保険業界におけるオペレーショナルエクセレンス - パフォーマンス、デジタル、顧客体験 -
KPMGとACORDが保険会社の環境やさまざまな課題、機会に関するサーベイを実施し、経営効率化に向けた取組みについて考察します。
KPMGとACORDが保険会社の環境やさまざまな課題、機会に関するサーベイを実施し、経営効率化に向けた取組みについて考察します。
現在の事業費環境をいかに効率的に管理するかという問題について、保険会社はかつてないほどの圧力にさらされています。保険業界では、投資リターンの低迷や競争圧力の激化、改善の進まない余剰なキャパシティにより、事業費の増加率を上回る収益の成長を達成できない状態が続いています。
サーベイの回答からは、大多数の会社が経営効率の改善目標を達成できていないこと、そしてプロセスの標準化や戦略的ビジョンの欠如が将来の変革に対する主な阻外要因となるということがはっきり見えてきます。そこで各社のCEOや上級幹部が、保険会社における戦略、テクノロジー、オペレーションの各領域にわたり、これらの不備を正すためのさまざまなアプローチを慎重に考察することが必要です。
ポイント
- アプローチ考察のために必要不可欠な取組みや変革としては、オペレーティングモデルやプロセスの再設計、販売チャネル、レガシーシステム、代替ソーシング、インテリジェント・オートメーション(IA)が挙げられる。
- 多くの保険会社は経営効率向上という点での立ち遅れを認め、主な阻害要因として、プロセスの標準化や戦略的ビジョンの欠如を挙げている。
- 現状から近い将来に向けて、プロセスの標準化やレガシーシステムの改修といった分野から、IAの導入や代替ソーシングプログラムへとリソースを再配分する動きが予想される。
- 保険会社は、契約受付、保険金請求、その他の分野にIAを利用することで新しい機能を作り出し、それらの改善点を会社全体で活用すべきだ。
- さまざまな課題に対処しながら企業価値の最大化を目指すために、経営効率化のプログラムが第一に重視すべきなのは、無駄が少なく柔軟性に富んだ組織の構築である。
成功に向けたロードマップ
サーベイ結果によると、現在、保険会社の大多数が、経営効率の改善の必要性を理解している一方で、そのうちの54%が目標の達成が遅れていると回答しています。実際、伝統的なコスト削減に向けた取組みから、新たなテクノロジーを基盤とするソリューションまで保険会社の業務効率の改善のための選択肢は数多くあります。また取り扱う商品の増加や地域的拡大などで何層にもわたって構築され、自社製かまたはカスタマイズされたために他のシステムとの統合が難しい社内の業務システムなども、事態をより複雑にしています。
しかしビッグデータやAI、そのほかの技術を活用することで、保険会社は経営効率の向上の機会だけでなく、顧客や代理店、従業員に対する、より豊かな体験の提供を通じて競争上の優位性を高める機会を得ることができます。そこには顧客エンゲージメント、資産の性質と価値の変化、サービスとしての活用、将来の働き手という4つの重要な基本要素を含みます。
さらに経営効率の課題として、多くの保険会社がビジネスプロセスの再設計、販売チャネル、レガシーシステム、代替ソーシング、IAなどが挙げられるでしょう。
インテリジェント・オートメーション(IA)
保険会社は、契約受付、保険金請求、その他の分野にIAを利用することで新しい機能を作り出し、それらの改善点を会社全体で活用すべきです。また保険会社にとって最も必要なことは、学んだことを最初の一歩から理解し、あらゆるプロセスや事業ライン、地域にわたってこれらの機能を拡げていくことです。
現在、ほとんどの保険会社が、事業戦略との統合、拡張性のあるオペレーティングモデル、エンド・ツー・エンドのプロセスへの注力などの要素を考慮に入れて、12ヵ月間のロードマップを策定しています。保険のバリューチェーンにおいてIAを開始し、保険会社はそのケーパビリティ開発を通し、そこで獲得した専門知識や経験を他の機能領域やビジネス領域にも活用することができます。その際、ビジネスのバリューチェーン全体を評価すること、それに従って全体調和の取れたロードマップを策定することが極めて重要です。ただし、IAはどんな場合でもうまくいく万能なテクノロジーではない、という事実を認識することが重要です。自らの事業目的や戦略に合わせてカスタマイズできるプラットフォームを使う、その概念を理解することが鍵となるでしょう。
結論
現在の保険業界全体で起こっているイノベーションと変革は大きな広がりと規模を持っており、その加速化は止まらないでしょう。そこで保険会社が経営効率化のプログラムを第一に重視すべきなのは、さまざまな課題に対処しながら企業価値の最大化を目指すために、無駄が少なく柔軟性に富んだ組織の構築です。コスト削減は、あくまでその結果です。短期的なコスト削減を超えて物事を考え、根本的なビジネスモデルの評価と問題提起し、コスト管理に向けた体系的なアプローチを行います。それにより、すべてではなく、いくつかの重要なビジネス側面にフォーカスすることで、経営層は核となるコストドライバーを見つけ出し、効率的なコスト管理対策を持続可能な形で講じることができるでしょう。