自動運転車対応指数2019 - 自動運転車に対する各国の準備状況分析
2回目の本調査は、対象国を新たに5ヵ国加え、AVに関する消費者の意見などの新しい指標を追加し、国別の詳細な達成状況を報告します。
2回目の本調査は、対象国を新たに5ヵ国加え、AVに関する消費者の意見などの新しい指標を追加し、国別の詳細な達成状況を報告します。
ハイライト
AVRIの結果によると、AVの普及に対する準備が整っている国のランキングは次のとおりです。
順位 | 国名 |
2019年スコア |
|
---|---|---|---|
2019年 |
2018年 |
||
1 | 1 | オランダ | 25.05 |
2 |
2 | シンガポール | 24.32 |
3 | - | ノルウェー | 23.75 |
4 | 3 | 米国 | 22.58 |
5 | 4 | スウェーデン | 22.48 |
6 | - | フィンランド | 22.28 |
7 | 5 | 英国 | 21.58 |
8 | 6 | ドイツ | 21.15 |
9 | 8 | アラブ首長国連邦 | 20.69 |
10 | 11 | 日本 | 20.53 |
11 | 9 |
ニュージーランド | 19.87 |
12 | 7 | カナダ | 19.80 |
13 | 10 | 韓国 | 19.79 |
14 | - | イスラエル | 19.60 |
15 | 14 | オーストラリア | 19.01 |
16 | 12 | オーストリア | 18.85 |
17 | 13 | フランス | 18.46 |
18 | 15 | スペイン | 15.50 |
19 | - | チェコ | 14.46 |
20 | 16 | 中国 | 14.41 |
21 | - | ハンガリー | 11.99 |
22 | 18 | ロシア | 8.55 |
23 | 19 | メキシコ | 7.73 |
24 | 20 | インド | 6.87 |
25 | 17 | ブラジル | 6.41 |
今回もオランダとシンガポールが1位と2位を占めました。オランダは、運送と物流におけるAVの利用状況の調査、新法の可決など、国としてどうAVに対応すべきかを示す模範となっています。また、シンガポールは、政府が十分に先を見越してモビリティの未来を考え、自動運転の未来を促進するような規制環境を準備しています。
しかし、この調査から読み取れることは、どの国にも大きく飛躍するチャンスがあるということです。イノベーションを可能にする政策の枠組み、テクノロジー分野の優れた実績、質の高い道路とデジタルインフラ、新しい技術を国民が積極的に受け入れるといった要素を兼ね備えた国が成功する可能性を秘めています。
AVによってもたらされる社会的利益と各国の取組み
AVによる影響については多くの不確定要素がありますが、少なくとも、政府、民間の幅広い組織が大きく変化することは確実だと思われます。こうした変化に対応できる国には、AVの普及によって「安全性」「公共交通と運送サービスの効率化」「道路利用の効率化」「車より人と緑を中心としたクリーンな都市の再形成」などの社会的利益がもたらされます。
安全面では、AVの普及によりヒューマンエラーによる交通事故の死者が大幅に減少します。
公共交通においては、オンデマンドの自動運転サービスへと移行することで効率的に人を運ぶようになります。すでにノルウェー、スウェーデン、フランスなどの国で自動運転ミニバスが旅客運送サービスを提供しています。運送業も、オランダ、ドイツ、ベルギーでは、主要道路で人が運転する自動車で自動運転車の車列を率いる「トラック隊列走行」に取り組んでいます。車とデータをやりとりすることで、公的機関が車の流れを追跡・最適化し、道路を効率的に利用できるようにもなります。
また、AVによって都市の風景も変わるでしょう。ほとんどのAVが電気で走ると予想されることから、はるかにクリーンで効率的になり、自家用車の減少によって道路、駐車場に必要なスペースが不要となり、緑地拡大などが可能になると予想されます。英国をはじめとする主要10ヵ国は、2030年までに新車販売台数の30%以上をEV - 電気自動車にすることを約束しており、ノルウェーではすでにこの目標を達成しています。
一方で、AVの影響によるドライバー職の労働市場の問題や自動車保険などの産業の大きな変化、プライバシーリスクとサイバーセキュリティリスクなどの課題について解決する必要もあります。
AVが各業界に与える影響の例
- 警察
AVは交通法規に従うようプログラムされているため、交通の取締りに必要な資源の減少が考えられます。 - 医療
交通事故が減少すれば緊急手術や臓器提供の必要性が低くなります。また、AVにより高齢者や体の弱い人が通院しやすくなり、サービスの集中化が可能になります。 - 航空と鉄道
AVによって長距離移動中の心身の負担が軽くなれば、乗客が減少するルートが出てきます。 - 発電
AVを含むEVによって需要は増加しますが、自宅で充電する時間帯を選べるため、出力変動のある再生可能エネルギーの拡大が見込まれます。
エグゼクティブサマリー
AVRIの手法、上位5ヵ国の概要、各国が取り組むべき措置
今回のAVRIは、25項目の指標について25ヵ国を評価し、4つの領域 - 「政策と法律」「テクノロジーとイノベーション」「インフラストラクチャー」「消費者の受容性」にまとめています。
調査の詳細については、ダウンロードPDFの「各国の状況」を参照してください。
- オランダ
AVRIトップのオランダは、近隣諸国と協力して、運送にAV技術を採用する可能性を検討しており、アムステルダムからの主要ルートで100台以上のトラックの隊列走行を実現させようとしています。また、自動運転車専用の運転免許の準備も進んでいます。このアプローチは、公共の交通システムにおける人の行動になるべく近く、安全で予測可能な自動運転の挙動がどこまでできるかを重視しています。オランダ政府はAVの安全性について積極的な役割を担っており、自動車だけでなく道路輸送全般でAVの利用機会を模索した取組みを進めています。 - シンガポール
シンガポール政府は、この都市国家をAV開発センターと位置づけ、南洋理工大学内に信号機、バス停、高層ビル、熱帯気象を再現する降雨装置を備えた自動運転車のテストタウンを作りました。KPMGシンガポールのSatya Ramamurthyは、「シンガポールでは、自家用車に課される税金が高く、それがAVを促進させるチャンスになる。政府はAVの普及を促すためにさまざまな政策を実施するだろう」と述べています。AVを扱う単独の政府機関を設置するなど未来を見据えた国の動きが、世界のテクノロジー業界の投資を引きつけています。 - ノルウェー
ノルウェーは2018年1月に公道でのAV走行実験を認可し、数都市で自動運転ミニバスのサービスを開始しました。さらに国の道路当局は、トラックの隊列走行や自動運転タクシーの実験を進めています。また、大幅な税制優遇措置や道路通行料と駐車料金の免除、無料の充電ステーション、家庭向け電気料金の安さなどから、ノルウェーのEV普及率は群を抜いて高くなっています。現在オスロ地域で販売されている自動車の50%は電気自動車で、その多くが何らかの自動運転機能を備えています。こうしたEVの普及が、消費者の受容性を高めている要因となっています。 - 米国
米国はAV開発で世界をリードするいくつもの企業の本拠地で、テクノロジーとイノベーションの領域において3位の地位にありますが、国としての強力なアプローチがないため、インフラストラクチャーで8位、政策と法律では9位となっています。輸送行政の大半は州や市が管轄していることから、実際には個々の州がAVビジネスの誘致に必死にならざるを得ません。オハイオ州、ミシガン州、マサチューセッツ州などは、路上走行を認可したり単独の開発機関の設置や法律を制定するなどして、国家レベルの洗練された方法でAVの開発と普及の促進に取り組んでいます。 - スウェーデン
スウェーデンは最先端の取組みとして、アーランダ空港近くでEVトラックの走行中に自動充電できる道路を開通させました。また、AVトラックメーカーのEinrideとドイツの物流グループDB Schenkerが、物流センター間で電気AVトラックの使用を実験しており、公道で使用する認可を得たいとしています。スウェーデンのEV普及率はノルウェーに次いで2位であり、AVで使われるインフラを開発しやすい環境にあります。特に、革新的な技術に対する高い評価、道路網とモバイルネットワークのインフラは大きな強みとなっています。
政府向けの主なインサイト
- AV先進市場はさらにテクノロジーとイノベーションへの投資を
オランダやシンガポールなどの上位の国は、テクノロジーとイノベーションへの注力、特にAV関連の企業や研究開発の投資、産業提携、イノベーションを支援するビジネス環境などにおいて、トップの地位を確実なものにします。 - テクノロジーとイノベーションでリードする国は、政策と機関の明確化への取組みを
ドイツ、イスラエル、日本、ノルウェー、米国といった、テクノロジーとイノベーションでリードする国は、AVの規制環境と規制機関について平均的なスコアを獲得していますが、規制を修正、再検討し、AV専門の機関を設置することでトップランクに浮上する可能性があります。 - インフラの対応レベルが高い国の多くは、政策と法環境の改革を
インフラの対応レベルで上位にあるオーストラリア、オーストリア、日本、韓国、スウェーデン、UAEは、政策と法律では上位10ヵ国に入っていません。順位を上げるためには、新しいAVの規制と機関の確立に取り組むとよいでしょう。 - AVの開発があまり進んでいない市場は、政策やテクノロジーなど他の分野にすでに対応している場合、AVに対する消費者の関心向上の活用を
総合スコアの低い国では、今回新たに調査に加えた「AVに対する消費者の利用意欲」が高い傾向にあります。政府が積極的に他の分野を発展させれば、これらの国も上位に浮上するでしょう。
未来に向けて - お客様の意思決定におけるKPMGの役割
各国政府は政策環境、投資の魅力、インフラの対応、消費者の受容性を、AV技術の進化に対応させようと努力するでしょう。そして企業は自動車をテストし、メディアは自動運転車の採用によるメリットとリスクを分析し、消費者はAIによって実現される新しい交通パラダイムを理解するようになるでしょう。あらゆるセクターのステークホルダーは、この世界の変革に対し戦略的かつ柔軟、敏速に対応する必要があります。
KPMGは、この分野における過去から現在までの経験に基づき、以下の分野においてアドバイスを提供することが可能です。
- 地方、地域、国の運輸当局とインフラ事業者がAVの破壊的進歩に追いつくための戦略を開発、実行するためのサポートをします。
- 地方の投資当局が、海外からの直接投資を見極めて誘致活動を行うサポートをします。
- 民間セクターの企業やファンドがAVバリューチェーンにおける投資や提携の機会を分析、特定するサポートをします。
- AVの力学と不明確な世界を多くのステークホルダーが理解できるよう、AVに関する最先端の調査を作成します。
KPMG インターナショナルは、本レポートが、自動運転技術の開発のためのベストプラクティスと、さまざまな分野での向上のために各国ができることを考察する上での手掛かりになることを願っています。