国際会計基準審議会、「単一の取引から生じた資産及び負債に係る繰延税金(IAS第12号の改訂)」を公表
国際会計基準審議会(以下、IASB審議会)は、2021年5月7日、「単一の取引から生じた資産及び負債に係る繰延税金(IAS第12号の改訂)」を公表しました。
国際会計基準審議会(以下、IASB審議会)は、2021年5月7日、「単一の取引から生じた資産及び負債に係る繰延税金(IAS第12号の改訂)」を公表しました。
本改訂は公開草案(ED/2019/5)「単一の取引から生じた資産及び負債に係る繰延税金(IAS第12号の修正案)」(2019年7月17日公表)について寄せられたコメントを踏まえ、審議を重ねた結果として公表されたものです。
本基準書のポイント
- 企業がリースや廃棄義務などの取引(資産と負債の両方を認識する取引)に対する繰延税金をどのように会計処理すべきかを特定するために、IAS第12号「法人所得税」について狭い範囲での改訂を行っています。
- 本改訂によって、リースや廃棄義務などの取引に繰延税金に関する当初認識の免除規定が適用されないこと、及び企業がそのような取引に対して繰延税金を認識する必要があることが明確化されています。
- 本改訂は、2023年1月1日以後開始する事業年度に適用され、早期適用が認められています。
I. 改訂の背景
IFRS第16号「リース」を適用するにあたって、企業はリースの開始日に使用権資産(リース資産)及びリース負債を認識します。リース資産及びリース負債の当初認識時に繰延税金を認識すべきかどうかを決定するにあたり、企業は一時差異が生じているかどうかを評価します。税務上の損金算入がリース負債に起因するものであると企業が判断する場合、リース資産とリー ス負債の税務基準額はゼロとなり、リース資産及びリース負債に係る一時差異がリースの当初認識時に生じます。
IAS第12号は、企業が資産又は負債の当初認識から生じる繰延税金を認識することを特定の状況において禁止しており(認識の免除)、本改訂が公表される前は、このような状況において、繰延税金の認識をどのように考えるべきかについての見解にばらつきが生じていました。
II. 改訂の概要
繰延税金資産及び繰延税金負債の当初認識の免除規定に係るIAS第12号第15項及び第24項を修正し、取引時に同額の将来加算一時差異及び将来減算一時差異が生じる取引については、当初認識の免除規定を適用せず、繰延税金負債及び繰延税金資産をそれぞれ認識することとされています。
例えば、リースの開始日に、借手は通常、リース負債及びこれに対応する金額を使用権資産の原価の一部として認識します。適用される税法によっては、そのような取引における資産及び負債の当初認識時に、将来加算一時差異と将来減算一時差異が等しくなる場合があります。IAS第12号第15項及び第24項で規定されている当初認識の免除規定は、このような一時差異には適用されず、企業は、結果として生じる繰延税金負債及び繰延税金資産を認識することになります。
なお、公開草案では、回収可能性により繰延税金資産が認識できない等、認識の免除がなければ企業が同額ではない繰延税金資産と繰延税金負債を認識することとなる範囲で認識の免除規定を引続き適用することを提案していましたが、公開草案に対するコメントを受けて、当該提案は削除されています。
III. 適用日
本改訂は、2023年1月1日以後開始する事業年度に適用されます。本改訂の早期適用は認められます。
本改訂を適用する企業は、提示した最も早い比較期間の開始時に、関連するすべての将来減算一時差異及び将来加算一時差異に係る繰延税金資産(将来減算一時差異を利用できる課税所得が利用可能である可能性が高い範囲で)及び繰延税金負債を認識し、適用開始の累積的影響を、利益剰余金(または必要に応じて資本の他の内訳項目)の期首残高に対する調整として認識することとされています。
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執筆者
有限責任 あずさ監査法人
会計プラクティス部
シニアマネジャー 三宮 朋広