの可視化は、担当者へのヒアリングや現場での立ち会い調査などで行われてきました。しかし、その手法では、業務の流れをすべて把握するには限界がありました。一方で、プロセスマイニングでは業務の流れのすべてが事実に基づいて把握できるため、担当者の想像を超えるほどにバリエーションがあることに気づくことでしょう。
例えば[1.受注登録][2.出荷指示][3.出庫][4.請求登録/売上計上]というプロセスのある販売業務があったとします。この場合、1→2→3→4という順が通常の業務の流れなのですが、プロセスマイニングではイベントログを分析することで、[2.出荷指示]があってから[1.受注登録]が行われていたケースや、[1.受注登録]だけでそのまま業務が終わってしまっているケースなど、さまざまな業務の流れのバリエーションが明らかになるでしょう。しかも、業務の流れのすべてが網羅されているので、これまでのサンプル調査では見落とされていたような、1、2件しかないようなレアケースのバリエーションも確実に把握できるようになります。

(※)動画説明 一連の業務に関するすべてのケースをフローチャートで表示するダッシュボード画面。業務の流れがアニメーションで把握でき、1件しか発生しなかったような例外的ケースも一目でわかる。

また、プロセスマイニングでは、それぞれの業務の流れをさらに詳細に確認することもできます。イベントログには、より細かな属性情報、例えば製品名、製品単価、取引額、得意先、担当部署や担当者などをひも付けることができるからです。例えば、どの商品のどのプロセスでどれぐらいの時間がかかっているのかなど、詳細に発見することができます。

適合性チェック:標準プロセスモデルからの逸脱度合いが見えてくる

プロセスマイニングでは、あらかじめ設定された通常の業務の流れ(ここでは「標準プロセスモデル」とします)から、実際にどの程度乖離した業務の流れが発生しているのかを数値で確認できます。先ほどの販売取引業務を例にした場合、[1.受注登録][2.出荷指示][3.出庫][4.請求登録/売上計上]の順番を標準プロセスモデルにすると、その通りにプロセスが進行した案件およびそうでない案件は全取引のうち何件ずつだったのかという数値や割合で表示することができます。
これらは月ごとなど期間を設けて算出し、例外ケース別に分析することで季節変動等の特性を把握することができ、例外ケースをリスト化し、そのそれぞれについて適合していない理由を詳細に確認できるようにもなります。

(※)動画説明 適合度チェックのためのダッシュボードでは、適合および例外件数の推移が期間別に確認できる。また、例外ケースについては、品目や得意先等で絞り込み、明細データにドリルダウンすることで原因分析を行う。

強化:より効率的・効果的なプロセスモデルが見えてくる

プロセスマイニングによる「発見」と「適合性チェック」からは、現在の業務プロセスにおける新たな気づきが生まれます。それは、想定外のことかもしれません。例えば標準的なプロセスモデルだと思っていた業務の流れが実は少数派で、例外ケースと思われるプロセスでも、内部統制をしっかり構築してコンプライアンス上のリスクをなくせば、効果的なやり方となり得るかもしれません。
これこそがプロセスマイニングの醍醐味です。プロセスマイニングで得られる新たな知見を元に標準プロセスモデルの定義をアップデートすることで、より効率的な業務プロセスの構築が可能になります。さらに、適合性チェックにより、標準からの逸脱の定量的な把握が、その原因も含めて容易になるため、特定した問題点を現場にフィードバックしてプロセスを改善し、スピーディな問題解決につなげられます。
業務プロセスのアップデートや現場の業務改善は、企業が事業を続ける限り、永遠に続く課題です。その課題に対する答えの一つが、プロセスマイニングの手法を用いて業務プロセスを継続的に分析し、標準プロセスモデルを強化し続けることなのです。
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