学校法人の勘定科目と会計上の留意点 第6回:経費

学校法人で使用される勘定科目の内容と当該勘定科目における会計上の留意点を解説していきます。第6回は経費について解説します。

学校法人で使用される勘定科目の内容と当該勘定科目における会計上の留意点を解説していきます。第6回は経費について解説します。

学校法人の経費の種類

学校法人の経費は、以下に区分されます。

経費の種類 説明
教育研究経費 教育研究のために支出する経費
管理経費 管理目的のための経費


私立学校には、国または地方公共団体より各種の補助金が交付されます。その最大のものが、経常費補助金になります。学校の経費は当該補助金の補助対象になりますが、全ての経費が補助対象となるわけではありません。私立大学の場合であれば、補助金の対象となる経費は、経常的経費とされており、具体的には以下とされています(日本私立学校振興・共済事業団の私立大学等経常費補助金取扱要領)。

  1. 専任教員等給与費
  2. 専任職員給与費
  3. 非常勤教員給与費
  4. 教職員福利厚生費
  5. 教育研究経常費
  6. 厚生補導費
  7. 研究旅費

すなわち、経費は、教育研究経費であるか、管理経費であるかが経常費補助金の額に影響を及ぼすことになります。

教育研究経費と管理経費の区分

1. 教育研究経費と管理経費の区分時に考慮すべき7項目

「「教育研究経費と管理経費の区分について(報告)」について(通知)」(昭和46年11月2日雑管第118号)において、学校法人財務基準調査研究会の報告(「教育研究経費と管理経費の区分について」)に基づき、以下の7項目に該当することが明らかな経費は、管理経費とし、それ以外の経費については主たる使途に従って教育研究経費と管理経費のいずれかに含める旨が記載されています。

  1. 役員の行なう業務執行のために要する経費および評議員会のために要する経費
  2. 総務・人事・財務・経理その他これに準ずる法人業務に要する経費
  3. 教職員の福利厚生のための経費
  4. 教育研究活動以外に使用する施設、設備の修繕、維持、保全に要する経費(減価償却贅を含む。)
  5. 学生生徒等の募集のために要する経費
  6. 補助活動事業のうち食堂、売店のために要する経費
  7. 附属病院業務のうち教育研究業務以外の業務に要する経費

上記を表にまとめると以下のとおりです。

7項目への該当 区分
明らかに該当するもの 管理経費
該当するが、教育研究と管理の双方に関連して発生するもの
(Ex.水道光熱費)
それぞれに区分して把握
または合理的な配分基準により配分
該当しないもの
(Ex.私学団体関係費)
目的に応じて処理

「教育研究経費と管理経費の区分に関するQ&A」(学校法人委員会研究報告第30号)

2. 学校法人財務基準調査研究会の報告の7項目に該当する経費の例

学校法人財務基準調査研究会の報告(「教育研究経費と管理経費の区分について」)の7項目に「明らかに該当するもの」および「該当するが、教育研究と管理の双方に関連して発生するもの」の具体例は以下のとおりです。

学校法人財務基準調査研究会の報告 管理経費の例 教育研究経費の例
1. 役員の行う業務執行のために要する経費及び評議員会のために要する経費
  • 役員会の経費
  • 役員の旅費、事業費、交際費等
 
2. 総務・人事・財務・経理その他これに準ずる法人業務に要する経費
  • 法人本部における経費
  • その他の各部門における当該業務に要する経費
 
3. 教職員の福利厚生のための経費
  • 教職員の健康診断、慶弔・見舞等に係る経費
  • 学生・生徒等に係る福利厚生費
4. 教育研究活動以外に使用する施設、設備の修繕、維持、保全に要する経費(減価償却費を含む)
  • 管理用建物等の減価償却費、修繕費、取壊し費用
  • 建物等の取壊し後の土地を教育研究用から管理用へ使途変更する場合の取壊し費用
  • 教育研究用建物等の減価償却費、修繕費、取壊し費用
5. 学生生徒等の募集のために要する経費
  • 学校案内作成等の経費
  • 入学試験に要する経費
  • 入学試験の準備のための会議、作問、印刷等に係る経費
6. 補助活動事業のうち食堂、売店のために要する経費
  • 食堂、売店及び全寮制(※)以外の寄宿舎に係る経費
    ※遠隔地からの学生のみでなく、例えば一学年全員
  • 一部の人が利用するスクールバスに係る経費
  • 全寮制の寄宿舎に係る経費
  • 大多数の学生生徒が利用する場合のスクールバスに係る経費
  • 同一学年生全員に対して実施される給食に係る経費
  • 公開講座等に係る経費(但し、公開講座の収入を公開講座収入として計上する総額処理の場合)
7. 附属病院業務のうち教育研究業務以外の業務に要する経費
  • 学校法人委員会研究報告第30号の例示なし

(参考):通知及び学校法人委員会研究報告第30号

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